研修講師の心構え!「聞いたことは、忘れる。やったことは、わかる」は本当だった

こんにちは。ゆうせいです。

新人エンジニア研修を担当していると、よくこんな質問を受けます。「どうすれば、早く一人前になれますか?」「効率的な学習方法を教えてください!」その気持ち、とてもよくわかります。覚えるべき専門用語や技術が次から次へと出てきて、頭がパンクしそうになることもありますよね。

そんな皆さんに、私がいつも伝えている古代中国の思想家、荀子(じゅんし)の言葉があります。

聞いたことは、忘れる。

見たことは、覚える。

やったことは、わかる。

ドキッとしませんか?これは、まさにエンジニアの成長の真理を突いた言葉なんです。今回は、この言葉を新人エンジニアの皆さんの学習にどう活かしていくか、研修講師の視点から徹底的に解説していきますね!

ステップ1:聞くだけでは忘れてしまう現実

研修の最初のころは、講義形式で新しい概念や技術について話を聞く機会が多いでしょう。例えば、「APIとは何か」「データベースの正規化とは」といったテーマです。

この「聞く」という行為は、学習の第一歩として非常に重要です。しかし、残念ながら、ただ聞いているだけの内容は、脳に定着しにくいという現実があります。人間の脳は、自分にとって重要だと判断しない情報をどんどん忘れていくようにできているからです。

皆さんも経験がありませんか?

「昨日の研修で聞いたあの用語、なんだっけ…?」

「講師の言っていたことは理解できたはずなのに、いざ説明しようとすると言葉が出てこない…」

これは、皆さんの記憶力が悪いわけでは決してありません。「聞く」という行為が、脳にとっては「受動的学習」と呼ばれる、比較的負荷の低い活動だからです。車の助手席に乗っていると、自分で運転しているときほど道順を覚えられないのと似ていますね。

ステップ2:「見る」ことで記憶は強化される

次に、「見る」というステップです。これは、ただ教科書やスライドの文字を読むだけでなく、もっと具体的なイメージを伴う活動を指します。

  • 先輩エンジニアが実際にコードを書いている様子を見る
  • 講師がシステムを操作するデモンストレーションを見る
  • 設計書やコードレビューで、動いているシステムの裏側を見る

「聞く」だけだった情報に、「見る」という視覚情報が加わることで、記憶は格段に強化されます。例えば、「API」という言葉をただ聞くだけでなく、実際に先輩がAPIを叩いてデータを取得し、画面に表示される様子を見たとしましょう。

すると、「ああ、APIってこういう風にリクエストを送ると、こんなデータが返ってくる仕組みなんだ!」と、文字情報と実際の動きが結びつき、より深く記憶に残るはずです。これは、料理のレシピを文章で読むだけでなく、料理番組でシェフが作っているのを見るのと同じ効果ですね!

しかし、荀子は「見たことは、覚える」と言っているものの、その次に「やったことは、わかる」と続けています。実は、「見る」だけではまだ足りないのです。

ステップ3:「やる」ことで初めて「わかる」に到達する

ここが最も重要なポイントです!エンジニアとしての本当の理解、つまり「わかる」というレベルに到達するためには、自分自身で「やる」、つまり手を動かす経験が不可欠です。

なぜなら、実際にやってみると、聞いたり見たりしているだけでは気づかなかった無数の「なぜ?」にぶつかるからです。

  • 「チュートリアル通りに書いたはずなのに、なぜかエラーが出る…」
  • 「このコードを少し変えたら、どう動くんだろう?」
  • 「データを登録できたけど、本当にデータベースに保存されているか確認する方法は?」

この「なぜ?」を解決しようと試行錯誤するプロセスこそが、学びの核心部分です。エラーメッセージを読み解き、原因を調査し、修正して、自分の思った通りに動いた瞬間。この一連の体験を通して、断片的だった知識が一本の線でつながり、生きたスキルへと変わっていきます。

このプロセスを、私たちは「デバッグ」と呼びます。デバッグは、単なる間違い探しではありません。自分が書いたコードと対話し、コンピュータの思考を理解しようとする、最も能動的な学習活動なのです。

一度でも苦労してバグを解決した経験は、どんな教科書を読むよりも強烈に記憶に残り、同じような問題に再び直面したときに、必ずあなたの助けとなってくれるでしょう。

具体的に何を「やる」べきか?

では、具体的にどんな行動を起こせばよいのでしょうか。いくつか例を挙げてみましょう。

  • 写経から始めるいきなりゼロからコードを書くのが難しければ、まずは書籍やWebサイトに載っているサンプルコードをそのまま書き写す「写経」から始めてみましょう。一字一句間違えずに写すことで、コードの構造や書き方の作法が自然と身についてきます。
  • 小さな変更を加えてみる写経したコードが動いたら、次は自分なりに少しだけ変更を加えてみてください。表示されるメッセージを変えてみる、計算する数値を変えてみる、など何でも構いません。その変更によって結果がどう変わるか(あるいはエラーが出るか)を観察することで、コードの意味をより深く理解できます。
  • 簡単なものを作ってみる研修で学んだ技術を使って、何か小さなものを作ってみるのも素晴らしい挑戦です。簡単な計算機、今日のタスクを管理するToDoリストなど、身の回りにあるものをテーマにしてみましょう。完成させるまでの道のりは、最高の学習体験になりますよ!

まとめ:今日から始める「わかる」ための一歩

今回は、荀子の言葉を引用して、新人エンジニアの学習ステップについて解説しました。

  1. 聞く(忘れる段階):講義などで知識の全体像を掴む。
  2. 見る(覚える段階):デモや先輩のコードを見て、具体的なイメージを持つ。
  3. やる(わかる段階):自分でコードを書き、エラーを解決する中で本質的な理解を得る。

どのステップも無駄ではありません。しかし、成長するためには、できるだけ早く「やる」の段階に移行することが重要です。

研修で新しいことを学んだら、「ふーん、なるほど」で終わらせないでください。その日のうちに、たとえ5分でもいいので、学んだ内容に関連するコードを自分の手で書いて、動かしてみる習慣をつけましょう。

その小さな一歩の積み重ねが、あなたを「わかる」エンジニアへと導いてくれるはずです。応援しています!

セイ・コンサルティング・グループでは新人エンジニア研修のアシスタント講師を募集しています。

投稿者プロフィール

山崎講師
山崎講師代表取締役
セイ・コンサルティング・グループ株式会社代表取締役。
岐阜県出身。
2000年創業、2004年会社設立。
IT企業向け人材育成研修歴業界歴20年以上。
すべての無駄を省いた費用対効果の高い「筋肉質」な研修を提供します!
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