新入社員が眠らない社会保険の授業法。「人生のサブスク」と教えれば、給与明細の見方が変わる

こんにちは。ゆうせいです。

研修講師の皆さん、新入社員研修の準備は順調でしょうか。

ビジネスマナーやロジカルシンキングの講義は盛り上がっても、「社会保険」のセクションになった途端、受講生の目が死んでいく。そんな経験はありませんか。

「厚生年金保険とは……」と条文通りの定義を読み上げても、社会人になりたての彼らにとっては、ただの手取りを減らす「謎の天引きシステム」にしか見えません。

今回は、そんな退屈になりがちな社会保険の仕組みを、新入社員が「えっ、会社ってそんなにお得なの?」と身を乗り出すような切り口で解説するための虎の巻をお届けします。

社会保険は「強制加入の人生サブスク」である

まず、彼らの興味を引くために、社会保険を「税金」ではなく「超優遇されたサブスクリプション(定額制サービス)」として定義し直してみましょう。

日本の公的保険制度は、大きく分けて 「広い意味での社会保険」 と呼ばれ、その中に5つのガードマンがいます。これをただ羅列するのではなく、2つのチームに分けて教えるのがポイントです。

チーム1:狭い意味での社会保険(健康・年金・介護)

日常生活や老後を支える、生きるためのベースキャンプです。会社と社員で保険料を折半(半分ずつ出し合う)するのが最大の特徴です。

チーム2:労働保険(雇用・労災)

働くことに関連するトラブル、つまり失業や怪我に備える保険です。

では、この5人のガードマンを、高校生や新入社員でもわかるようにキャラクター化して解説していきましょう。

5つのガードマンをキャラ付けして教える

1. 健康保険:最強の医療パスポート

これは彼らにとって最も身近な存在です。

「3割負担で医者に行けるカード」という説明だけでは弱いです。「アメリカで盲腸の手術をしたら数百万円かかることもあるが、このカードがあれば日本では数万円で済む。しかも、高額療養費制度という裏技を使えば、どんなに手術費がかかっても月額の上限は約8万円程度に抑えられる」と、具体的な金額のインパクトで伝えてください。

病気や怪我をしたときの、最強の割引パスポートです。

2. 厚生年金保険:老後+αの積み立て

新入社員が一番嫌がるのがこれです。「自分たちがもらう頃には破綻しているのでは?」という不信感があるからです。

ここでは「老後の貯金」という側面だけでなく、「障害年金」と「遺族年金」という機能があることを強調してください。もし明日事故に遭って働けなくなっても、国から給料のようなものが支払われる。生命保険代わりになる機能がついていることを教えましょう。

3. 介護保険:40歳からの追加パック

これは新入社員(通常22歳前後)にはまだ天引きされません。「40歳になったら自動的に課金が始まる、親や自分の介護のための積み立て」とさらっと触れる程度で大丈夫です。

4. 雇用保険:失業時の命綱

「ハローワークに行くための保険」です。会社を辞めたときや、解雇されたときに失業給付がもらえるだけでなく、育児休業中の手当もここから出ます。「キャリアチェンジやライフイベントを支える保険」と位置づけると、ポジティブに響きます。

5. 労災保険:業務中の無敵シールド

通勤中や仕事中の怪我を補償する保険です。これのすごいところは、保険料の全額を会社が負担してくれる点です。社員の財布は痛みません。治療費はタダ、休んでいる間の給料補償もある、仕事における無敵のシールドです。

数字で見るメリット:会社が払う「見えない給料」

ここで、講師の皆さんが一番力を込めて伝えてほしいのが「労使折半(ろうしせっぱん)」の威力です。

給与明細の控除額を見て「こんなに引かれるの!」と嘆く新入社員に、次の計算式を見せてあげてください。

本来の保険料 = あなたの負担額 \times 2

健康保険や厚生年金は、社員が払っている額と同じ額を、会社もこっそり国に払っています。

例えば、毎月3万円引かれているとしたら、実は会社も3万円払ってくれています。つまり、会社は給料とは別に、毎月3万円分の「見えない手当」を支給してくれているのと同じなのです。

これを国民健康保険(自営業者などが加入)と比較すると、その恵まれ具合がわかります。会社員であるというだけで、将来の保障を半額で買えているようなものです。

採用担当者や講師が知っておくべきデメリットの伝え方

もちろん、良いことばかりではありません。公平な視点を持つために、デメリットもしっかり伝えましょう。

手取りが減るという事実

額面給与から約 15 \% ほどが天引きされます。これは避けられない事実です。初任給をもらったときのショックを和らげるためにも、「額面と手取りは違う」という心の準備を研修でさせておくことが重要です。

選択の自由がない

民間の保険なら「この特約はいらないから安くして」と言えますが、社会保険はフルパッケージ強制加入です。使わなくても払わなければなりません。これを「相互扶助(助け合い)」の精神として教えるか、「リスクヘッジのコスト」として教えるかは、講師の腕の見せ所です。

まとめ

社会保険の体系について、講師向けに解説しました。

  • 社会保険は「税金」ではなく「人生のサブスク」と定義する
  • 5つの保険を「医療・年金・介護・雇用・労災」の5大機能としてキャラ付けする
  • 会社が保険料を半分(労災は全額)負担している「労使折半」の恩恵を強調する

給与明細の「控除」の欄は、単なるマイナスではなく、会社と国が用意したセーフティネットの証です。

こう教えることで、新入社員は自分の会社に対して「守られているんだな」という帰属意識を持つことができます。退屈な制度の話を、信頼関係構築のチャンスに変えてみてください。

今後の学習の指針

さらに深い知識を教えたい場合は、「扶養(ふよう)」の仕組みについて学んでみてください。「103万円の壁」や「130万円の壁」といった言葉を聞いたことがあると思いますが、これは税金と社会保険の扶養のルールの違いから来ています。

ここをクリアに解説できるようになると、受講生からの「将来、結婚したらどうなるんですか?」という質問にもスマートに答えられるようになりますよ。

それでは、またお会いしましょう。

セイ・コンサルティング・グループでは新人エンジニア研修のアシスタント講師を募集しています。

投稿者プロフィール

山崎講師
山崎講師代表取締役
セイ・コンサルティング・グループ株式会社代表取締役。
岐阜県出身。
2000年創業、2004年会社設立。
IT企業向け人材育成研修歴業界歴20年以上。
すべての無駄を省いた費用対効果の高い「筋肉質」な研修を提供します!
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学生時代は趣味と実益を兼ねてリゾートバイトにいそしむ。長野県白馬村に始まり、志賀高原でのスキーインストラクター、沖縄石垣島、北海道トマム。高じてオーストラリアのゴールドコーストでツアーガイドなど。現在は野菜作りにはまっている。