「指示待ち」は卒業!4年目エンジニアが学ぶ「PMの視点」でチームの主役になる方法
こんにちは。ゆうせいです。
いよいよ社会人4年目。後輩も少しずつ増え、技術力にも自信がついてきた頃でしょうか。
でも、ふとこんな風に感じることはありませんか?
「言われたタスクは完璧にこなせる。でも、それだけでいいんだろうか?」
「プロジェクト全体を考えて動け、と先輩に言われるけど、具体的に何をすれば…?」
「いつまでも『指示待ち』じゃダメな気がする…」
もし少しでもドキッとしたなら、この研修はまさにあなたのためのものです!
この「PM基礎研修」は、チームの中核を担うことになる皆さん、つまり「4年目メンバー」が、次のステージへ上がるための大切な考え方を学ぶ場所です。
なぜ今、4年目が「PM」を学ぶのか?
「PM」と聞くと、何を思い浮かべますか?
おそらく「プロジェクトマネージャー(Project Manager)」という、なんだか難しくて、責任が重い「管理職」の仕事をイメージするかもしれません。「自分にはまだ早い」と感じるのも無理はないです。
安心してください! この研修の目的は、皆さんを今すぐPMにすることではありません。
最大の目的は、チームの中核として、タスクをこなす「実行者」から、プロジェクトの成功に主体的に貢献できる「チーム貢献者」へと意識をアップデートすること。
そのために、プロジェクトマネージャーが持っている「視点」を学ぶことが、最強の武器になるんです!
プロジェクトが失敗する「よくある落とし穴」
皆さんは、プロジェクトが失敗する典型的なパターン、と聞いて何を想像しますか?
「最新技術を使わなかったから?」
「プログラマーのスキルが低かったから?」
もちろん、技術力は大切です。しかし、どれだけ素晴らしい技術があっても、プロジェクトがうまくいかないケースは、残念ながら後を絶ちません。
例えば…
- 計画(段取り)が甘くて、後半になって作業が溢れかえった。
- 小さな問題が起きたのに「これくらい大丈夫だろう」と報告が遅れ、気づいた時には手遅れになった。
- そもそも「何を作ればゴールなのか」がチーム内でバラバラだった。
どうでしょう? もしかしたら「ヒヤリ」とした経験が、皆さんにも一度はあるかもしれませんね。
こうした失敗の多くは、技術力そのものではなく、プロジェクトの「計画」や、変化に対応する「実行」のやり方に問題があることがほとんどです。
脱・指示待ち! PMの「良きパートナー」になろう
プロジェクトの全体を管理するPMは、いわば船の「船長」です。でも、船長一人では船は動きません。
エンジンの調子、天候の変化、積荷の状態…。そうした現場の細かな変化や「ちょっとした違和感」に一番先に気づけるのは、誰でしょうか?
そう、現場の最前線で作業をしている皆さんです!
この研修で学ぶ「(3) 中堅メンバーに期待される役割」とは、まさにPMの「良きパートナー」になること。
指示をただ待つのではありません。
「船長、このままだと少し燃料が足りなくなるかもしれません」
「次の港の天候、少し怪しい兆候があります」
そんな風に、PMと同じ「プロジェクトを成功させる」という視点を持って、主体的に情報を上げたり、改善を提案したりできる。それが、4年目の皆さんに期待される「チーム貢献者」の姿です。
「価値」を提供し、「変化」に対応する
この研修では、プロジェクトマネジメントの国際標準である「PMBOK®ガイド第7版」の考え方にも触れます。
「うわ、難しそう…」と思いましたか? 大丈夫です。
とても大切なのは「価値提供」という考え方。
つまり、「ただモノ(システム)を作って終わり」ではなく、「それがお客様や会社にとって、本当に『価値』のあるものになっているか?」を常に考えるアプローチです。
また、最近よく聞く「アジャイル」開発のような、計画通りに進めることよりも、状況の変化に柔軟に対応していく手法にも触れます。
こうした新しい考え方を学ぶことも、皆さんが「チーム貢献者」として活躍するための強力な引き出しになりますよ。
まとめ:ネクストステップへ進む準備をしよう!
今回は「イントロダクション」として、なぜ4年目の皆さんがPMの視点を学ぶことが重要なのか、その「意識改革」についてお話ししました。
「タスク実行者」から「チーム貢献者」へ。
この意識の変化が、これからの皆さんのエンジニアとしての市場価値を、間違いなく大きく高めてくれます。
次回からは、いよいよ具体的な中身に入っていきます。
プロジェクトの全体像とは何か? 計画(WBS)はどうやって立てる? 潜んでいるリスクをどう見つける?
たくさんの実践的なスキルが待っています。
「自分だったらどう動くか?」という当事者意識を持って、一緒に学んでいきましょう!
「それ、本当にプロジェクト?」PMBOKとアジャイルから学ぶ「価値」の届け方
こんにちは。ゆうせいです。
前回は、皆さんに「指示待ち」のタスク実行者から、プロジェクト成功のために自ら動ける「チーム貢献者」へ意識を変えていきましょう! という、熱いお話をしましたね。
さあ、今回からはいよいよ具体的な「知識」と「視点」を学んでいきます。
第2章は「プロジェクトマネジメントの全体像と多様なアプローチ」。
まずは、私たちが日々取り組んでいる「プロジェクト」とは一体何なのか、その基本のキから見ていきましょう!
