新人エンジニア研修でServlet/JSPではなくSpring Bootを採用すべき理由
こんにちは。ゆうせいです。
企業の新人エンジニア研修では、Webアプリケーション開発の基礎を学ぶためにServletやJSPを使うことが多いですが、最近ではSpring Bootを導入する企業が増えています。なぜ今、Servlet/JSPではなくSpring Bootを採用すべきなのでしょうか?
この記事では、新人研修における技術選定の視点からSpring Bootを使うべき理由を解説します。
1. Servlet/JSPは実務でほぼ使われない
研修で学ぶ技術は「実務で役立つこと」が重要
ServletやJSPは、JavaのWebアプリケーション開発の基礎技術として登場しましたが、現在のWeb開発現場ではほとんど使われていません。
実際の開発現場での使用状況
| 技術 | 実務での使用頻度 | 
|---|---|
| Servlet | ほぼ使わない(直接記述することは稀) | 
| JSP | 一部のレガシーシステムで使用されるが、新規開発では使わない | 
| Spring Boot | 多くの企業で採用、新規開発の主流 | 
せっかく新人研修で学んでも、実際の現場で使わない技術では意味がありません。研修では、新人が現場で即戦力になれるように「実務で活用される技術を学ぶこと」が大切です。
2. Spring Bootは「今のWeb開発の主流」
Spring Frameworkの市場シェア
2022年のJavaフレームワーク市場シェアを見ると、Spring Frameworkが約40%、Jakarta EEが約20%、その他のフレームワークが40%といった割合になっています。 inside-alpha-media.com+1dexall.co.jp+1
業界別の採用状況
さらに、業界別の採用状況を見てみると、以下のようになります。 dexall.co.jp
| 業界 | Spring | Jakarta EE | その他 | 
|---|---|---|---|
| 金融 | 65% | 30% | 5% | 
| EC | 70% | 15% | 15% | 
| SaaS | 55% | 20% | 25% | 
これらのデータから、Spring Framework、特にSpring Bootが多くの企業で採用されていることがわかります。
Spring Bootが選ばれる理由
- 設定がシンプルでWebアプリ開発が容易
- 組み込みTomcatがあり、環境構築が楽
- データベース連携やセキュリティ機能が充実
研修で学ぶ技術が「そのまま実務で使える」
例えば、新人研修でSpring Bootを学べば、現場でその知識を直接活用できるため、即戦力になりやすいのです。
3. おまじない(冗長なコード)の削減
ServletやJSPを使う場合、リクエスト処理のたびにServletクラスを定義し、URLマッピングの設定をし、HttpServletRequestやHttpServletResponseを直接操作する必要があります。これにより、初心者にとっては理解しづらく、「おまじない的なコード」が増えてしまいます。
比較:Servlet/JSP vs. Spring Boot
Servletを用いた場合
@WebServlet("/hello")
public class HelloServlet extends HttpServlet {
    protected void doGet(HttpServletRequest request, HttpServletResponse response)
            throws ServletException, IOException {
        response.setContentType("text/html");
        PrintWriter out = response.getWriter();
        out.println("<h1>Hello, Servlet!</h1>");
    }
}
Spring Bootを用いた場合
@RestController
@RequestMapping("/hello")
public class HelloController {
    @GetMapping
    public String hello() {
        return "<h1>Hello, Spring Boot!</h1>";
    }
}
Spring Bootでは、アノテーションを利用することで、URLルーティングを簡潔に記述できます。「おまじない的なコード」が減ることで、開発者がビジネスロジックに集中しやすくなります。
4. Tomcatの扱いやすさ
Spring Bootには組み込みTomcatが標準搭載
Servlet/JSPを使用する場合、Tomcatのダウンロードやインストール、設定、WARファイルのデプロイ作業が必要です。これに対し、Spring Bootでは組み込みTomcatがあり、開発環境の構築が非常に楽になります。
Tomcatのセットアップ比較
| 項目 | Servlet/JSP | Spring Boot | 
|---|---|---|
| Tomcatのダウンロード | 必要 | 不要(組み込み) | 
| Tomcatの設定 | 必要 | 不要 | 
| WARファイルのデプロイ | 必要 | 不要 | 
| アプリケーションの起動 | Tomcatの起動スクリプトが必要 | mvn spring-boot:runで起動可能 | 
Spring Bootでは、環境構築にかかる時間を短縮し、すぐに開発を始めることが可能です。
5. ブラックボックス化を防ぐための配慮
Spring Bootは便利な機能が多いため、「フレームワークの裏側がブラックボックスになりやすい」という懸念があります。しかし、研修ではSQL文やJDBCのロジックを明示的に書かせることで、技術の基礎をしっかり理解できるようにすることが重要です。
例えば、Spring Data JPAを導入する前に、以下のようなJDBCを用いたデータベース処理を経験させるのが良いでしょう。
public List<User> getUsers() {
    List<User> users = new ArrayList<>();
    String sql = "SELECT * FROM users";
    
    try (Connection conn = DriverManager.getConnection(DB_URL, USER, PASS);
         Statement stmt = conn.createStatement();
         ResultSet rs = stmt.executeQuery(sql)) {
        
        while (rs.next()) {
            User user = new User();
            user.setId(rs.getInt("id"));
            user.setName(rs.getString("name"));
            users.add(user);
        }
    } catch (SQLException e) {
        e.printStackTrace();
    }
    return users;
}
このようにSQL文やJDBCの基本ロジックを経験させた後、Spring BootのJdbcTemplateやSpring Data JPAに移行させることで、技術がブラックボックスにならないようにすることが大切です。
6. 新人エンジニアが「楽しい」と感じやすい
ServletやJSPでは、「とにかくコードを書くのが面倒」「開発の楽しさがわからない」という声が多くあります。
Spring Bootならば、最初から以下のようなモダンな開発手法を体験できます。
- 簡単に動くWeb アプリを作れる
- フロントエンド技術(Thymeleafなど)と組み合わせやすい
結果として、新人エンジニアのモチベーションを高めながら学習を進められるのです。
まとめ
Spring Bootで研修を行うべき理由
- Servlet/JSPは実務でほぼ使われない
- Spring Bootは現場で広く使われている
- おまじない的な記述が減り、開発者がビジネスロジックに集中しやすい
- Tomcatの扱いが容易で、環境構築の手間が削減できる
- ブラックボックス化を防ぐために、SQLやJDBCの基本を学ばせる
- 新人エンジニアが楽しく学習できる
研修カリキュラムを見直す企業や、新人エンジニアの学習方針を考えている方は、ぜひSpring Bootの採用を検討してみてください。
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投稿者プロフィール
- 代表取締役
- 
セイ・コンサルティング・グループ株式会社代表取締役。
 岐阜県出身。
 2000年創業、2004年会社設立。
 IT企業向け人材育成研修歴業界歴20年以上。
 すべての無駄を省いた費用対効果の高い「筋肉質」な研修を提供します!
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