新人エンジニアのための『共同幻想論』と『サピエンス全史』入門――技術者こそ知るべき「幻想」のチカラ
こんにちは。ゆうせいです。
今日のテーマはちょっと変わり種。でも、新人エンジニアのあなたにこそ届けたい話なんです。
それは、「社会は幻想で動いている」という考え方。
「え?幻想って夢とか妄想のこと?」と思った方、大丈夫です。ここで言う幻想とは、人間社会が成立するうえで必要な“共有された信念”のことなんです。
この考え方を深く掘り下げたのが、吉本隆明の『共同幻想論』と、ユヴァル・ノア・ハラリの『サピエンス全史』という2つの名著。
「文学と歴史?そんなの技術と関係あるの?」と思うかもしれません。でも、実は技術者こそ「幻想=フィクション」の力を理解すべき理由があるんです。
さっそく、やさしく噛み砕いて解説していきますね。
社会は幻想でできているってどういうこと?
吉本隆明の「共同幻想」とは?
まずは吉本隆明(よしもとたかあき)の『共同幻想論』から。
吉本が使った「共同幻想(きょうどうげんそう)」という言葉は、ざっくり言うとこんな意味です。
多くの人が無意識に共有している“現実ではないけれど、現実のように信じられている考え”のこと。
例えば、以下のようなものが共同幻想です。
- 国という概念:実際に国境が壁のように存在しているわけではありませんが、そこを越えると「外国」だと認識しますよね。
- 法律:紙に書かれただけのルール。でも、私たちはそれに従っています。
つまり、物理的な存在ではないけど、みんなが信じているから「本当にあるもの」として機能する。
プログラミングで例えるなら、仕様書やプロジェクト計画書のようなものです。
仕様書に「このボタンを押すと通知が飛ぶ」と書いてあったら、それがまだ実装されていなくても「そうなるもの」として開発が進みますよね?
それが共同幻想のしくみとよく似ています。
ハラリの「フィクション」とは?
次に『サピエンス全史』のユヴァル・ノア・ハラリが語る「フィクション(虚構)」。
彼はこんなことを言っています。
人間が文明をつくれたのは、「虚構(フィクション)」を信じられるからだ。
たとえば、
- 株式会社という仕組み:人ではないけれど、法律上「人格」を持っています。
- 通貨(お金):紙やデータにすぎないけれど、価値があるとみんなが信じている。
これらはすべて、ハラリのいう「虚構」です。
どちらも、吉本の「共同幻想」とほぼ同じ考え方です。
違いは、吉本が「人間の内面(心)」に注目したのに対し、ハラリは「進化と集団行動」に注目している点です。
技術者にとっての「幻想」の意味
では、エンジニアにとって、この考え方はどんな意味を持つのでしょうか?
1. 「プロダクト」も幻想である
たとえば、あなたがアプリを開発したとします。
ユーザーにとっては、そのアプリが「どこかで動いている」と信じるから、使うわけです。
でも実際には、裏でAPIが呼ばれたり、データベースが応答したり…という仕組みがあるだけ。
つまり、ユーザー体験そのものが「共同幻想」なんです。
UX(ユーザー体験)とは、幻想のデザインとも言えます。
現実にはない「安心感」や「一体感」を生み出すデザイン、それが技術の力なんですね。
2. チーム開発も幻想で動く
スクラム、アジャイル、OKR、バリュー…。
現代の開発は「共通の前提(幻想)」がないと機能しません。
たとえば「スプリント計画」を立てるとき、全員がその期間や目的に納得していなければ、うまく回りませんよね?
つまり、チームを動かす力もまた幻想(=共有信念)に支えられているのです。
グラフで見る「幻想のチカラ」
ここで少し図を使ってイメージを整理しましょう。
幻想の拡張による集団形成力
| 信じる人の数 | 実現できる社会の規模 |
|--------------|----------------------|
| 1人だけ | 妄想レベル |
| 数人 | 家族、恋愛(対幻想) |
| 数百人 | 部族、コミュニティ |
| 数万人〜 | 国家、宗教、通貨(共同幻想) |
人が増えるほど、「共通で信じる何か=幻想」がなければまとまらない。
メリット・デメリットのまとめ
視点 | メリット | デメリット |
---|---|---|
吉本隆明(内面重視) | 人間の感情や文化への洞察が深い | 難解で抽象的なところが多い |
ハラリ(進化重視) | 歴史や社会制度のしくみがわかりやすい | 人間の心理描写は浅め |
エンジニアとして学びに活かすには?
学びのステップ
- 自分の仕事の中の「幻想」を探してみよう!
- チームのルール、コードレビュー、KPIなど、みんなが信じている前提はなにか?
- 『共同幻想論』や『サピエンス全史』の入門書を読む
- 解説書、要約記事、動画から入るのがオススメです。
- UXやプロダクト設計に活かす
- ユーザーが「そうだと信じる世界」をどうつくるか?を考える視点が養われます。
おわりに:幻想を操れるエンジニアになろう
コードを書くのも大事。
でも、社会のしくみを理解し、それを設計に活かせるエンジニアは、より価値の高い存在です。
次のステップとしては、マーケティング、ブランディング、デザイン思考の中での「幻想」の役割を学んでみるとさらに視野が広がりますよ。
現実と幻想の間で生きる人間社会。
その「しくみ」に強くなることは、技術を超えてあなたの可能性を広げてくれるはずです。
また一緒に学んでいきましょう!
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投稿者プロフィール

- 代表取締役
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セイ・コンサルティング・グループ株式会社代表取締役。
岐阜県出身。
2000年創業、2004年会社設立。
IT企業向け人材育成研修歴業界歴20年以上。
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