【新人社員必見】インフレで「先送り」は終了。なぜ日本企業の再生待ったなしなのか
こんにちは。ゆうせいです。
最近、コンビニのお弁当やスーパーの野菜、値段が上がったなあと感じませんか。
ニュースでもインフレや円安という言葉を聞かない日はありませんよね。エンジニアとして技術の勉強も大切ですが、私たちが働いているこの日本経済の仕組みを知っておくことも、自分の身を守るためには超重要です。
実は今、日本が進んでいるインフレという状況は、これまで日本社会が何十年も続けてきたある種の宿題の先送りを、強制的に終了させる力を持っているのです。
なぜ物価が上がると、企業の再生や再建を先延ばしにできなくなるのでしょうか。
今日は、経済ニュースがちょっと苦手な新人エンジニアの皆さんに向けて、このロジックを分かりやすく、かつディープに解説していきます。
ぬるま湯だったこれまでの日本
まず、インフレになる前の日本がどういう状態だったかをおさらいしましょう。
長年、日本はデフレ(物価が上がらない、むしろ下がる)であり、それを何とかしようと日本銀行は金融緩和という政策をとってきました。
専門用語が出てきましたね。金融緩和について解説しましょう。
これは、世の中に出回るお金の量を増やして、景気を良くしようとする政策のことです。具体的には、銀行がお金を貸すときの金利を極限まで低く(ゼロ、あるいはマイナスに)設定しました。
高校生でも分かるように例えるなら、銀行が「利息なんていらないから、とにかくお金を借りて!そして使って!」というバーゲンセールを何年も続けていた状態です。
ゾンビ企業の生存
この金利がほぼゼロという状況は、ある副作用を生みました。それがゾンビ企業の延命です。
本来であれば、利益が出せずに経営が破綻しているはずの企業でも、銀行からの借金の利息がタダ同然であれば、借金を返すためにまた借金をする(借り換え)ことで、生きながらえることができてしまいます。
まるで、死んでいるのに動き続けているゾンビのように、赤字でも潰れない会社がたくさん残ってしまったのです。これが、問題の先送りの正体です。
エンジニア風に言えば、非効率なレガシーコードだらけで本来なら動かないはずのシステムが、サーバー代が無料だからという理由だけで、リファクタリング(修正)されずに稼働し続けているようなものです。
インフレという目覚まし時計
ところが、ここに来て状況が一変しました。インフレの到来です。
物が値上がりするということは、お金の価値が下がることを意味します。このとき、中央銀行(日本銀行)は、行き過ぎた物価上昇を抑えるために、ある行動をとらざるを得なくなります。
それが、金利の引き上げ(利上げ)です。
世界中の教科書的な経済のルールでは、「インフレになったら金利を上げて、お金を借りにくくし、景気を少し冷やす」ことになっています。実際、アメリカやヨーロッパはすでにこのフェーズに入っていますし、日本も少しずつその方向へ動き出しています。
ここからが本題です。金利が上がると、先送りにしていたツケがどう回ってくるのでしょうか。
なぜ再生の先送りができなくなるのか
金利の上昇は、借金をしているすべての企業にとって、固定費の激増を意味します。
簡単な数式でイメージしてみましょう。
利益 < 借金の利息
これまでは利息がほぼ0だったので、利益が少なくてもこの式は成り立たず、生き延びられました。しかし、金利が1%、2%と上がっていくとどうなるでしょうか。
莫大な借金を抱えているゾンビ企業は、稼いだ利益のすべてを利息の支払いに充てても足りなくなります。
新たな借金ができない
さらに怖いのは、銀行の態度が変わることです。「金利が上がる」ということは、「お金の貸し借りのリスクが上がる」ということでもあります。
銀行は、「今までのようにタダ同然では貸せません。あなたの会社の経営状態だと、これくらいの高い金利でないと貸せません」と言い出します。あるいは、「もう貸せません」と断るかもしれません。
こうなると、企業には2つの道しか残されません。
- 抜本的な再建(再生)をする不採算事業を切り捨て、リストラを行い、本当に稼げるビジネスモデルに作り変えて利益率を上げる。
- 退場(倒産)する金利を支払えず、資金繰りがショートして会社をたたむ。
つまり、インフレによって金利ある世界に戻ることで、なんとなく生き延びるという選択肢が消滅し、やるかやられるかの現実を突きつけられるのです。これが先送りができなくなるというロジックです。
メリットとデメリット
この変化は、痛みを伴いますが、悪いことばかりではありません。
デメリット(痛み)
まず、倒産件数は間違いなく増えます。今まで隠れていた経営不振が表面化するため、失業する人も出てくるでしょう。一時的に経済が混乱し、ニュースでは暗い話題が増えるかもしれません。特に、変化に対応できない古い体質の企業に勤めている人にとっては、厳しい冬の時代になります。
メリット(新陳代謝)
一方で、経済全体で見れば新陳代謝が進みます。
利益を生まない企業に塩漬けにされていた人(エンジニア含む)やお金、土地といったリソースが解放され、成長している元気な企業へと移動します。
エンジニアの皆さんにとっては、高い給料を払える生産性の高い企業に転職するチャンスが増えることを意味します。結果として、日本全体の稼ぐ力が底上げされるのです。
今後の学習の指針
いかがでしたか。
インフレは単なる値上げの話ではなく、企業の生存競争のルールを根本から変えるゲームチェンジャーなのです。
最後に、これからの時代を生き抜くエンジニアとしての指針をお伝えします。
- 所属企業の財務に関心を持つ自分の会社は、金利が上がっても耐えられる財務体質でしょうか。決算発表などで有利子負債(借金の額)や営業利益率をチェックしてみてください。
- 利益を生むエンジニアになるただコードを書くだけでなく、その開発がどうやって会社の利益に結びつくのかを意識してください。利益を作れるエンジニアは、どんな不況でも生き残ります。
- 経済ニュースを定点観測する日銀の金利政策や長期金利といったワードに注目してください。それが、あなたのキャリア戦略を修正するシグナルになります。
厳しい時代かもしれませんが、実力のあるエンジニアにとっては、自分を高く売る絶好の機会でもあります。
世の中の動きを敏感に察知して、賢くキャリアを築いていきましょう!
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投稿者プロフィール
- 代表取締役
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セイ・コンサルティング・グループ株式会社代表取締役。
岐阜県出身。
2000年創業、2004年会社設立。
IT企業向け人材育成研修歴業界歴20年以上。
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