【第3章:回帰分析と掛け算 ― 係数が持つ“影響力”の意味】

こんにちは。ゆうせいです。

今回のテーマは、回帰分析(regression analysis)に登場する掛け算です。

「回帰分析」と聞くと、なんとなく「直線を当てはめるやつ」というイメージがあるかもしれませんね。
でもその式をじっくり見てみると、いたるところに掛け算が潜んでいます。

では、その掛け算はいったい何を表しているのか?

それは、単に「数を掛ける」というよりも、「ある変数が他の変数にどれくらい影響を与えているか」という“力の重み”なんです。

今回は、回帰式の中の掛け算の意味を、「係数の意味」「交互作用」「文脈依存の影響力」といった視点から丁寧に見ていきます!


◆ 1. 単回帰分析の基本式と掛け算

まずは最も基本的な単回帰式から見てみましょう。

\hat{y} = a x + b
(ハットワイ イコール エーかけるエックス たす ビー)

ここで:

  • x:説明変数(入力、要因)
  • a:係数(傾き)
  • b:切片(バイアス、y軸との交点)
  • ŷ(ハット y):予測値

この式の意味は、

xが1増えたとき、yはaだけ増える

というもので、a × x の掛け算が、「xがyにどれだけ効くか?」という影響力を表しています。


◆ 2. 掛け算の意味:スケールと方向を与える

この「a × x」という形が持つ意味は、大きく2つあります。

① スケール(影響の大きさ)

  • a = 0.5 → xが1増えると、yは0.5増える
  • a = 10 → xが1増えると、yは10も増える!

② 方向(正か負か)

  • a > 0 → xが増えるとyも増える(正の関係)
  • a < 0 → xが増えるとyは減る(負の関係)

つまり、掛け算で「どの方向に、どれだけ変化するか」をコントロールしているんですね。

たとえるなら、xは「アクセル」、aは「馬力」のようなものです。


◆ 3. 重回帰:複数の掛け算が同時に効く

次に、複数の変数がある重回帰(multiple regression)の式を見てみましょう。

\hat{y} = a x_1 + b x_2 + c x_3 + d

ここでは、それぞれのxに異なる係数(a, b, c)が掛け算されています。

この意味は:

  • x₁, x₂, x₃ はそれぞれ異なる要因
  • a, b, c はその影響の「重み」
  • 掛け算によって、それぞれのxの影響がyに加算される

→ まるで、いくつかの風がyを押しているようなイメージです!


◆ 4. 交互作用(interaction)という掛け算

ここからが面白いところ。

回帰分析では、ときに次のような項も登場します:

\hat{y} = a x_1 + b x_2 + c x_1 x_2 + d

この「x₁ × x₂」の掛け算、どういう意味だと思いますか?

これは「交互作用項(interaction term)」といって、

「x₁の影響が、x₂の値によって変わる」
つまり、「状況次第で効果が変わる」ことを表す

たとえば:

  • x₁:勉強時間
  • x₂:睡眠時間
  • y:テストの点数

→ 勉強時間が長くても、睡眠時間が短いと効果が出にくい…という「相互依存的な関係」をモデル化できます。


◆ 5. 掛け算は「条件付きの影響力」を表す

このように、交互作用の掛け算は文脈によって変化する効果を表すのに最適です。

たとえるなら:

  • x₁が「火」
  • x₂が「燃料」
  • そして「火 × 燃料」=「炎の大きさ」

火だけあっても、燃料がなければ炎は出ません。
これが掛け算による「条件付き効果」なんですね。


◆ 6. 掛け算のデータ分析的な意味とは?

ここまでをまとめると、回帰分析における掛け算は次のような意味を持っています。

掛け算の形式意味
a × xxの変化がyに与える直接の影響
a₁x₁ + a₂x₂ +…複数の要因がyに与える独立した影響
a × x₁ × x₂要因同士が組み合わさったときの影響
log(x) × x指数成長や減衰に対する補正

回帰分析とは、「掛け算で重みをつけながら、関係の構造を浮かび上がらせる」作業なのです!


まとめ

  • 回帰式における掛け算は「xの影響力」を表す
  • 係数は「どの方向に、どれだけ効くか」のスケール
  • 交互作用項の掛け算は「文脈によって変化する影響」をモデル化
  • 掛け算によって、シンプルな直線から、複雑な関係性までが表現できる!

次回予告:「特徴量とスケーリング ― データ変換で使われる掛け算の役割」

次回は、データ前処理でよく使われるスケーリング標準化において、
掛け算(または“逆数の掛け算”)がどのような意味を持っているのかを見ていきます。

  • なぜ標準化では“割る”のか?=“掛ける”とどう違うのか?
  • 特徴量を変換することで、モデルの振る舞いはどう変わるのか?

次回も、実務的に役立つ視点を丁寧に解説していきます!
どうぞお楽しみに!

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投稿者プロフィール

山崎講師
山崎講師代表取締役
セイ・コンサルティング・グループ株式会社代表取締役。
岐阜県出身。
2000年創業、2004年会社設立。
IT企業向け人材育成研修歴業界歴20年以上。
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