「半」と「自己」で大違い!半教師あり学習と自己教師あり学習をスッキリ解説
こんにちは。ゆうせいです。
AIの学習方法について調べていると、「半教師あり学習」や「自己教師あり学習」といった言葉に出会って、「どっちも似たような名前で、違いがよくわからない…」と混乱してしまった経験はありませんか?
どちらも「ラベル付きデータが大量にない状況」で活躍する賢い学習方法ですが、そのアプローチは全く異なります。
今回は、この二つの学習方法の違いを、新人エンジニアのあなたにもスッキリ理解できるよう、具体例を交えながら解説していきますね!
すべての基本、「教師あり学習」を思い出そう
二つの違いを理解するために、まずは基本となる「教師あり学習」を思い出してみましょう。
これは、AIに「問題(データ)」と「正解(ラベル)」のペアを大量に与えて学習させる方法です。まるで、写真と名前が書かれた単語カード(「この犬の写真は『ポチ』です」)を、先生が付きっきりで一枚一枚教えるようなイメージですね。
この方法は精度が高い一方で、「大量の正解ラベル付きデータを用意するのが、めちゃくちゃ大変!」という大きな課題があります。
この大変なラベル付け作業から、私たちを解放してくれるのが「半教師あり学習」と「自己教師あり学習」なんです。
半教師あり学習:少しのヒントで賢くなる優等生
半教師あり学習は、「少量のラベル付きデータ」と「大量のラベルなしデータ」の両方を使って学習する方法です。
これは、どんな状況かというと…
先生が「この10枚の写真は犬だよ。こっちの10枚は猫だよ」と、ほんの少しだけ正解を教えてくれます。
AIはまず、その正解データから犬と猫の特徴をざっくりと学びます。そして、残りのラベルがついていない10万枚の写真を見て、「これは、さっき習った犬の特徴に似ているから、たぶん犬だろう」「こっちは猫っぽいな」というように、自分で推測しながら分類していくのです。
ポイントは、人間が与えた少数の「正解」を手がかりに、残りの膨大なデータに対する理解を深めていく点です。
少数の模範解答をヒントに、大量の問題集を自力で解き進めていく優等生、といったイメージですね。
どんな時に役立つの?
例えば、医療画像の診断支援AIを開発するケースを考えてみましょう。
専門医が数千枚のレントゲン写真に「病気の兆候あり」「なし」とラベルを付けるのは、非常に時間とコストがかかります。
しかし、半教師あり学習を使えば、専門医がラベルを付けた100枚の画像と、ラベルのない10万枚の画像を組み合わせることで、AIは効率的に学習を進め、高い精度を達成できる可能性があります。
自己教師あり学習:データから勝手に問題を作る独学者
一方、自己教師あり学習は、「ラベルなしデータ」だけを使います。
「え、正解が全くないのにどうやって学ぶの?」と不思議に思いますよね。
この学習法のすごいところは、データ自身から「問題」と「答え」を自動的に作り出してしまう点にあります。
これは、先生が一切ヒントをくれない状況です。
その代わり、AIは自分で勉強法を編み出します。例えば、大量の猫の写真を使って、こんな問題を作って自分に問いかけます。
- 問題1:写真の一部を黒塗りで隠す → 「この隠された部分には、何が写っているべき?」
- 問題2:写真を白黒に変換する → 「元のカラー写真はどういう色だった?」
- 問題3:写真をバラバラにして、ジグソーパズルにする → 「正しい順番に並び替えてみて!」
これらのパズルを解く過程で、AIは正解のラベル(「これは猫です」)を知らなくても、「猫というのは、こういう耳の形をしていて、こういう毛並みで、こういう輪郭をしている生き物だ」という、データの本質的な特徴を自力で深く学んでいきます。
問題も答えも、元のデータ(自分自身)から作り出しているので「自己」教師あり学習と呼ばれるのです。
どんな時に役立つの?
この方法は、特定の課題を解くというよりは、非常に汎用的な賢さ(表現)を獲得するための「事前学習」として使われることが多いです。
最近話題の、ChatGPTのような大規模言語モデル(LLM)が良い例です。
インターネット上にある膨大な文章を使い、「この文章の次の単語は何でしょう?」という問題を延々と解き続けることで、言語の構造や文脈、世界の常識といったものを自己教師あり学習で獲得しています。
この強力な基礎能力があるからこそ、その後の少しの追加学習で、翻訳、要約、質疑応答といった多様なタスクに対応できるのです。
一目でわかる!二つの違いまとめ
ここまでの内容を、表で整理してみましょう。
項目 | 半教師あり学習 | 自己教師あり学習 |
必要なデータ | 少量のラベル付きデータ + 大量のラベルなしデータ | 大量のラベルなしデータのみ |
「教師」の役割 | 人間が与えた少数の正解ラベル | データ自身から生成した擬似的なラベル(パズルの答え) |
学習のゴール | 特定のタスク(分類など)の精度を、効率よく上げること | データそのものの構造や本質的な特徴を深く理解すること(事前学習) |
例えるなら | 少数の模範解答を元に、大量の問題集を解く学生 | 問題集から自分で問題と答えを作って解く独学者 |
一番の違いは、「学習の初期段階で、人間による正解のヒントが少しでもあるか、全くないか」という点ですね!
次のステップへ
半教師あり学習と自己教師あり学習の違い、掴めてきたでしょうか?
どちらも、ラベル付けのコストという大きな壁を乗り越えるための、非常にパワフルな技術です。
もしあなたがこの分野にさらに興味を持ったら、次は以下のようなテーマを調べてみることをお勧めします。
- 自己教師あり学習の具体的な手法:
BERT
(言語処理)やSimCLR
(画像認識)といった、自己教師あり学習を有名にした具体的なモデルの仕組みを調べてみると、より深い理解に繋がります。 - ファインチューニング: 自己教師あり学習で「事前学習」されたモデルを、少量のラベル付きデータで特定のタスクに適応させる「ファインチューニング」という技術について学んでみましょう。現代のAI開発では必須の知識です!
これらの技術を理解することで、あなたがAIを使って解決できる問題の幅は、きっと大きく広がるはずです。頑張ってください!
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投稿者プロフィール
- 代表取締役
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セイ・コンサルティング・グループ株式会社代表取締役。
岐阜県出身。
2000年創業、2004年会社設立。
IT企業向け人材育成研修歴業界歴20年以上。
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