未経験でも迷わない!「成果が出る」新入社員研修の企画・講師スキル・評価まで徹底解説

こんにちは。ゆうせいです。

突然ですが、あなたは上司から「来年の新入社員研修、任せたよ」と言われて途方に暮れていませんか?

あるいは、「人に教えるなんて自分にできるのだろうか」と不安に思っているかもしれませんね。

大丈夫です。安心してください!

研修作りは、センスや才能だけで決まるものではありません。

家を建てるときに設計図が必要なように、研修にも「正しい型」と「手順」が存在します。

この手順さえ守れば、誰でも効果的な研修を作ることができるのです。

今回は全4回にわたって、新入社員研修の作り方をゼロから一緒に学んでいきましょう。

記念すべき第1回目は、研修の土台となる「企画の基礎」についてお話しします。

いきなりスライドを作り始めてはいけません

研修担当になった途端、気合を入れてPowerPointを開き、かっこいいスライドを作り始めようとしていませんか?

ちょっと待ってください!その手、一度止めましょう。

なぜなら、誰に何を伝えるかが決まっていない状態で資料を作るのは、材料もレシピも決まっていないのに鍋を火にかけるようなものだからです。

まずは「ニーズ分析」という作業から始めます。

ニーズ分析とは、その名の通り「現場が何を求めているか」「新入社員に何が足りないか」を調査することです。

例えば、現場の先輩社員に「去年の新人はどこで苦戦していた?」と聞いてみたり、経営層に「これからの若手にはどんな能力を持っていてほしい?」とインタビューしたりします。

ニーズ分析のメリットとデメリット

メリットは、的はずれな研修を防げることです。

現場が「Excelの使い方がわからなくて困っている」と言っているのに、「最新AIの歴史」を熱心に教えても意味がありませんよね。

ニーズを掴むことで、本当に役立つ研修になります。

デメリットは、手間と時間がかかることです。

いろんな人に話を聞くのは骨が折れますし、時には耳の痛い意見を聞くことになるかもしれません。

しかし、ここをサボると後で全部やり直しになるリスクがあります。

急がば回れ、の精神で取り組みましょう。

プロが使う魔法のフレームワーク「ADDIEモデル」

ここで、研修開発のプロたちがこぞって使っている、ある「型」をご紹介します。

その名を「ADDIEモデル(アディーモデル)」と言います。

なんだか難しそうな横文字が出てきたと身構えないでくださいね。

これは、研修を作るための5つのステップの頭文字を取ったものです。

料理の手順に例えて解説しましょう。

  1. Analysis(分析):誰が食べるのか、どんなアレルギーがあるか調べる段階です。先ほどのニーズ分析がこれにあたります。
  2. Design(設計):メニューを決める段階です。「じゃあ、カレーを作ろう」と全体の構成やゴールを決めます。
  3. Development(開発):実際に調理する段階です。スライド資料を作ったり、配布するテキストを作成したりします。
  4. Implementation(実施):料理をお客さんに出す、つまり研修本番を行う段階です。
  5. Evaluation(評価):「美味しかったか?」「お腹いっぱいになったか?」を確認する段階です。アンケートやテストで効果を測ります。

このADDIEモデルに沿って進めれば、大きな失敗をすることはありません。

ADDIEモデルのメリットとデメリット

メリットは、手順が明確なので迷子になりにくいことです。

次に何をすべきかが常にわかります。

デメリットは、少し堅苦しく感じることかもしれません。

変化の激しい現場では、分析している間に状況が変わってしまうこともあります。

ですが、初心者のうちはこの基本の型に忠実に進めるのが一番の近道です。

研修のゴールを決める「引き算」の考え方

分析が終わり、ADDIEモデルの概要もわかりました。

次は具体的な「研修の目的(ゴール)」を決めましょう。

ここで一つ、大切な数式をご紹介します。

研修が必要な場所には、必ず「ギャップ」が存在しています。

そのギャップを埋めるのが研修の役割です。

あるべき理想の姿 - 現状 = 研修で解決すべき課題

この式を覚えておいてください。

例えば、「電話応対」で考えてみましょう。

あるべき理想の姿:

