キャリアの停滞感を打破せよ!「限界効用逓減の法則」で描く賢い成長戦略

こんにちは。ゆうせいです。

みなさんは、大好きな食べ物を想像してみてください。たとえば、焼肉でもケーキでも構いません。

お腹がペコペコの状態で食べる最初の一口、最高においしいですよね?感動すら覚えるかもしれません。では、そのまま食べ続けて、お腹がいっぱいになった頃に食べる最後の一口はどうでしょうか。

「もう食べられないよ……」と、最初ほどの感動はなくなっているはずです。

実はこれ、経済学の用語で説明できる現象なのです。そして驚くべきことに、この考え方は、みなさんの「キャリア戦略」にもそのまま応用できてしまいます。

今日は、経済学の知恵を使って、効率よく自分の市場価値を高める方法についてお話ししましょう!


「限界効用逓減の法則」ってなに?

まずは、少し難しそうな名前の法則について解説しますね。その名も「限界効用逓減(げんかいこうようていげん)の法則」です。

漢字ばかりで難しそうに見えますか?安心してください。分解すればとても単純な話です。

まず、専門用語の意味を高校生でもわかるように噛み砕いてみましょう。

  • 限界(Marginal):ここでは「限界ギリギリ」という意味ではなく、「あと1つ増やしたときの」という意味です。「追加の1単位」と覚えてください。
  • 効用(Utility):これは「満足度」や「嬉しさ」のことです。
  • 逓減(Diminishing):だんだん減っていく、という意味です。

つまり、これらを繋げるとこうなります。

「あるモノやサービスを1つ追加したときに得られる満足度は、量が増えるにつれてだんだん減っていく」

先ほどの焼肉の例を思い出してください。

1枚目のカルビは最高の満足度を与えてくれます。でも、10枚目、20枚目となるにつれて、「おいしい」という気持ちの増え幅は小さくなっていきますよね。これがまさに、限界効用逓減の法則です。

少し数式っぽく表現してみましょうか。

満足度の変化 = 追加した満足度

これが、回数を重ねるごとに小さくなっていくのです。

たとえば、ビールを飲むときの満足度を数字で表してみましょう。

1杯目の満足度:100ポイント

2杯目の満足度:80ポイント

3杯目の満足度:50ポイント

このとき、2杯目を飲んだ時点での「総効用(トータルの満足度)」はこうなります。

総効用 = 100 + 80 = 180

しかし、追加された満足度(限界効用)だけに注目すると、100から80へと減っていますね。これが「逓減」している状態です。


キャリアにおける「100点の罠」

さて、ここからが本題です。「焼肉がおいしい話」が、どうして仕事の話になるのでしょうか。

実は、ビジネススキルや勉強にも、この法則が当てはまるのです。

新しいスキルを学び始めたときのことを想像してみてください。たとえば、全く英語が話せなかった人が、中学英語を復習して日常会話ができるようになったとします。

このときの成長実感や、周囲からの評価、つまり「効用」は爆発的に上がりますよね。ゼロがイチになる瞬間です。

しかし、そこからさらに勉強を続け、ネイティブレベルの発音を目指そうとするとどうでしょうか。

TOEICで言えば、600点から800点に上げる努力と、980点から990点満点にする努力。後者のほうが圧倒的に大変なのに、ビジネスの現場で得られる評価(効用)の上がり幅は、最初の頃より少なくなってしまうことが多いのです。

これを式でイメージすると、こんな感じです。

努力量 \times 1 (一定)

に対して

得られる成果 = 徐々に減少

同じ1時間の勉強でも、初心者の頃と上級者の頃では、得られる「伸びしろ」が変わってくるのですね。


ひとつの分野を極めることのメリット・デメリット

ここで一度立ち止まって考えてみましょう。

ひとつのことを突き詰めるのは素晴らしいことです。職人芸や専門家は尊敬されます。しかし、キャリア戦略として見たときには、メリットとデメリットが存在します。

メリット:替えのきかない存在になれる

限界効用が下がってもなお努力を続け、誰も到達できない領域まで達すれば、あなたは唯一無二の存在になれます。オリンピック選手やノーベル賞受賞者がこれにあたります。ここまで行けば、逓減した効用を逆転させるほどの価値が生まれるでしょう。

デメリット:コストパフォーマンスが悪くなる

多くのビジネスパーソンにとって、90点を95点にするための膨大な時間は、他のことに使ったほうが有益かもしれません。ひとつのスキルに固執しすぎると、費やした時間に対して得られるリターンが見合わなくなる恐れがあります。


「掛け算」で勝負する戦略へ

では、私たちはどうすればいいのでしょうか。

ここで提案したいのが、「限界効用が下がり始めたら、別の分野へ移動する」という戦略です。

1つのスキルを80点まで高めたら、そこで一旦ストップします。そして、全く別の新しいスキルの習得を始めるのです。

なぜなら、新しい分野の「1歩目」は、限界効用が最も高い状態、つまり「一番おいしい部分」だからです。

たとえば、「プログラミングができる」だけの人よりも、「プログラミングができて、かつマーケティングもわかる」人のほうが、希少価値が高まります。

価値 = スキルA \times スキルB

1つのスキルを100点にする労力で、2つのスキルを80点にするほうが簡単な場合が多いのです。そして、80点のスキルを3つ持っていれば、あなたは「100万人に1人の人材」になれるかもしれません。


今後の学習の指針

いかがでしたか?

今日お伝えしたかったのは、「努力をやめろ」ということではありません。「努力の注ぎ口を変えてみよう」という提案です。

もし今、あなたが仕事や勉強で「あんなに頑張っているのに、昔ほど成長を感じないな」と悩んでいるなら、それはあなたが怠けているからではありません。あなたがその分野ですでに高いレベルに到達し、限界効用逓減の法則が働いている証拠なのです。

そんなときは、思い切って新しい分野の教科書を開いてみてください。

  1. 自分の得意分野を見極める:すでに80点取れているものは何ですか?
  2. 隣接する分野を探す:今のスキルと掛け合わせると面白そうなものは何ですか?
  3. 新しい一歩を踏み出す:もっとも成長効率の良い「最初の一歩」を楽しみましょう!

さあ、次はどの分野の「最初の一口」を味わいにいきますか?

あなたのキャリアが、色とりどりのスキルで彩られることを応援しています。

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投稿者プロフィール

山崎講師
山崎講師代表取締役
セイ・コンサルティング・グループ株式会社代表取締役。
岐阜県出身。
2000年創業、2004年会社設立。
IT企業向け人材育成研修歴業界歴20年以上。
すべての無駄を省いた費用対効果の高い「筋肉質」な研修を提供します!
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