【経済学入門】格差を数字で正しく見る!ローレンツ曲線とジニ係数の仕組み
こんにちは。ゆうせいです。
みなさんはニュースなどで格差社会という言葉を耳にしたことはありませんか。お金持ちとそうでない人の差が広がっている、なんて話を聞くと、少し不安な気持ちになるかもしれませんね。
でも、その格差ってどうやって測っているのでしょうか。なんとなくの感覚?それとも誰かの主観でしょうか。
実は、経済学にはこの格差を客観的に、そして数字でパッとわかるようにする便利な道具があるのです。それが今回ご紹介するローレンツ曲線とジニ係数です。
名前だけ聞くと、なんだか難しそうな数式の塊に見えるかもしれません。けれど安心してください。中身を知れば、高校生のみなさんでもすぐに使いこなせるくらいシンプルで面白いものなのです。
今日は私と一緒に、社会の健康診断とも言えるこの2つの指標について、楽しく学んでいきましょう!
必殺技のような名前の由来
まずは、この少しかっこいい名前の由来からお話ししますね。
ローレンツ曲線とジニ係数。まるでRPGの必殺技のような響きですが、実はこれ、開発した人の名前そのままなのです。
ローレンツ曲線は、1905年にアメリカの統計学者マックス・オットー・ローレンツさんが発表しました。彼は、富がどのように人々の間に分配されているかを、ひと目でわかるグラフにする方法を考え出したのです。
一方、ジニ係数はその少し後、1912年にイタリアの統計学者コラド・ジニさんが考案しました。ローレンツさんが作った曲線を元にして、格差の度合いをたった一つの数字で表せるようにしたのがジニさんです。
百年以上も前のアイデアが、今でも世界中で使われているなんてすごくないですか。それだけ、物事の本質を突いた発明だったということでしょうね。
ローレンツ曲線で格差を「形」にする
では、ローレンツ曲線とは具体的にどのようなものでしょうか。想像力を働かせてみてください。
ここに100人の村人がいて、村全体で100個のパンを持っているとします。
もし完全に平等な村なら、1人が1個ずつパンを持っていますよね。
逆に、王様1人が100個すべてを独占していたら、残りの99人はパンが0個です。これが完全な不平等です。
ローレンツ曲線は、この人々と富の偏りをグラフにしたものです。
グラフの横軸には、所得の低い順に並べた人数の割合をとります。
縦軸には、その人たちが持っている所得の合計割合をとります。
もし全員が平等なら、グラフは右上がりの真っ直ぐな線になります。これを完全平等線と呼びます。45度の綺麗な坂道ですね。
ところが、現実はそうはいきません。所得が低い人が多ければ多いほど、グラフの線は下の方にたわんで、お腹が垂れ下がったような弓形になります。
このたわんだ曲線のことを、ローレンツ曲線と呼ぶのです。
つまり、ローレンツ曲線が完全平等線(真っ直ぐな坂道)から離れて、下へ下へと垂れ下がれば下がるほど、その社会は格差が大きいということを視覚的に教えてくれるわけです。
ジニ係数で格差を「数字」にする
ローレンツ曲線で形を見るのもわかりやすいですが、国同士を比較するときに、どっちの曲線がより垂れ下がっているかを目で見て判断するのは大変ですよね。
そこで登場するのがジニ係数です。ジニさんは考えました。
あの垂れ下がった部分の面積を計算してしまえばいいじゃないか!
その発想はとてもシンプルです。完全平等な直線と、実際のローレンツ曲線との間にできた三日月のような形、この面積が大きければ大きいほど格差が大きいと判断します。
計算のイメージはこのような式になります。
ジニ係数 三日月形の面積
完全平等線より下の三角形の面積
この計算によって、ジニ係数は必ず0から1の間の数字になります。
もしジニ係数が なら、それは完全平等を意味します。みんなが同じだけ持っている理想郷ですね。
反対にジニ係数が に近づくほど、格差は大きくなります。もし
になったら、たった一人が全ての富を独占している状態です。
一般的に、ジニ係数が や
を超えると、社会的な不満が高まり、暴動などが起きやすくなると言われています。まさに社会の危険度を測るメーターのような役割を果たしているのですね。
この指標を使うメリット
さて、なぜこの2つがこれほど重宝されているのでしょうか。メリットを整理してみましょう。
まず最大の利点は、複雑な社会の状態を単純化できることです。
何千万人という国民一人ひとりの財布の中身を見なくても、ジニ係数というたった一つの数字を見るだけで、その国の格差レベルを把握できます。
次に、比較が容易であることです。
日本は くらい、あちらの国は
くらい、といった具合に、異なる国や、あるいは過去の日本と現在の日本を簡単に比べることができます。
知っておくべきデメリット
しかし、万能に見えるこの指標にも弱点があります。ここを理解していないと、数字に騙されてしまうかもしれません。
一つ目の弱点は、どのような層が貧しいのかが見えないことです。
若者が貧しいのか、高齢者が貧しいのか、あるいは特定の地域が貧しいのか。ジニ係数というひとつの数字にまとめる過程で、そうした細かい情報は消えてしまいます。
二つ目は、同じジニ係数でも中身が違う場合があることです。
中間層が分厚い社会と、極端な富裕層と貧困層だけの社会で、計算上同じ数値が出てしまうことがあります。
三つ目は、所得だけを見ていて資産を見ていない場合が多いことです。
例えば、収入は少なくても、親から受け継いだ莫大な土地を持っている人がいたとしましょう。所得ベースのジニ係数ではその人は貧しい人としてカウントされるかもしれませんが、生活は豊かかもしれませんよね。
まとめと次のステップ
いかがでしたか。
ローレンツ曲線とジニ係数。難しそうな名前の裏側には、社会の公平さを測りたいという先人たちの知恵が詰まっていました。
完全平等な直線からどれだけ現実が垂れ下がっているかを見るローレンツ曲線。
その垂れ下がり具合を から
の数字で表したジニ係数。
この2つを理解していれば、ニュースで格差という言葉を聞いたときの解像度がぐっと上がりますよ。
では、最後に私からみなさんへ、次の一歩となるアクションを提案させてください。
ぜひ一度、日本の最新のジニ係数を検索して、世界の国々と比べてみてください。北欧の国々やアメリカ、そして途上国と比べたとき、日本はどのあたりに位置しているでしょうか。
数字の裏にある社会の姿を想像することで、経済学はもっと面白くなりますよ。
それでは、またお会いしましょう。
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投稿者プロフィール
- 代表取締役
-
セイ・コンサルティング・グループ株式会社代表取締役。
岐阜県出身。
2000年創業、2004年会社設立。
IT企業向け人材育成研修歴業界歴20年以上。
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