(1) 「プロジェクト」とは何か?
皆さんに質問です。「プロジェクト」と聞いて、何をイメージしますか?
なんだか大変そう? 期限に追われる?
実は、私たちの仕事には大きく分けて2つの種類があります。
- 定常業務(ルーティンワーク): 毎日の運用監視、決まった週報の作成、お店のレジ打ちなど。「終わりがなく、繰り返し行われる」仕事です。
- プロジェクト: 「新しいレジシステムを3ヶ月後に導入する」「新製品の発表会を成功させる」など。「独自の目的があり、始まりと終わり(期限)が決まっている」仕事です。
そう、プロジェクトとは、「独自のプロダクト、サービス、または所産を創造するために実施する、期限のある業務」のことなんです。
ここで一番大切なポイント。
プロジェクトの目的は、単に「モノ(システム)を作ること」ではありません。
その先にある「価値」を提供し、「目標」を達成すること。これがゴールです!
例えば、「新しいレジシステムを作る」のが目的ではなく、「そのシステムでお客様の待ち時間を半分にする」とか「お店の売上を10%アップさせる」といった「価値」を届けることが、プロジェクトの本当の目的なんですね。
(2) 世界標準の教科書「PMBOK(ピンボック)」
プロジェクトをうまく進めるためには、どうすればいいのでしょうか?
世界中の人たちが「どうやったらプロジェクトは成功するんだろう?」と考え、その知識やノウハウをまとめた、いわば「世界標準の教科書」があります。
それが「PMBOK(ピンボック)」です。
(Project Management Body of Knowledge の略です。覚えなくて大丈夫ですよ!)
このPMBOK、最近「第7版」に大きくアップデートされました。
これまでの教科書(第6版まで)は、「こういう手順(プロセス)で進めましょう」という、具体的な「やり方」が中心でした。
しかし、第7版ではガラッと変わりました。
「どういう考え方(12の原則)で動くべきか」
「どんな成果(8つのパフォーマンス・ドメイン)を出すべきか」
という、より本質的な「あり方」に焦点が当たっています。
なぜ変わったのでしょう?
それは、今の時代、計画通りに完璧に進むプロジェクトなんて、ほとんどないからです!
技術はすぐに新しくなるし、お客様の要望だって変わります。
そんな変化の激しい時代には、カチコチの手順書よりも、「チームとしてどう動くか?」「どうやって価値を届けるか?」といった、柔軟な「原則」のほうが大事だよね、というわけです。
この研修でも、この「価値を届ける」という考え方をとても大切にしていきます。
(3) 開発アプローチ(ウォーターフォール vs. アジャイル)
さて、プロジェクトの「進め方(開発アプローチ)」にも、色々なスタイルがあるのをご存知ですか?
皆さんの現場は、どちらのタイプに近いか、想像しながら聞いてみてください。
ウォーターフォール開発
これは、昔からある伝統的なスタイルです。「ウォーターフォール」とは「滝」のこと。
水が上から下に流れるように、工程が順番に進んでいきます。
- 特徴:
- まず、完璧な「設計図」をしっかり作ります。
- 「要件定義」→「設計」→「開発(プログラミング)」→「テスト」…と、工程を一つずつ順番に終わらせていきます。
- 原則として、前の工程には戻りません(滝の水は逆流しませんよね!)。
- 例え:家を建てるようなイメージです。基礎工事が始まった後に「やっぱり3階建てにしたい」なんて言い出したら大変ですよね? 最初に決めた設計図通りに進めることが前提です。
- メリット: 計画が立てやすい、進捗が分かりやすい。
- デメリット: 途中の変更(仕様変更)にとても弱い。
アジャイル開発
一方、最近主流になってきたのがこちら。「アジャイル」とは「機敏な」「素早い」という意味です。
- 特徴:
- 最初から完璧な設計図は作りません。
- 「まずは最低限動くものを作ってみる」ことを目指します。
- 「計画」→「開発」→「テスト」→「リリース(&フィードバック)」という短いサイクルを、何度も何度も繰り返します。
- 例え:料理を作るイメージに近いかもしれません。「まずは味見してみよう。うん、美味しい!でも、もう少しスパイスが欲しいかも」「じゃあ、次はコショウを足してみよう」…という風に、お客様(ユーザー)の反応を見ながら、少しずつ美味しく(=価値を高く)していきます。
- メリット: 途中の変更に強い、早くお客様に価値を届けられる。
- デメリット: 全体のゴールが見えにくくなることがある、管理が難しい。
(4) 【メンバー視点】 なぜ「進め方」を理解する必要があるの?
「うちの現場がウォーターフォールでもアジャイルでも、自分は言われたタスクをやるだけだし…」
もしそう思ったなら、前回の「意識改革」を思い出してください!
皆さんは「チーム貢献者」であり、PMの「良きパートナー」でしたよね。
自分が今、「どのルールのゲームに参加しているか」を理解することは、貢献するための大前提なんです。
考えてみてください。
もし、カチッと計画を決める「ウォーターフォール」の現場で、あなたがアジャイルのつもりで「開発の途中で、やっぱりこっちの機能が良いと思うんです!」と毎日提案したら、どうなるでしょう?
PMは「計画が全部崩れちゃうよ!」と、頭を抱えてしまうかもしれません。
逆に、変化に対応し続ける「アジャイル」の現場で、あなたがウォーターフォールのつもりで「完璧な仕様書が出てくるまで、僕はコーディングを始めません」と指示を待っていたら?
