アドラー心理学「課題の分離」とは?褒められない、叱られない生き方のススメ
こんにちは。ゆうせいです。
はじめに
皆さん、誰かに褒められたら嬉しいですよね?逆に叱られたら、やっぱりへこんでしまうものです。でも、もし「褒められること」や「叱られないこと」が、あなたの行動の目的になってしまっていたら…?
もしかしたら、あなたは少し窮屈な生き方をしているのかもしれません。
今回は、そんなあなたにぜひ知ってもらいたい、アルフレッド・アドラーという心理学者が提唱した「課題の分離」という考え方をご紹介します。
この考え方を知ると、人間関係の悩みが軽くなったり、もっと自分らしく生きられるようになったりするかもしれませんよ。少し難しい言葉も出てきますが、一つひとつ丁寧に解説していくので、安心してくださいね。
「課題の分離」って一体なんだろう?
さて、いきなり「課題の分離」なんていう言葉が出てきて、戸惑ってしまったかもしれませんね。大丈夫、ゆっくり説明します!
「課題の分離」とは、一言でいうと、「これは誰の課題(タスク)なのか?」を冷静に見極めて、自分の課題と他者の課題を切り分けて考えることです。
…と言っても、まだピンとこないかもしれませんね。
例を使って考えてみましょう。
たとえば、あなたがテストで100点を取るために一生懸命勉強したとします。これは、あなたの「課題」ですよね。
親がその結果を見て、「すごいわね!」と褒めてくれるかどうか。これは、あなたの課題でしょうか?
いいえ、違います。
あなたが頑張ったことをどう評価するかは、親の「課題」なのです。あなたがコントロールできることではありません。
もう一つ例を挙げましょう。
あなたが友達に親切にしたとします。友達が「ありがとう」と感謝してくれるかどうか。これも、あなたの課題ではなく、友達の課題なのです。
このように、自分の行動や感情は自分の課題、他者の行動や感情は他者の課題、と線を引く。これが「課題の分離」の基本的な考え方です。
私たちは、ついつい他人の課題にまで踏み込んでしまったり、逆に自分の課題を他人に背負わせてしまったりしがちです。
「私がこんなに頑張っているんだから、あの人はこうすべきだ!」
「彼が幸せじゃないのは、私のせいだ…」
こんな風に考えて苦しくなった経験、ありませんか?
それは、課題の分離ができていないサインかもしれません。
褒められることを目的にしてはいけない?
さて、課題の分離が少しわかってきたところで、本題の「褒められ方、叱られ方」について考えていきましょう。
アドラー心理学では、「褒めて育てる」という考え方を必ずしも良しとしません。
え、どうして!?って思いますよね。
褒められると、嬉しくなって「また頑張ろう!」と思えるじゃないか、と。もちろん、その気持ちはとても自然なものです。
しかし、褒められることが行動の目的になってしまうと、いくつかの問題が出てきます。
- 褒めてくれる人がいないと行動できなくなる褒められることが当たり前になると、「誰も見ていないなら、まあいっか」と、正しい行いや努力をしなくなってしまう可能性があります。あなたの行動の基準が、自分の中ではなく、他人からの評価になってしまうのです。
- 他人の期待に応えるだけの人生になる常に「どうすれば褒められるだろう?」と考えるようになり、他人の顔色をうかがって生きることになります。それは、本当にあなたのやりたいことでしょうか?他人の人生を生きているようなものかもしれません。
これは、叱られることについても同じです。「叱られないこと」を行動の目的にしてしまうと、常にビクビクして、新しい挑戦を恐れるようになってしまいます。失敗を恐れて、何もしないのが一番安全、なんて考えてしまったら、もったいないですよね!
アドラーは、褒めたり叱ったりする関係を「縦の関係」と呼びました。これは、能力のある人がない人を評価するという、上下関係に基づいたコミュニケーションです。
そうではなく、アドラーが理想としたのは、お互いが対等で、尊敬と信頼に基づいた「横の関係」なのです。
じゃあ、どうすればいいの?
褒めるのでも、叱るのでもなければ、どうやって関わっていけばいいのでしょうか?
