【新人エンジニア必見】AI全盛期にこそ「勉強」が必要な理由。脳内シミュレーター「メンタルモデル」を鍛えよ

こんにちは。ゆうせいです。

エンジニアとしてのキャリアをスタートさせたばかりの皆さん、毎日の業務に追われていませんか。

そして、ふとこんなことを思う瞬間があるかもしれません。「今の時代、ChatGPTやGitHub Copilotがあれば、わざわざ苦労して勉強しなくてもコードは書けるんじゃないか?」と。

確かに、AIの進化は凄まじいですよね。検索するよりも早く答えを教えてくれるし、時には自分よりも綺麗なコードを提案してくれます。知識を丸暗記する時代は終わった、そう言われることも増えました。

でも、あえて言わせてください。

AIがどれだけ進化しても、あなたが勉強し、インプットを続けることの重要性は1ミリも減りません。

むしろ、情報の洪水の中で正しい意思決定をするために、その価値は以前よりも高まっているのです。なぜなら、私たちの脳は世界をシミュレーションする装置であり、その精度はインプットの量と質に依存しているからです。

今日は、私たちが物事を判断する際の根幹となるメンタルモデルという概念を使って、なぜ今こそ泥臭い勉強が必要なのかをお話ししましょう。


脳内に作られた「世界地図」の話

まず、専門用語であるメンタルモデルについて解説しますね。

この言葉、聞いたことはありますか。直訳すると「心の模型」ですが、これだけでは少し分かりにくいですよね。

高校生でもわかるように例えるなら、メンタルモデルとはあなたの頭の中にある「世界専用のナビゲーションシステム」のようなものです。

私たちは普段、現実の世界をそのまま完全に見ているわけではありません。目や耳から入ってきた膨大な情報を、脳が瞬時に処理し、「世の中とはこういうものだ」「AをすればBになるはずだ」という簡易的なシミュレーションを行っています。

たとえば、あなたが「Webサイトのボタン」を見たとします。特に意識しなくても、「これを押せば画面が切り替わるか、何かが送信されるはずだ」と予測しますよね。これがメンタルモデルです。「ボタン=押すと何かが起きるもの」という理解(モデル)が頭の中にあるから、迷わず行動できるのです。

エンジニアの仕事に置き換えてみましょう。

ベテランのエンジニアが、エラーログをパッと見ただけで「あ、これはデータベースの接続周りが怪しいな」と瞬時に判断できるのを見たことはありませんか。

あれは、魔法を使っているわけではありません。彼らの頭の中に、「サーバー」「ネットワーク」「データベース」「プログラム」といった要素がどのように連携して動いているかという、精度の高いメンタルモデル(設計図や回路図のようなイメージ)が出来上がっているからです。

だから、脳内で瞬時にシミュレーションを行い、「ここでエラーが出たなら、原因はあそこにあるはずだ」と未来を予測できるのです。

AIは優秀な助手、決めるのは「あなた」

ここで最初の疑問に戻りましょう。「AIがあるなら、脳内に地図なんて作らなくていいのでは?」という問いです。

AIは確かに優秀です。しかし、AIはあくまで「あなたの指示」に従って答えを出すツールに過ぎません。

もし、あなたの頭の中にあるメンタルモデルがスカスカだったらどうなるでしょうか。

例えるなら、車の運転席に座っているのに、アクセルとブレーキの違いも、交通ルールも、目的地へのルートも分かっていない状態です。隣に超高性能なナビ(AI)があっても、「どこに行きたいの?」と聞かれたときに、「えーっと、いい感じの場所に連れて行って」としか言えなければ、望む結果は得られませんよね。

勉強(インプット)不足のデメリット

知識のインプットをサボり、自分の中に判断基準を持たないままAIに頼り切ると、次のような事態に陥ります。

  • 嘘を見抜けないAIがもっともらしい顔をして間違ったコード(ハルシネーション)を提案してきたとき、それに気づけず実装してしまい、後で重大なバグを引き起こします。
  • 応用が利かない「動けばいい」というレベルで満足してしまい、トラブルが起きたときや、要件が少し変わったときに、何をしていいか全く分からなくなります。
  • 問いを立てられないそもそも「何が分からないのかが分からない」状態になり、AIに適切な質問(プロンプト)を投げかけることすらできません。

メンタルモデルを鍛えるメリット

一方で、本を読んだり、手を動かして基礎を勉強したりして、強固なメンタルモデルを築くと、世界はこう変わります。

  • シミュレーション精度が上がるコードを書く前に「この設計だと、ユーザーが増えたときに遅くなるかもしれない」といった未来の予測ができるようになります。これが「良い意思決定」です。
  • AIを使いこなせる「ここは定型処理だからAIに任せよう」「ここは複雑なロジックだから、自分がしっかり設計してAIにチェックさせよう」といった役割分担が可能になります。
  • 学習速度が加速する新しい技術が出てきても、基礎となるモデルが出来上がっていれば、「ああ、あれの派生版ね」と既存の知識と結びつけて瞬時に理解できます。

良い意思決定は、豊富な「素材」から生まれる

私たちの脳は、常にシミュレーションを行っています。「今、このコードを修正したらどうなるか?」「このライブラリを採用したら、3年後はどうなっているか?」

このシミュレーションの質を決めるのは、あなたの脳内にストックされた「知識」や「経験」という素材です。

素材が少なければ、シミュレーションは粗くなり、判断を誤ります。逆に、勉強によって良質な素材がたくさんあれば、より現実に近く、高解像度なシミュレーションが可能になります。

だからこそ、検索すれば分かることでも、あえて自分の頭に入れる(インプットする)行為には大きな意味があるのです。知識が頭の中に即座に取り出せる状態で存在して初めて、それらは結びつき、新しいアイデアや深い洞察を生み出します。

外部にある知識と、内部(脳内)にある知識は、価値が全く違うのです。

今後の学習の指針

では、これからエンジニアとして成長していくために、具体的にどうすればいいのでしょうか。最後にいくつか指針を示しますね。

  1. 「なぜ?」を大切にするコードが動いたときに「やった!」で終わらせず、「なぜ動いたのか?」を考えてください。エラーが出たときも「なぜエラーになったのか?」を深掘りしてください。その過程でメンタルモデルは修正され、磨かれます。
  2. 体系的な知識に触れる断片的なWeb記事だけでなく、一冊の技術書を通読してみてください。体系立てられた知識は、脳内に整理された地図を作るのに最適です。
  3. 見えない部分を想像する画面の裏側でデータがどう流れているのか、サーバーと通信する間に何が起きているのか。目に見えない仕組みを脳内でイメージする癖をつけてください。

AIはこれからも進化し続けるでしょう。しかし、そのAIを指揮し、最終的な責任を持って決断するのは、生身の人間であるあなたです。

あなたの脳というシミュレーターの性能を上げるために、今日も少しずつ、知識のインプットを楽しんでいきましょう!

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投稿者プロフィール

山崎講師
山崎講師代表取締役
セイ・コンサルティング・グループ株式会社代表取締役。
岐阜県出身。
2000年創業、2004年会社設立。
IT企業向け人材育成研修歴業界歴20年以上。
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