「何言ってるんだ! まずは作って見せてくれ!」と、チームのリズムを乱してしまうかもしれません。
どちらが良い・悪いではありません。
そのプロジェクトの目的や状況に合った「進め方(アプローチ)」が選ばれているのです。
4年目の中堅メンバーとして、まずは「自分たちのプロジェクトは、今どのゲームルールで動いているのか?」をしっかり理解すること。
それが、あなたの的確な「貢献」につながる第一歩です!
まとめ
今回は、プロジェクトの基本的な定義と、PMBOKという世界標準の考え方、そして「ウォーターフォール」と「アジャイル」という代表的な進め方について学びました。
プロジェクトとは「価値を届ける」ための活動だということ、しっかり意識してくださいね。
次回は、いよいよ「計画」の土台作りです!
プロジェクトの成功を左右すると言っても過言ではない、「WBS(作業分解図)」と「見積もり」について、演習も交えて実践的に学んでいきます。お楽しみに!
「デキる」中堅はココが違う! PMを助ける「WBS」と「精度の高い見積もり」の極意
こんにちは。ゆうせいです。
前回は「プロジェクトとは何か?」という基本から、ウォーターフォールやアジャイルといった「進め方」の違いまでを学びましたね。自分が参加しているゲームのルールを理解することが、貢献への第一歩だというお話でした。
さて、今回はいよいよ「計画」の土台作りです!
第3章は、プロジェクトの成否を分けると言ってもいいほど重要な「WBSと見積もり」について、演習を交えながら学んでいきます。
「計画はPMが作るものでは?」と思ったあなた!
その通り。でも、その計画の「精度」は、現場の最前線にいる皆さんの協力なしには、絶対に上がりません。
「デキる」中堅メンバーとしてPMをどう助けるか、その視点でしっかりついてきてくださいね!
(1) WBS(Work Breakdown Structure)とは何か?
まず、プロジェクトが始まるときに、とても大切な作業があります。
それは、「ゴールまでに、一体何を、どれだけやればいいのか?」を全員で明らかにすること。
例えば、「文化祭でカレー屋さんを出す」というプロジェクトがあったとしましょう。
このゴールだけを見て、「じゃあ、頑張ろう!」と走り出したら、どうなるでしょうか?
Aさんは「まずは野菜を切らなきゃ!」と考え、Bさんは「看板を作ろう!」と動き出し、Cさんは「当日のシフト表だ!」と悩む…。みんな頑張っているのに、なんだかバラバラですよね。
「あ!お米を炊くのを忘れてた!」なんてことが、当日になって発覚するかもしれません。
こんな悲劇を防ぐために作るのが、「WBS(Work Breakdown Structure)」です。
日本語に訳すと「作業分解構造図」。
なんだか難しそうですが、やっていることはとてもシンプル。
「大きなゴール(タスク)を、管理できるくらい小さな作業(タスク)に、漏れなくダブりなく分解すること」
これだけです!
「カレー屋さんを出す」という大きなゴールを、
- 「準備」
- 「食材調達」
- 野菜を買う
- 肉を買う
- カレールーを買う
- お米を買う
- 「機材準備」
- コンロを借りる
- 大鍋を借りる
- 「食材調達」
- 「調理」
- 野菜を切る
- 肉を炒める
- 煮込む
- お米を炊く
- 「販売」
- 看板を作る
- シフト表を作る
- レジを準備する
…こんな風に、どんどん細かく分解していくイメージです。
(実際にはもっと細かくなりますよ!)
なぜWBSを作るのか?
なぜこんな面倒(に思える)ことをするのでしょう?
それは、「やるべきことの全体像」を可視化するためです!
WBSを作ると、
- 「あ、スプーンとお皿を準備するタスクが漏れてる!」という作業漏れに気づけます。
- 「このタスクはAさん、このタスクはBさん」と担当を明確にできます。
- 「全部でこれだけの作業があるんだな」と分かり、正確な見積もり(次のテーマです!)の土台になります。
WBSは、プロジェクトという長い旅の「地図」そのもの。
これがないと、チームみんなが同じゴールに向かって進むことはできないんです!
(2) 演習:WBS作成と「良いWBS」のポイント
さて、ここで演習です。(研修の場では、実際に皆さんにWBSを作ってもらいます!)
…(演習中)…
どうでしたか? うまく分解できましたか?
WBSを作るときには、いくつか「コツ」があります。
良いWBSのポイント
- 「名詞」で終わらせる(成果物ベース):悪い例:「設計する」良い例:「設計書(の○○機能分)」「~する」という動詞だと、どこまでやれば終わりか曖昧になりがちです。「何を作り終えたら終わりか」という「成果物(できあがったモノ)」を意識して分解しましょう。
- 「8/80ルール」(または1~2週間ルール):これは目安ですが、「一つのタスクが8時間(1日)より小さくならず、80時間(2週間)より大きくならないように分解する」という考え方です。タスクが細かすぎると管理が大変になり、大きすぎると進捗が「0%か100%」になってしまい、リスクが見えなくなります。
- 他人に説明できるレベルか?:分解したタスクを見て、他のメンバーが「これって何をやればいいの?」と迷うようでは、分解が足りない証拠です。
WBSの精度が、プロジェクトの精度を決めます。PMが作ったWBSを見て、「このタスク、分解が甘くないですか?」と指摘できるくらいになれば、もう立派なパートナーですよ!
