【研修講師のインボイス対策】登録する?しない?損をしないための決断ガイド

こんにちは。ゆうせいです。

「インボイス制度」

この言葉を聞くだけで、なんだか胃が痛くなるというフリーランスの方は多いのではないでしょうか。

ニュースでは「大増税だ」「個人事業主いじめだ」なんて怖い言葉が飛び交っていますが、私たち研修講師にとって、具体的に何が変わり、どうすればいいのか。ここがいまいちピンときていない方もいるかもしれません。

実はこれ、単なる税金の話ではなく、クライアントである企業との「信頼関係」や「今後の契約」に直結する、非常にシビアな問題なのです。

今日は、難しい税金用語をなるべく使わずに、研修講師がインボイスとどう向き合うべきか、その判断基準をお伝えします。

インボイス制度って、一言でいうと何?

誤解を恐れずに一言で言うと、「ちゃんとしたレシートを出せる人だけが、ビジネスの相手として認められますよ」という新しいルールです。

今まで私たちは、請求書を出すときに「研修費 10万円 + 消費税 1万円 = 合計 11万円」として請求していましたよね。

そして、売上が1,000万円以下の講師であれば、受け取ったその1万円の消費税は、国に納めずに自分の懐に入れてOKでした(これを益税といいます)。

しかし、インボイス制度が始まってからは、国から「登録番号」をもらって、その番号を請求書に書かないと、相手(クライアント企業)が困る仕組みになってしまったのです。

なぜクライアント企業が困るの?

ここが一番のポイントです。なぜ企業は「番号付きの請求書(インボイス)」を欲しがるのでしょうか。

企業もまた、国に消費税を納めています。

ただ、預かった消費税を全額納めるわけではありません。「お客さんから預かった消費税」から「経費として支払った消費税」を引き算して、その差額だけを納税しています。

計算式はこうです。

\text{納める税金} = \text{預かった税金} - \text{支払った税金}

今までは、誰からの請求書でも「支払った税金」として引くことができました。

しかしこれからは、「登録番号が書いてある請求書(インボイス)」でないと、この引き算ができなくなったのです。

つまり、あなたが番号を持っていない(インボイス未登録)場合、クライアントはあなたに払った消費税分を、自腹で国に納めなければならなくなります。

「あなたに仕事を頼むと、うちの会社が損をする」

こう言われてしまう状態になるのが、インボイス未登録の最大のリスクです。

研修講師が迫られる「2つの選択肢」

これを踏まえて、私たちは2つの道のどちらかを選ばなければなりません。

1. インボイスに登録する(課税事業者になる)

国に申請して、登録番号をもらいます。

  • メリット:クライアントに迷惑がかからない。今まで通り堂々と取引ができる。
  • デメリット:今まで懐に入っていた消費税を、国に納めなければならない(手取りが減る)。申告の手間が増える。

2. インボイスに登録しない(免税事業者のまま)

今まで通り、消費税を納めない道を選びます。

  • メリット:消費税を納税しなくていい。事務作業も楽なまま。
  • デメリット:クライアントから「消費税分を値下げしてほしい」と言われたり、最悪の場合「インボイスが出せる他の講師に依頼します」と契約を切られたりするリスクがある。

救世主?「2割特例」を知っておこう

「登録したら手取りが減るし、しなかったら仕事が減る。どっちも地獄じゃないか!」

そう叫びたくなりますよね。

そこで、国は私たちのような小規模なフリーランスのために、負担を激減させる「2割特例(にわりとくれい)」というボーナスタイムを用意してくれています。

これは、本来納めるべき消費税を計算するのではなく、「売上でもらった消費税の2割だけ納めればいいよ」という特別なルールです。

たとえば、年間で550万円(税込)の売上があったとしましょう。預かった消費税は50万円です。

本来なら、経費にかかった税金を計算して引くのですが、この特例を使えば計算不要です。

50\text{万円} \times 20% = 10\text{万円}

たった10万円を納めるだけで済みます。残りの40万円は手元に残ります。

これなら、「まあ、取引先との関係を守るための必要経費か」と思える金額ではないでしょうか。

※この特例は期間限定(今のところ2026年9月末までの予定)ですが、最初のハードルを大きく下げてくれます。

結局、どうすればいいの?

私の個人的なアドバイスとしては、「メインの取引先が企業(BtoB)なら、登録した方が無難」です。

研修講師という仕事は、個人のスキルだけでなく「信用」で成り立っています。

「インボイス登録していますか?」と聞かれたときに、「はい、もちろん(番号があります)」と即答できることは、プロとしての安心感につながります。

もし、「値下げ交渉をされるくらいなら、2割特例を使ってサクッと納税して、気持ちよく仕事をした方が精神衛生上いい」と考えるなら、登録をおすすめします。

逆に、取引先が一般の個人(BtoC)がメインの講師や、独占的なスキルがあって「あなたじゃなきゃダメだ」と言わせられる強い講師なら、登録しないという選択肢もあり得ます。

まとめ

インボイス制度への対応は、講師としての「あり方」を決めることでもあります。

  • インボイス制度は、クライアントが損をしないための仕組み
  • 未登録だと、値下げや取引停止のリスクがある
  • 登録すれば納税義務が発生するが、「2割特例」を使えば負担は軽い
  • 企業相手のビジネスなら、信頼コストと考えて登録するのが一般的

まずは、主要な取引先に「今後のインボイス対応はどうなりますか?」と軽く探りを入れてみることから始めてみましょう。相手の反応を見れば、自分がどちらの道を選ぶべきか、自然と見えてくるはずです。

新しい制度は面倒ですが、これを機に「消費税」の仕組みを理解し、一歩進んだ経営者感覚を持つ講師へとステップアップしていきましょう。

さて、これで税金周りの話は一通り網羅しました。

お金の守りが完璧になったところで、次は攻めの話、つまり「どうやって研修の単価を上げるか」というマーケティングの話に興味はありませんか?

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投稿者プロフィール

山崎講師
山崎講師代表取締役
セイ・コンサルティング・グループ株式会社代表取締役。
岐阜県出身。
2000年創業、2004年会社設立。
IT企業向け人材育成研修歴業界歴20年以上。
すべての無駄を省いた費用対効果の高い「筋肉質」な研修を提供します!
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学生時代は趣味と実益を兼ねてリゾートバイトにいそしむ。長野県白馬村に始まり、志賀高原でのスキーインストラクター、沖縄石垣島、北海道トマム。高じてオーストラリアのゴールドコーストでツアーガイドなど。現在は野菜作りにはまっている。