電話が鳴ったら3コール以内に取り、明るく会社名を名乗って取り次ぎができる。

現状:

電話が鳴っても怖がって取らない。取っても声が小さくて聞き取れない。

この2つの差、つまり「3コール以内に取ること」や「明るい発声」が、今回の研修で教えるべきテーマになります。

このように引き算をすることで、教えるべき内容が明確になります。

企画書という名の「ラブレター」を書こう

さて、材料は揃いました。

いよいよ企画書に落とし込んでいきましょう。

企画書は、上司や関係者に「この研修をやらせてください!」と伝えるためのラブレターです。

最低限、以下の項目を埋めてみてください。

  1. 研修名:キャッチーで内容がわかるものをつけましょう。
  2. 対象者:誰が受けるのか(例:今年度の新入社員20名)。
  3. 目的:先ほどの「引き算」で見つけた課題をどう解決するか。
  4. 内容(カリキュラム):具体的な時間割です。
  5. 準備物:プロジェクター、PC、配布資料など。

これらが一枚の紙にまとまっていれば、誰が見ても「何をしようとしているのか」が一目瞭然です。

今後の学習の指針

今日は、新入社員研修を作るための「準備段階」についてたっぷりと解説しました。

地味な作業に思えたかもしれませんが、しっかりとした土台があれば、その上に建つ家(研修)はぐらつきません。

まずは、身近な業務で「ADDIEモデル」の「A(分析)」を試してみてください。

「なぜこの仕事が必要なんだろう?」と考えてみるだけでも、立派な分析の第一歩です。

さて、素晴らしい企画書ができても、それを伝える「講師」が魅力的でなければ、受講生は寝てしまいますよね。

次回は、受講生をぐっと引き込む「効果的な講師スキル」について、話し方やジェスチャーを交えて詳しく解説します。

【脱・睡眠学習】新入社員を釘付けにする!プロ講師の「伝え方」と「場回し」テクニック

前回は、研修を作るための設計図である「企画」について熱く語りました。

素晴らしい設計図ができたら、次はいよいよその設計図をもとに家を建てる、つまり「研修を実施する」フェーズに入ります。

ここであなたに質問です。

あなたはこれまでに、話がつまらなくて眠たくなってしまう授業や研修を受けたことがありますか?

おそらく、ほとんどの方が「イエス」と答えるでしょう。

どんなに素晴らしい内容でも、伝え方が悪ければ相手の心には届きません。

逆に、伝え方が上手ければ、難しい内容でも楽しく学んでもらえます。

今回は、新入社員を眠らせない、魅力的な講師になるためのスキルを伝授します!

「伝わる資料」と「伝わらない資料」の決定的違い

まずは、研修で使うスライド資料についてです。

多くの初心者がやりがちな失敗があります。

それは、「自分が話したいことを全部文字にしてスライドに書いてしまうこと」です。

文字がびっしり詰まったスライドを見せられた受講生はこう思います。

「読むのが面倒くさいな……」

そして、画面の文字を読むことに必死になり、あなたの話なんて全く耳に入らなくなります。

ここで、資料作成における重要な専門用語を紹介しましょう。

それは「KISSの法則(キス・の・ほうそく)」です。

なんだかロマンチックな名前ですが、これは Keep It Simple, Stupid. (シンプルにしておけ、この間抜け)という、少々過激な英語の頭文字を取ったものです。

要するに、「余計な情報を削ぎ落として、これ以上ないくらい単純にしろ」という教えです。

KISSの法則のメリットとデメリット

メリットは、受講生の脳への負担が激減することです。

「1スライドに1メッセージ」を徹底すれば、パッと見ただけで内容が理解できます。

受講生はスライドを読む必要がなくなるので、あなたの話に集中してくれるようになります。

デメリットは、作る側の難易度が上がることです。

情報を詰め込むのは簡単ですが、情報を削って本質だけを残すには、深い理解と要約力が必要になります。

「短く書く」ほうが、実は何倍も難しいのです。

しかし、挑戦する価値は大いにあります!