(3) 正確な工数・コスト見積もりの手法
さて、WBSで「やることリスト」ができました。
次にPMがやるのは、それらのタスクに「どれくらい時間(工数)やお金(コスト)がかかるか?」を見積もることです。
ここで、皆さんに悲しいお知らせがあります。
「見積もりは、だいたい外れる」ものです。
特に、新しいことや不確定なことが多いプロジェクトでは、「これくらいで終わるだろう」という「勘」に頼った見積もりは、ほぼ100%「希望的観測」となり、後で大変なことになります。
そこで、少しでも精度を上げるために、いくつかの手法が使われます。
- 類推見積もり(トップダウン):「前にやった、あのプロジェクトと似てるから、今回もこれくらいかな?」と、過去の「似た」経験からざっくり見積もる方法。スピードは速いですが、精度は低くなりがちです。
- 積み上げ見積もり(ボトムアップ):これこそがWBSの出番です!WBSで細かく分解したタスク一つひとつについて、「これは2日」「これは3日」と見積もり、それを全部足し上げて(積み上げて)全体の見積もりを出す方法。手間はかかりますが、精度は格段に上がります!
- 三点見積もり:「勘」で見積もると、どうしても「うまくいけばこれくらい(楽観値)」で考えがち。そこで、
- 楽観値(一番早かった場合)
- 最頻値(たぶんこれくらい)
- 悲観値(最悪ここまでかかった場合)の3つの数字を出して、それを元に「期待値」を計算する(
などの式を使います)方法です。「最悪のケース」も考えることで、より現実的な見積もりに近づきます。
(4) 【メンバー視点】 PMを助ける「精度の高い見積もり」
さて、ここからが本題です。
PMがこれらの手法を使って見積もりを作るとき、誰の情報が一番頼りになるでしょうか?
「この機能の実装、どれくらいかかりそう?」
そう、実際にそのタスクを実行する皆さんの「現場の感覚」です!
PMは皆さんを信頼して「見積もり、お願い」と依頼します。
この時、皆さんが4年目の中堅メンバーとして、PMを助ける「精度の高い見積もり」を出すために、絶対に意識してほしいコツがあります。
PMを助ける「見積もり」のコツ
- 「希望」ではなく「事実」を伝える:「早く終わらせなきゃ」というプレッシャーから、「3日でいけると思います!(本当は5日かかりそうだけど…)」と、希望的観測を報告してしまう。これが、プロジェクトが失敗する最大の原因の一つです!PMが知りたいのは「あなたがどれだけ頑張れるか」ではなく、「客観的に見て、どれだけかかりそうか」という事実です。根拠を持って「5日は必要です」と伝える勇気を持ってください。
- 「前提条件」を明確にする:「3日でできます」という報告だけでは不十分です。「3日でできます。ただし、それは○○の仕様が今日中に確定し、△△のデータが明日までにもらえる、という前提です。もしそれが遅れたら、1日ずつ後ろにズレます」このように、「何を前提に」その見積もりを出したのかをセットで伝えること! これがプロの仕事です。
- WBSを「自分ごと」として使う:PMが作ったWBSを、そのまま受け取るだけではいけません。自分の担当タスクを受け取ったら、さらに自分なりに細かく分解(「脳内WBS」でもOKです)し、日々のタスク管理に応用しましょう。「今日はこのサブタスクまで終わらせる」と具体的にすることで、自分の進捗も正確に把握できます。
「見積もりが正確な人」は、チームから絶大な信頼を得ます。
それは、自分ができること・できないことを客観的に把握し、それを正確に伝えられる「プロフェッショナル」の証だからです。
まとめ
今回は、「計画の土台」であるWBSと見積もりについて、特に「メンバー視点でどう貢献するか」を重点的にお話ししました。
- WBSは「やるべきことの地図」。
- 見積もりは「希望」ではなく「事実と前提条件」を伝える。
この2つを実践するだけで、皆さんはPMにとって、何物にも代えがたい「良きパートナー」になれるはずです。
さて、地図(WBS)ができ、時間(見積もり)も分かりました。
でも、旅(プロジェクト)には予期せぬトラブルがつきものですよね?
次回は、第4章「『転ばぬ先の杖』:プロジェクトのリスク管理」。
プロジェクトに潜む「地雷」をどうやって見つけ、どう対処するか、その視点を学びます! お楽しみに。
「ヤバい」のサインを見逃すな! メンバーこそが最強の「リスクセンサー」
こんにちは。ゆうせいです。
前回は、プロジェクトの「地図」であるWBSと、「旅の計画」である見積もりについて学びましたね。PMを助ける「精度の高い見積もり」のコツ、覚えていますか? 「希望」ではなく「事実と前提条件」を伝えることが、プロの仕事でした。
さて、完璧な地図(WBS)と計画(見積もり)が手に入りました。
これでプロジェクトという旅は安泰! …でしょうか?
残念ながら、旅にトラブルはつきものです。
「予定していた道が工事中だった」
「メンバーのAさんが風邪でダウンしてしまった」
「お客様から『やっぱりあの機能も欲しい』と急な要望が来た」
こんな「予期せぬ出来事」にどう立ち向かうか。
第4章は、プロジェクトを無事にゴールへ導くための「転ばぬ先の杖」、「リスク管理」について学んでいきましょう!