アドラーが提案するのは、「勇気づけ」というアプローチです。
勇気づけとは、相手が自分の力で課題を解決できると信じ、その能力を尊重する関わり方のことです。
関わり方 | 特徴 | 関係性 | 例 |
褒める | 評価する(良い/悪い) | 縦の関係 | 「100点なんてすごいね!えらい!」 |
叱る | 評価する(良い/悪い) | 縦の関係 | 「なんでこんなこともできないんだ!」 |
勇気づけ | 協力・共感する | 横の関係 | 「頑張ったんだね、お疲れ様。嬉しいよ、ありがとう。」 |
例えば、子どもがテストで良い点を取ったとき。
「すごいね、えらい!」と褒めるのは、評価であり、縦の関係です。
そうではなく、「勉強、頑張ったんだね。私も嬉しいよ」と、相手の努力を認め、自分の気持ちを伝える。これが勇気づけです。そこには上下関係はありません。
失敗した時も同じです。
「なんで失敗したんだ!」と叱るのではなく、「大変だったね。次はどうしたら上手くいくか、一緒に考えてみようか?」と寄り添う。これも勇気づけです。
勇気づけは、相手に「私は自分の力で課題を乗り越える能力があるんだ」という自信を与えます。
課題の分離のメリット・デメリット
この「課題の分離」という考え方、なんだか少し冷たいように感じる人もいるかもしれませんね。どんな考え方にも、良い面と、少し注意が必要な面があります。
メリット
- 人間関係の悩みが激減する他人が自分のことをどう思うかは、その他人の課題。そう割り切れると、対人関係のストレスがぐっと減ります。「嫌われる勇気」という言葉を聞いたことがあるかもしれませんが、まさにこれですね。
- 自己肯定感が高まる他人の評価に振り回されなくなるので、自分自身の価値基準で物事を判断できるようになります。結果として、ありのままの自分を受け入れやすくなるのです。
- 本当にやるべきことに集中できる他人の課題に首を突っ込む時間やエネルギーを、自分の課題に集中させることができます。
デメリット(注意点)
- 冷たい、無関心だと思われる可能性がある課題の分離を突き詰めすぎると、「それはあなたの課題だから」と、困っている人を突き放すような態度に見えてしまうことがあります。これは、アドラーが意図したことではありません。
- 孤立してしまう危険性「自分の課題は自分だけのもの」と考えすぎると、他人に助けを求めることをためらったり、協力関係を築きにくくなったりするかもしれません。
大切なのは、線を引くことと、協力することは別の話だと理解することです。
自分の課題は自分で解決する。これが基本です。でも、一人で抱えきれないときは、「手伝ってほしい」と援助を求める。これもまた、あなたの課題なのです。
まとめ:これからの学習のために
さて、今回はアドラー心理学の「課題の分離」という考え方と、それが私たちの「褒められ方」「叱られ方」にどう関係しているのかをお話ししました。
- 課題の分離: 自分の課題と他人の課題を明確に分ける。
- 他者の評価は他者の課題: 褒められるか、叱られるかは、相手が決めること。
- 目指すは「横の関係」: 上下関係ではなく、対等な関係で「勇気づけ」をしよう。
この考え方は、すぐに完璧に実践できるものではないかもしれません。でも、日常の中で「これは誰の課題だろう?」と少し立ち止まって考えてみるだけでも、世界の見え方が変わってくるはずです。
もし、もっとアドラー心理学について知りたくなったら、まずはベストセラーにもなった『嫌われる勇気』という本を読んでみることをお勧めします。対話形式で書かれているので、とても読みやすいですよ。
また、アドラー心理学はカウンセリングや教育、組織運営など、様々な分野で活用されています。そういった具体的な実践例を調べてみるのも、理解を深める助けになるでしょう。
他人の評価に一喜一憂する人生から、自分自身の足でしっかりと立つ人生へ。
その第一歩を、今日から踏み出してみませんか。
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投稿者プロフィール
- 代表取締役
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セイ・コンサルティング・グループ株式会社代表取締役。
岐阜県出身。
2000年創業、2004年会社設立。
IT企業向け人材育成研修歴業界歴20年以上。
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