あなたの熱意は届いていますか?

良い資料ができたら、次は話し方です。

ずっと下を向いて、小さな声で原稿を読み上げている講師の姿を想像してみてください。

……聞く気が失せますよね?

ここで、コミュニケーションにおける非常に有名な法則を、数式を使って説明しましょう。

「メラビアンの法則」と呼ばれるものです。

人が他人から受け取る情報の割合を表しています。

伝わる情報 = 言語情報 + 聴覚情報 + 視覚情報

この数式の各要素に、実際の割合(パーセンテージ)を代入してみましょう。

100 = 7 + 38 + 55

驚きませんか?

「話している内容(言語情報)」は、たったの 7 パーセントしか影響を与えていないのです。

残りの 93 パーセントは、「声の大きさやトーン(聴覚情報)」と「身振り手振りや表情(視覚情報)」で決まってしまうのです。

これを専門用語で「ノンバーバル・コミュニケーション(非言語コミュニケーション)」と言います。

言葉以外の部分で伝える力の重要性を理解していただけましたか?

だからこそ、講師は以下のことを意識する必要があります。

  • ジェスチャーを大きく使う:「ここが重要です!」と言うときは、手を大きく広げたり、指でポイントを示したりして、身体全体でメッセージを伝えましょう。
  • 声に抑揚をつける:重要なところはゆっくり大きな声で、補足説明は少し早口で。まるで歌を歌うようにリズムを作ってください。

ノンバーバル・コミュニケーションのメリットとデメリット

メリットは、受講生の感情を動かせることです。

熱意は言葉ではなく、あなたの目や声を通じて伝染します。

感情が動けば記憶にも残りやすくなります。

デメリットは、やりすぎると「うさんくさい」と思われるリスクがあることです。

大げさすぎる身振りや、わざとらしい話し方は逆効果になりかねません。

自分のキャラクターに合った、自然な範囲での表現を探してみてください。

場を回す力「ファシリテーション」

最近の研修は、講師が一方的に話すだけでなく、受講生同士で話し合う「グループワーク」を取り入れることが増えています。

そこで必要になるのが「ファシリテーション」というスキルです。

ファシリテーションとは、会議や活動がスムーズに進むように支援し、舵取りをすることです。

オーケストラの指揮者をイメージしてください。

指揮者自身は楽器を演奏しませんが、指揮者がいないと演奏はバラバラになってしまいますよね。

講師も同じです。自分ばかりが話すのではなく、受講生の発言を引き出し、議論を整理する役割が求められます。

例えば、グループワークで意見が出ずにシーンとしていたら、「〇〇さんはどう思いますか?」と助け舟を出します。

逆に、話が脱線していたら、「今の話は面白いですが、一度テーマに戻りましょう」と軌道修正します。

ファシリテーションで重要なのは、答えを教えることではなく、受講生自身に気づきを促すことです。

「教える人(ティーチャー)」から「支援する人(ファシリテーター)」へと意識を変えてみましょう。

今後の学習の指針と【宿題】

今回は、参加者を引き込むための「資料作成」「話し方」「ファシリテーション」について解説しました。

これらは本を読んだだけでは身につきません。

実際にやってみて、恥をかきながら上達していくものです。

そこで、あなたに宿題を出します。

「次週までに、誰かに何かを教えてみてください」

相手は家族でも友人でも後輩でも構いません。

教える内容は「スマホの便利な使い方」でも「美味しいカレーの作り方」でもOKです。

その際、今回学んだ「KISSの法則(シンプルに伝える)」と「ノンバーバル・コミュニケーション(身振り手振り)」を意識してやってみてください。

相手の反応がいつもと違うことに気づくはずです!

