【新人エンジニア向け】国の借金は「技術的負債」と同じ?インフレで日本の財政再建が待ったなしになる理由

こんにちは。ゆうせいです。

前回は企業の話をしましたが、今回はもっとスケールの大きな「日本という国」のお財布事情についてお話ししましょう。

ニュースで「日本の借金は1000兆円を超えている」なんて話を聞いたことはありませんか。エンジニア的に言えば、とてつもなく巨大な技術的負債を抱えたまま稼働しているレガシーシステムのようなものです。

普通なら不安になりますよね。でも、これまでは「まあ、なんとかなるでしょ」と問題が先送りされてきました。

しかし、インフレという名の変化が訪れたことで、いよいよその先送りが許されない局面に来ています。なぜ物価が上がると、国の借金問題を放置できなくなるのでしょうか。

今回は、この恐ろしいけれど知っておくべきロジックを、サーバー代やリファクタリングに例えながら解説していきますね。


なぜ今まで借金があっても平気だったのか

まず、日本が抱える莫大な借金(国債)について整理しましょう。

日本政府は、税収だけでは足りない分を、国債を発行して(つまり借金をして)補ってきました。その額はGDPの2倍以上とも言われ、世界最悪レベルです。

それでも日本が破綻しなかった最大の理由は、超低金利政策にあります。

エンジニアの皆さんに馴染みのあるAWSやAzureなどのクラウドサーバーで例えてみましょう。

想像してみてください。あなたが運用しているシステムは、設計が古く、無駄な処理が多くてメモリを大量に消費します(=借金が多い)。しかし、クラウド会社がキャンペーン中で、「サーバー利用料はほぼ無料(金利ゼロ)でいいですよ」と言ってくれていたらどうでしょうか。

リファクタリングしてコードを綺麗にする(=財政再建する)必要性を感じませんよね。「無料なんだから、とりあえずサーバーを増やして乗り切ろう」と考えるはずです。

これが、ここ数十年日本がやってきたことです。金利がほぼゼロだったため、いくら借金があっても、その利息払い(国債費)は大した負担にならず、問題を先送りできたのです。

インフレが強制する「金利」の復活

ところが、インフレが始まると、この「サーバー代無料キャンペーン」は強制終了となります。

モノの値段が上がり続けるインフレを抑えるために、中央銀行(日本銀行)は金利を上げざるを得なくなるからです。金利を上げないと通貨(円)の価値が下がり続け、ハイパーインフレになって生活が壊れてしまうからです。

では、金利が上がると、国の財政(お財布)には何が起きるのでしょうか。ここで簡単な数式を見てみましょう。

国が払う利息 = 過去の借金総額 \times 金利

この式の「借金総額」はすでに1000兆円規模という天文学的な数字になっています。

これまでは「金利」がほぼ0%だったので、掛け算の答え(払う利息)も小さくて済みました。しかし、この金利が仮に1%、2%と上がったらどうなるでしょうか。

利払い費の爆発

例えば、金利が1%上がるだけで、将来的には国が払う利息は何兆円、何十兆円という単位で増えていきます。

これは、国の予算(税収)の大部分が「過去の借金の利息を払うためだけ」に消えていくことを意味します。

教育や福祉、防衛、科学技術に使いたいお金が、すべて利息払いに吸い取られてしまうのです。これを防ぐためには、新たな借金をするしかありませんが、その新たな借金にも高い金利がつきます。まさに雪だるま式です。

エンジニアの仕事で言えば、サーバー代(利息)が急激に値上がりし、売上(税収)がすべてサーバー代に消え、新機能の開発(政策)が一切できなくなる状態です。

こうなると、もはや「とりあえずサーバー増強で」という先送りは不可能です。抜本的にコードを書き直して効率化する(歳出を減らす)か、利用料金を値上げする(増税する)しか道はなくなります。

これが、インフレによって財政再建の先送りができなくなるロジックです。

メリットとデメリット

この状況は非常に厳しいものですが、やはり両面があります。

デメリット(国民の負担増)

財政再建を急ぐことになれば、政府は「入ってくるお金を増やし、出るお金を減らす」行動に出ます。つまり、消費税や所得税などの増税が行われたり、社会保障サービスがカットされたりする可能性があります。私たちの手取りが減り、行政サービスが低下するという痛みは避けられません。

メリット(規律の回復)

一方で、いつまでも借金に頼る放漫な財政運営に終止符が打たれます。「お金はタダではない」という当たり前の感覚が戻り、本当に必要な政策にだけ予算が使われるよう厳選されるきっかけになります。将来の世代に、これ以上無責任なツケを回さずに済むようになるのは、長期的に見れば健全化への第一歩です。

今後の学習の指針

日本は今、歴史的な転換点にいます。

エンジニアとして、この状況をどう捉えればいいでしょうか。指針を提案します。

  1. 「税金」と「社会保険料」の仕組みを知る給与明細を見て、何がどれくらい引かれているか把握してください。財政再建が進むと、ここの数字がシビアに変わってきます。手取りを最大化するための知識(節税や控除)は必須スキルになります。
  2. グローバルな視点を持つ日本円の価値が揺らぐ可能性がある以上、ドル建ての資産を持ったり、海外でも働ける技術力を身につけたりすることは、自分自身への強力なヘッジ(保険)になります。
  3. 生産性を意識する国全体が「効率化」を迫られます。エンジニアとしても、コスト意識を持ち、少ないリソースで大きな価値を生み出せる人材がより一層重宝されるようになります。

国のシステム障害(財政危機)に巻き込まれないよう、私たち個人もしっかりと自分のメンタルモデルとスキルセットをアップデートしていきましょう!

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投稿者プロフィール

山崎講師
山崎講師代表取締役
セイ・コンサルティング・グループ株式会社代表取締役。
岐阜県出身。
2000年創業、2004年会社設立。
IT企業向け人材育成研修歴業界歴20年以上。
すべての無駄を省いた費用対効果の高い「筋肉質」な研修を提供します!
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