(1) 【リスク】 「問題」と「リスク」の違いとは?
いきなりですが、皆さんに質問です。
「問題」と「リスク」、この2つの言葉の違いを、ちゃんと説明できますか?
似ているようで、実はまったく違います。
この違いを理解することが、リスク管理の第一歩ですよ!
- 問題 (Problem):すでに「発生してしまった」マズイこと。例:「サーバがダウンして、システムが停止している」「バグが大量に見つかり、納期に間に合わないことが確定した」これはもう「火事が起きている」状態です。やるべきは「消火活動(=問題解決)」しかありません。
- リスク (Risk):まだ「発生していない」けれど、「将来発生するかもしれない」マズイこと。例:「このサーバ、最近ちょっと動作が不安定だ(=将来ダウンするかも)」「Aさんのタスクが集中しすぎている(=Aさんが倒れたら終わるかも)」これは「なんだか焦げ臭い」「火の気が近くにある」状態です。
どうでしょう?
「問題」になってから(火事になってから)では、もう手遅れだったり、対処に莫大なコストがかかったりします。
だからこそ、私たちは「リスク」の段階で、つまり「焦げ臭いな」と感じた瞬間に手を打つ必要があるんです!
「火事になる前」に火の気を取り除く。それがリスク管理の目的です。
(2) 演習:プロジェクトに潜むリスクの洗い出し
では、皆さんのプロジェクトには、どんな「火の気」が潜んでいるでしょうか?
(研修の場では、ここで「自分たちのプロジェクトに潜むリスク」をブレインストーミングしてもらいます!)
…(演習中)…
たくさんの「焦げ臭い」ポイントが見つかったかもしれませんね。
リスクは、本当に色々なところに潜んでいます。
- 技術的リスク: 「使おうとしている新技術、誰も使ったことがないけど大丈夫?」
- リソースリスク: 「Aさんに仕事が集中しすぎ。彼が倒れたらどうする?」
- 外部リスク: 「お客様の担当者が急に変わるかもしれない」
- スケジュールリスク: 「このタスク、見積もりが甘すぎて遅れそう」
- コミュニケーションリスク: 「リモートワークで、チーム内の認識がズレていそう」
どうですか? 「あ、うちのチームも…」と思い当たる節がありませんか?
「これくらい大丈夫だろう」「きっと誰かが気づいてるはず」
そう思っている小さな「違和感」こそが、プロジェクトを炎上させる「リスク」の正体なんです。
(3) 【メンバー視点】 メンバーは最強のリスクセンサー
さて、ここからが今回の最重要ポイントです。
PMはプロジェクト全体を見ていますが、いわば「高い展望台」から見ている船長です。
一方、皆さんは、実際にエンジンを動かし、甲板で作業をしている「現場のクルー」です。
「エンジンの音が、いつもと少し違う気がする」
「積荷のロープが、1本だけ少し緩んでいる」
こんな「現場の小さな違和感」に、一番最初に気づけるのは誰でしょうか?
そう、皆さん自身です!
4年目の中堅メンバーである皆さんは、PMにとって「最強のリスクセンサー」なんです。
センサーが「異常」を検知したら、どうすべきか?
黙っていてはいけませんよね。すぐに「報告」し「相談」する必要があります。
リスクを「報告」する勇気
これが、なかなか難しい。
特に「悪いニュース」ほど、報告しにくいのが人間の心理です。
「これを報告したら、怒られるんじゃないか…」
「まだ『問題』になったわけじゃないし、自分で何とかできるかも…」
この「自分で何とかできるかも」が、一番危険な考え方です!
あなたが「リスク」だと思った時点で、それはもうあなた一人のものではなく、「チーム全体のリスク」です。
あなたが抱え込み、万が一「問題(火事)」になってしまったら…?
その被害は、あなたが想像するよりもずっと大きくなってしまいます。
「悪いニュース」や「ネガティブな情報」ほど、早く報告すること。
「ヤバいかも」と思った瞬間に、すぐに声を上げること。
これは、PMを助けるパートナーとして、最も大切な「勇気」です。
リスクを「相談」する技術
ただし、勇気を持って声を上げると言っても、「ヤバいです!どうしましょう!」とパニックになって報告するだけでは、4年目として少し物足りません。
PMが知りたいのは、「で、どうなりそう? どうしたらいい?」ということです。
そこで「相談」の技術が必要になります。
- 悪い例:「Aさんのタスク、このままだと遅れそうです!ヤバいです!」→ PM:「(で、どうヤバいの…? 何をすればいいんだ…?)」
- 良い例(相談):
- 事実(リスク): 「Aさんの担当タスクですが、少し遅れが出るかもしれません」
- 原因/根拠: 「お客様からの仕様確認の返事が、想定より3日遅れているためです」
- 影響: 「このままだと、Aさんのタスクが金曜日に終わらず、週末にBさんが予定していた結合テストが開始できなくなりそうです」
- 対策案/相談: 「そこで、Bさんのタスクと一部入れ替えるか、あるいはPMからお客様に再度、確認を催促してもらえませんか?」
どうですか?
ここまで整理して「相談」してくれれば、PMは「OK、すぐにお客様に連絡する! Bさんへの調整も頼む!」と、即座に次のアクション(=リスクへの対策)を打つことができますよね。
「問題」として一人で抱え込むな!
