RBS(Risk Breakdown Structure)とは?
RBS(Risk Breakdown Structure)は、プロジェクトマネジメントにおけるリスク管理手法の一つです。日本語では「リスク分解構造」とも呼ばれ、プロジェクトに潜在するリスクを体系的に分類・整理するためのツールです。この手法を使うことで、プロジェクトが抱えるリスクを詳細に分解し、それぞれのリスクを明確にして管理しやすくします。
RBSの考え方は、WBS(Work Breakdown Structure:作業分解構造)と非常によく似ています。WBSがプロジェクトの作業を小さな要素に分解するように、RBSはリスクを小さな部分に分解して管理します。
では、RBSの具体的な仕組みやメリット、そしてその活用方法を見ていきましょう。
RBSの仕組み
RBSは、ツリー構造を使ってリスクをレベルごとに階層的に分類します。この階層的な構造により、リスクを大きなカテゴリー(トップレベル)から、より詳細なリスク項目(下位レベル)まで整理していきます。
RBSの階層構造の例
- トップレベル(大分類)
- このレベルでは、リスクを大まかなカテゴリに分類します。例えば、外部リスクや内部リスクのように、リスクの出所や影響範囲に基づいて大きく分けます。
- 中間レベル(中分類)
- 次に、中間レベルでは、各トップレベルのリスクをもう少し細かく分類します。たとえば、外部リスクの中に「経済リスク」や「自然災害リスク」、内部リスクの中に「人材リスク」や「技術リスク」といった形で分類します。
- 下位レベル(詳細分類)
- 最後に、リスクをさらに具体的な要素に分解します。たとえば、「技術リスク」の下には「システム障害」や「ソフトウェアバグ」といった具体的なリスクが含まれます。
RBSを使用するメリット
1. リスクの体系的な把握
RBSを使うことで、プロジェクトが抱えるリスクを体系的に洗い出すことができます。リスクを細かく分類していくことで、漏れが少なくなり、プロジェクト全体のリスクを網羅的に把握できます。これは、特に大規模なプロジェクトで非常に重要です。
2. リスク管理の効率化
リスクを細かく分解することで、各リスクに対する対策を立てやすくなります。たとえば、「経済リスク」が具体的に何を指すのか(為替リスク、インフレリスクなど)を明確にすることで、それぞれに適した対策を取ることが可能です。
3. コミュニケーションの円滑化
リスクを分解して共有することで、プロジェクトチーム全員が共通のリスク認識を持ちやすくなります。RBSのツリー構造は視覚的にわかりやすいため、関係者間の理解を深めるのにも役立ちます。
RBSの作成手順
RBSを効果的に活用するためには、次のような手順で作成するのが一般的です。
1. リスクの大分類を決める
まずは、プロジェクトに関連する大きなリスクカテゴリを決定します。たとえば、「外部リスク」「内部リスク」「技術リスク」「スケジュールリスク」など、プロジェクトの性質に応じて適切なカテゴリを選びます。
2. リスクの中分類・小分類を整理する
次に、大分類に基づいてリスクをさらに分解していきます。外部リスクなら「市場変動リスク」「法規制リスク」、内部リスクなら「チームメンバーの離職リスク」「予算オーバーリスク」など、具体的なリスク要素に分けていきます。
3. リスクの優先順位を付ける
RBSを作成した後は、それぞれのリスクがプロジェクトに与える影響度や発生確率を評価します。この評価をもとに、重要度の高いリスクに対して優先的に対応策を検討します。
RBSの例
以下に、簡単なRBSのツリー構造の例を示します。
1. 外部リスク
1.1 経済リスク
1.1.1 為替変動
1.1.2 インフレ
1.2 法規制リスク
1.2.1 新しい規制の導入
1.2.2 規制変更への対応遅れ
2. 内部リスク
2.1 技術リスク
2.1.1 システム障害
2.1.2 ソフトウェアバグ
2.2 人材リスク
2.2.1 キーメンバーの離職
2.2.2 スキル不足
このように、リスクを大まかに分類し、具体的な内容に分解していくことで、管理しやすくなります。
RBSのデメリット
もちろん、RBSにはいくつかのデメリットも存在します。
1. 時間と労力がかかる
RBSを作成するには、リスクを詳細に分解する作業が必要です。この作業は、プロジェクトの規模が大きいほど、時間と労力がかかる場合があります。
2. リスクの過剰管理
あまりにも細かくリスクを分解しすぎると、全てのリスクに対策を立てることが難しくなる場合があります。リスクの重要度を見極め、過剰な管理を避けることが必要です。
まとめと今後の指針
RBSは、プロジェクトにおけるリスクを体系的に整理し、管理するための強力なツールです。これにより、プロジェクトチーム全員が共通のリスク認識を持ち、リスクに対する適切な対応を計画することが可能です。
今後、RBSを活用する場合は、まずはリスクの大分類から始め、プロジェクトの特性に合ったリスク管理を心がけることが大切です。また、定期的にリスク評価を見直し、状況に応じてRBSを更新することも忘れずに実施しましょう。
投稿者プロフィール
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セイ・コンサルティング・グループ株式会社代表取締役。
岐阜県出身。
2000年創業、2004年会社設立。
IT企業向け人材育成研修歴業界歴20年以上。
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