新人エンジニアのための「段階的推論(Chain-of-Thought)」入門:AIが“考える過程”を学ぶには?

こんにちは。ゆうせいです。

今回は、AIや機械学習に興味がある新人エンジニアの方へ向けて、「段階的推論(Chain-of-Thought)」についてやさしく丁寧に解説していきます。聞き慣れない言葉かもしれませんが、実はとても面白くて、AIの賢さを飛躍的に高めるカギでもあるんです。


段階的推論(Chain-of-Thought)とは?

簡単に言うと、「答えを出す前に、ちゃんと考えるプロセスを見せること」です。

たとえば、こんな質問があったとしましょう。

「1本100円のりんごを3個と、1本150円のジュースを2本買いました。合計いくらですか?」

これ、答えは簡単ですよね。
でもAIがこれをすぐに「合計は600円です」と言うだけだと、「どうして?」って思いませんか?

そこで段階的推論の出番です。AIはこう考えます:

りんごは1個100円 × 3個 = 300円
ジュースは1本150円 × 2本 = 300円
300円 + 300円 = 600円

こうして、考える過程をひとつずつ順を追って見せる。これが「段階的推論(Chain-of-Thought)」です。


なぜ「段階的推論」が必要なの?

それには大きく3つの理由があります。

理由説明
① ミスを減らせる人間も一緒ですが、手順を踏んで考えることでケアレスミスを防げます。
② 難しい問題にも対応できる数学や論理のように、途中のステップが重要な問題に強くなります。
③ 説明責任が果たせるユーザーに「なぜその答えなのか」を説明できるので信頼されます。

機械学習の文脈での使い方

段階的推論は、大規模言語モデル(LLM:Large Language Model)と呼ばれるAIに活用されます。

たとえば、GPTのようなモデルに問題を与えたとき、答えだけを出させるのではなく、「まず考えてみて」と指示することで、より正確で人間らしい回答が得られます。

このとき、AIに渡す文章(プロンプト)を次のように工夫します:

プロンプトの例

質問:太郎くんは5つのキャンディを持っています。花子さんに3つあげたら、残りはいくつになりますか?
考えてみてください:

こう指示すると、AIはこう返します:

太郎くんは5つキャンディを持っている。花子さんに3つあげると、5 - 3 = 2。よって、残りは2つです。

このように、「考えてみてください:」という言葉がトリガーとなって、AIが段階を踏むようになるのです。


数式と段階的推論の関係

例えば、共分散から相関係数を求めるときの式を考えてみましょう。

相関係数の式

r = \frac{\text{Cov}(X, Y)}{\sigma_X \sigma_Y}

(アールは、XとYの共分散をXの標準偏差とYの標準偏差の積で割ったもの)

これを段階的に解くと:

  1. XとYの共分散を求める
  2. XとYの標準偏差をそれぞれ求める
  3. その積を計算
  4. 共分散 ÷ 標準偏差の積 = 相関係数

AIにこれを一気にやらせるのではなく、ステップごとに分けて考えさせることで、より正確な結果が得られるんです。


メリットとデメリットを整理してみましょう

項目内容
メリット正確性の向上、説明可能性、難問への対応力
デメリット処理時間が長くなる、プロンプトの設計が必要、学習データに依存する

AIに「ゆっくり丁寧に考えてもらう」わけなので、そのぶん計算量が増えることもあるんです。


高校生でもわかる例え話

段階的推論を数学のテストに例えてみましょう。

答えだけ書いたら0点。でも途中式も書いていたら、たとえ答えが間違っていても部分点がもらえますよね?

AIも同じで、「途中の考え方」を見せることで、信頼されやすく、間違ってもリカバリーしやすくなるのです。


まとめと今後の学習指針

段階的推論(Chain-of-Thought)は、AIをより人間らしく、かつ信頼できる存在にするための技術です。新人エンジニアとしては、以下のポイントを抑えておくと良いでしょう。

  • AIに「考える手順」を教えるプロンプト設計に慣れること
  • 数学や論理問題を例に練習してみること
  • 自分自身が「どう考えて答えを出しているか」を言葉にしてみること

次に進むなら、「Few-Shot Prompting」や「Self-Consistency Decoding」といった応用技術も学んでみるとよいですよ!

わからないことがあれば、またどんどん質問してくださいね。

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投稿者プロフィール

山崎講師
山崎講師代表取締役
セイ・コンサルティング・グループ株式会社代表取締役。
岐阜県出身。
2000年創業、2004年会社設立。
IT企業向け人材育成研修歴業界歴20年以上。
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