「リスク」の段階で、対策案も添えて「チームで相談」する。
これが、最強のリスクセンサーである皆さんの仕事です!
まとめ
今回は、「問題」と「リスク」の違い、そしてメンバーこそが「最強のリスクセンサー」であることについて学びました。
- 「問題」は火事。「リスク」は火の気。
- 「焦げ臭い」と感じた「違和感」を、決して放置しないでください。
- 「悪いニュース」ほど早く報告する勇気を持つこと。
- 「ヤバい」と騒ぐだけでなく、事実・影響・対策案を添えて「相談」する技術を磨くこと。
リスク管理は、ネガティブな犯人捜しではありません。
未来に起こるかもしれないトラブルを「全員で」先回りして防ぎ、プロジェクトを成功に導くための、とても「ポジティブ」な活動なんです。
さて、次回はいよいよ「プロジェクトの成功とは何か?」という本質に迫ります。
第5章「チームで守る『QCD』の考え方」。
品質、コスト、納期…これらをどうやって守っていくのか、一緒に考えていきましょう!
プロジェクトの「成功」とは何か? 中堅メンバーが守るべき「QCD」というモノサシ
こんにちは。ゆうせいです。
前回は、プロジェクトに潜む「リスク(火の気)」をいかに早く見つけ、どう「相談」するかについて学びました。「ヤバいかも」という違和感は、チーム最強のリスクセンサーである皆さんの大切なスキルだというお話でしたね。
さて、地図(WBS)を持ち、計画(見積もり)を立て、転ばぬ先の杖(リスク管理)も準備しました。
いよいよ最後のピースです。
そもそも、私たちが目指す「プロジェクトの成功」とは、一体何をもって「成功」と呼ぶのでしょうか?
第5章は、その最も基本的な成功指標である「QCD」について、演習も交えて深く考えていきます!
(1) 【QCD】 プロジェクトの成功指標「QCD」とは
皆さんは「QCD(キューシーディー)」という言葉を聞いたことがありますか?
これは、プロジェクトの成功を測るための、最も重要で、最も基本的な「3つのモノサシ」のことです。
この3つのバランスをいかにして守り抜くか。それがプロジェクトマネジメントの核心とも言えます。
一つずつ、その本当の意味を見ていきましょう。
Q (Quality): 「品質」とは何か?
さあ、皆さんに質問です。「品質が高い」とは、どういう状態でしょうか?
「バグがないこと?」
「すごく高機能なこと?」
どちらも正解のようで、少し違います。
例えば、あなたが「家族5人でキャンプに行くための車」が欲しいとします。
そこに、世界最速のF1カー(バグは一切なし、超高機能!)を届けられたら、あなたは「品質が高い」と満足するでしょうか?
…しないですよね。「こんなの求めてない!」と。
つまり、品質(Q)とは、お客様が本当に求めている「要求」や「期待」に、どれだけ応えられているか、という度合いなんです。
バグがないこと(=技術的な正しさ)はもちろん大切ですが、それ以前に「お客様の役に立つものか?」という視点が、品質の根本なんですね。
C (Cost): 「コスト」とは何か?
次に「コスト」です。
これは「お金(費用)」のことでしょうか? もちろん、それも含まれます。
しかし、プロジェクト、特にITの世界で最も大きなコストは、皆さんの「時間」です。
つまり「工数(こうすう)」(=人が動く時間)のこと。
「このプロジェクトは10人月(にんげつ)」と言ったら、「10人が1ヶ月働く分の作業量(=コスト)」がかかる、という意味です。
皆さんが8時間働けば、8時間分のコストが発生しています。
もし、手戻りやムダな作業で1時間を浪費したら、それはプロジェクトの貴重な「コスト(予算)」を1時間分、捨てているのと同じことなんです。
コスト意識とは、「自分自身の時間を大切に使う」ことから始まります。
D (Delivery): 「納期」とは何か?
最後は「納期」です。
「決まった日までに終わらせること」…もちろん、その通りです。
では、なぜ納期はそんなに重要なのでしょうか?
「少しくらい遅れても、良いものを作ればいいじゃないか」と思うかもしれません。
想像してみてください。
「クリスマス商戦に向けたECサイトの新機能」を、あなたが担当したとします。
結果、「すごく良い機能」ができた!
でも、完成したのが「12月28日」だったら…?
もう、手遅れですよね。プロジェクトは大失敗です。
納期(D)とは、そのプロジェクトが生み出す「価値」が、市場やお客様にとって「意味のある期限」のことなんです。
納期を守ることは、プロジェクトの価値そのものを守ることなんですね。
(2) 演習:QCDのバランスとトレードオフ
さて、この「Q・C・D」ですが、とても厄介な性質を持っています。
それは、「この3つは、同時には満たせない(=トレードオフの関係)」だということです。
(研修の場では、ここで「QCDの三角形」を使ったワークを行います)
イメージしてみてください。皆さんがPMから、こんな無茶振りをされたとします。
- 「品質は最高(Q↑)で、とにかく安く(C↓)やってくれ!」→ あなたならどう答えますか?→ 「…それなら、時間はいくらかかってもいいんですね?(D↑)」(安く(少ない人数で)、最高品質(手抜きなし)でやるなら、時間がかかるのは当然です)
- 「とにかく早く(D↓)、安く(C↓)仕上げてくれ!」→ あなたならどう答えますか?→ 「…分かりました。その代わり、品質はボロボロになりますよ?(Q↓)」(安い・早いを実現するには、テストを省略するなど、品質を犠牲にするしかありません)
- 「最高品質(Q↑)で、最速(D↓)で頼む!」→ あなたならどう答えますか?→ 「…承知しました。その代わり、コストは青天井ですよ?(C↑)」(最高の専門家を世界中から大量に集めてくれば、可能かもしれません。莫大なお金がかかります)
どうでしょう?
「早くて、安くて、ウマい」を完璧に実現するのは、プロジェクトにおいては「不可能」なんです。
PMの仕事とは、この3つの「優先順位」を決め、その「バランス」を取ること。
「今回のプロジェクトは、何よりも納期(D)が命だ。その代わり、品質(Q)はここまででOKにしよう」
といった判断を下し、チームとその認識を合わせることなんです。
(3) 【メンバー視点】 日々の業務でQCDを意識する
さあ、ここからが4年目メンバーである皆さんの出番です。
PMがQCDのバランスを取るために、皆さんは日々の業務で何ができるでしょうか?
「チーム貢献者」として、できることは3つあります!
1. 進捗の「正確な」報告(DとCのセンサー)
PMが最も恐れるのは、納期(D)やコスト(C)の「実態」が見えなくなることです。
そして、PMを一番悩ませるのが、メンバーからの「90%の罠」と呼ばれる報告。
- PM:「あのタスク、進捗どう?」
- メンバー:「順調です! たぶん90%くらい終わってます!」
この「90%」が、1週間経っても「90%」のまま…なんて経験、ありませんか?
この「90%」は、「感覚」や「希望」であって、「事実」ではありません。
4年目メンバーの報告は、「事実」でなければなりません。
「WBSで5つに分解したサブタスクのうち、4つは完了しました。最後の1つは、昨日報告した○○というリスク(問題)対応のため、未着手です」
ここまで報告してくれれば、PMは「OK、じゃあコスト(工数)は残り1タスク分だな。納期への影響は…」と、正確な判断ができます。
あなたの「正確な報告」が、DとCを守る防波堤になるんです。
2. スコープ(作業範囲)の確認(QとCの防波堤)
「品質(Q)」とは、「要求されたものを、ちゃんと作ること」でしたね。
ここで危険なのが、「良かれと思って」要求されていない機能(=スコープ外)まで作ってしまうこと。
これを「金メッキ(Gold Plating)」と言います。
「どうせなら、こっちのボタンも付けておいた方が親切だろう」
その親切心、素晴らしいです。
しかし、その「勝手な追加」が、
- 余計なコスト(C)を発生させ、
- テストが漏れてバグを生み出し(Qの低下)、
- 納期(D)を圧迫する…という最悪の結果を招くことがあります。
中堅メンバーとしてやるべきは、「確認」です。
「この作業は、本当にスコープ(要求)に含まれていますか?」
「こんな機能を追加するアイデアがあるのですが、どうでしょう?」
勝手にやらない。まず「相談」する。これが品質(Q)とコスト(C)を守る鉄則です。
3. 品質のレビューへの積極的参加(Qの砦)
「品質(Q)」は、最後のテスト工程だけで作られるものではありません。
日々の設計、日々のコーディング、その一つひとつの積み重ねです。
その品質を守る最後の砦が、同僚同士で行う「レビュー(相互チェック)」です。
4年目にもなれば、レビューは「受ける」側から、「する」側としての貢献も強く求められます。
- 後輩のコードを見て、「バグがないか?」だけでなく、「お客様の要求を満たしているか?」という視点でチェックする。
- もちろん、自分のコードも積極的にレビューしてもらい、指摘を素直に受け入れる。
レビューは「間違い探し」の場ではありません。
「チーム全員で品質(Q)を高め合う」ための、最も重要でポジティブな活動です。
あなたの積極的な参加が、チームの品質を底上げします。
まとめ
今回は、プロジェクトの成功指標である「QCD」について学びました。
- Q:品質(顧客の要求を満たしているか)
- C:コスト(工数=皆さんの時間をムダにしていないか)
- D:納期(価値のある期限を守れているか)
この3つは「トレードオフ」の関係にあり、PMがそのバランスを取っています。
そして、4年目の中堅メンバーである皆さんは、
- 「正確な」進捗報告 でDとCを守り、
- 「スコープ」の確認 でQとCを守り、
- 「積極的なレビュー」 でQを守る、という、QCDの「守護神」とも言える重要な役割を担っているのです!
さあ、これですべての講義が終了しました。
次回はついに最終回。「まとめとアクションプラン」です。
この研修で学んだことを、明日からの現場でどう活かしていくか、一緒に考えていきましょう!
研修お疲れ様でした!「PMの視点」で、明日からチームの主役になろう
こんにちは。ゆうせいです。
ついに「PM基礎研修」の最後の章を迎えましたね。
全5回にわたり、本当にお疲れ様でした!
「指示待ち」から「チーム貢献者」へ、という熱いテーマで始まったこの研修、皆さんの意識や視点に、何か新しい「光」が差し込んでいれば、とても嬉しく思います。
さて、最終回は「まとめとアクションプラン」。
この研修で得た「武器」を、明日からの現場でどう活かしていくか。
最後の仕上げを、一緒に考えていきましょう!
(1) 研修の振り返り:手に入れた「新しい視点」
まずは、この研修で私たちが何を学んできたか、一度振り返ってみましょう。
- 第1章:意識改革
- 「タスク実行者」から「チーム貢献者」へ。PMの「良きパートナー」になるという覚悟を決めました。
- 第2章:全体像
- プロジェクトとは「価値を届ける」活動であり、アジャイルなど多様な「進め方」があることを知りました。
- 第3章:計画(WBS・見積もり)
- 計画はPMだけのものではありません。「精度の高い見積もり」でPMを助ける、プロの報告技術を学びました。
- 第4章:リスク管理
- メンバーこそが「最強のリスクセンサー」。「ヤバいかも」という違和感を「相談」する勇気と技術を学びました。
- 第5章:QCD
- プロジェクトの成功指標「QCD」。「正確な報告」「スコープ確認」「レビュー参加」で、日々の業務からQCDを守る方法を学びました。
どうでしょう?
これらはすべて、「PMになるための知識」ではありません。
すべて、「中堅メンバーとして、チームの成功に主体的に貢献するための視点と技術」だったはずです。
昨日までのあなたは、もしかしたら「自分のタスクを、どうやって時間内に終わらせるか」だけを考えていたかもしれません。
しかし、この研修を終えた今のあなたは、
「このタスクは、プロジェクト全体のどのWBSに位置づけられるのか?」
「この見積もりで、コスト(C)や納期(D)に影響は出ないか?」
「なんだか焦げ臭い(リスク)がする。PMにどう相談しよう?」
…というように、一段高い「PMの視点」を持って、日々の仕事を見渡せるようになっているはずです!
それこそが、この研修で皆さんに手に入れてほしかった、最大の「武器」なんです。
(2) 中堅メンバーとしての成長に向けたアクションプラン策定
さて、研修は「受けて終わり」では、何の意味もありません。
どれだけ素晴らしい知識や視点も、「使わなければ」宝の持ち腐れです。
スポーツ選手が、ルールブックを完璧に覚えただけでは試合に勝てないのと同じ。
明日からの「現場」という試合で、学んだことをどう使うか。
ここからが、本当の本番です!
そこで、あなただけの「アクションプラン(行動計画)」を立ててみましょう。
難しく考える必要はありません。次の3つの質問に、自分なりの答えを書き出してみてください。
質問1:明日、すぐに始められる「小さな一歩」は?
まずは、ハードルをうんと低くして。明日、すぐにでも実行できる「小さな変化」を宣言しましょう。
- (例)自分のタスク進捗を「90%です」ではなく、「5つのうち4つ完了です」と「事実」で報告してみる。
- (例)後輩のコードレビューで、バグだけでなく「これはお客様の要求(Q)を満たしてる?」と「Q」の視点を加えてみる。
- (例)タスクの見積もりを出すとき、「○○が前提です」と「前提条件」を一言添えてみる。
質問2:今週(または来週)、意識して「挑戦」したいことは?
小さな一歩に慣れたら、次は少しだけ「勇気」が必要なことに挑戦してみましょう。
- (例)「ヤバいかも」と感じた小さな違和感(リスク)を、抱え込まずに「相談」の形でPMに報告してみる。
- (例)PMが作ったWBSを見て、「このタスク、もう少し細かく分解しませんか?」と提案してみる。
- (例)「良かれと思って」やりそうになった作業(スコープ外)を一度止め、「これって必要ですか?」と確認してみる。
質問3:3ヶ月後、あなたはどんな「チーム貢献者」になっていますか?
最後は、少し未来の「なりたい姿」をイメージしてみましょう。それがあなたの「目標」になります。
- (例)PMから「君の正確な報告のおかげで、リスクに先回りできたよ」と信頼される存在になっている。
- (例)後輩から「○○さんに相談すると、プロジェクト全体(QCD)の視点でアドバイスがもらえる」と尊敬される存在になっている。
- (例)チームの会議で、「指示待ち」ではなく「自分はこうすべきだと思う」と主体的に発言している。
研修を終える皆さんへ:学習は続く
この研修は「PM基礎」です。文字通り、皆さんは「基礎」を手に入れ、スタートラインに立ったところです。
今回、概要しか触れられなかった「PMBOK第7版」の原則や、「アジャイル」な開発手法の世界は、もっともっと奥深く、面白いものです。
もし興味が湧いたら、ぜひ自分で本を読んだり、次の研修に進んだりして、学習を続けてみてください。
しかし、どれだけ知識を詰め込んでも、一番大切なことを忘れてはいけません。
それは、第1章でお話しした「当事者意識(オーナーシップ)」です。
「このプロジェクトは、PMだけのものじゃない。自分たちのものだ!」
「PMを助け、後輩を導き、チームを成功させるのは、中堅である自分だ!」
この熱い「当事者意識」こそが、皆さんを「タスク実行者」から「チームの中核」へと押し上げる、最大の原動力です。
皆さんがこの研修で得た「PMの視点」を武器に、それぞれの現場で主体的に、そして輝かしく活躍してくれることを、心から期待しています!
長い間、お疲れ様でした!
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投稿者プロフィール
- 代表取締役
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セイ・コンサルティング・グループ株式会社代表取締役。
岐阜県出身。
2000年創業、2004年会社設立。
IT企業向け人材育成研修歴業界歴20年以上。
すべての無駄を省いた費用対効果の高い「筋肉質」な研修を提供します!
この記事に間違い等ありましたらぜひお知らせください。
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