次回は、いよいよ研修当日を迎えます。

当日の運営をスムーズに行うためのチェックリストや、終わった後の評価方法について詳しく解説します。

準備万端で当日を迎えられるよう、しっかり学んでいきましょう。

【やりっぱなし厳禁】研修の成功は「終わった後」で決まる!実施と評価の完全マニュアル

前回の宿題、「誰かに何かを教える」という体験はできましたか?

実際にやってみると、「思っていたより伝わらない!」とか「意外とここがウケた!」といった発見があったのではないでしょうか。

その「生きた経験」こそが、あなたをプロの講師へと成長させます。

さて、全4回のこの連載もいよいよ折り返し地点です。

第3回のテーマは、研修の「実施」と「評価」です。

素晴らしい企画を作り、練習も重ねた。

いよいよ研修当日です!

しかし、研修は「やって終わり」ではありません。

むしろ、終わった瞬間から次の戦いが始まっているのです。

今日は、当日の不安を消し去る準備と、研修の良し悪しを見極める「評価のものさし」について、詳しく解説していきます。

当日の不安を消す「鉄板チェックリスト」

研修当日、講師は誰よりも早く会場に入るのが鉄則です。

なぜなら、機材トラブルなどの予期せぬ事態は、必ずと言っていいほど起こるからです。

パイロットがフライト前に必ず機体チェックをするように、講師も「環境チェック」を行いましょう。

以下のリストを参考にしてください。

  1. 映像と音声:プロジェクターは映りますか?後ろの席の人にもスライドの文字が見えますか?マイクの音量は適切ですか?
  2. 室温と照明:暑すぎたり寒すぎたりしませんか?スライドが見やすい明るさですか?
  3. 配布物:人数分のテキストは揃っていますか?アンケート用紙はありますか?

これらを事前に確認するだけで、心に余裕が生まれます。

余裕があれば、受講生の顔を見て話すことができますよね。

トラブルは「起きて当たり前」と思うこと

準備万端でも、トラブルは起きます。

「PCがフリーズした!」「受講生が寝ている!」「想定外の質問が来た!」

そんなとき、パニックにならないための魔法の言葉があります。

それは、「ま、そんなこともあるよね」です。

PCが動かなければ、口頭で説明すればいいのです。

寝ている人がいれば、そっと近づいて物理的な距離を詰めるか、「休憩しましょうか」と声をかければいいのです。

トラブルを「失敗」と捉えず、「ライブ感」として楽しむくらいの図太さを持ちましょう。

受講生は、完璧な講師を求めているわけではありません。

一生懸命で、誠実な講師を求めているのです。

研修の成績表をつける「カークパトリックモデル」

さて、無事に研修が終わりました。

「あー、楽しかった!みんな笑顔だったし、大成功!」

……と、感覚だけで終わらせてはいけません。

その研修に本当に意味があったのかを測る必要があります。

ここで登場するのが、世界中の教育担当者が愛用している「カークパトリックの4段階評価モデル」です。

専門用語ですが、中身はとてもシンプルです。

研修の評価を4つのレベル(段階)に分けて考えよう、というものです。

レベル1:Reaction(反応)

受講生が研修をどう感じたか、つまり「満足度」です。

「楽しかったですか?」「講師の話は聞きやすかったですか?」といったアンケートで測ります。

レベル2:Learning(学習)

知識が身についたか、つまり「理解度」です。

テストやクイズをして、点数をつけます。

レベル3:Behavior(行動)

現場に戻ってから行動が変わったか、つまり「実践度」です。

研修で習った挨拶を、翌日から職場でやっているかどうかを上司に確認してもらいます。

レベル4:Results(業績)

会社に利益をもたらしたか、つまり「成果」です。

営業研修の結果、売上が上がったかなどを測ります。

初心者のうちは、まず「レベル1(満足度)」と「レベル2(理解度)」をしっかり測れるようになりましょう。

アンケート結果を分析してみよう

研修直後にアンケートを取ることが多いと思いますが、集めただけで満足していませんか?

ここで、アンケート結果を数値化して分析する方法をご紹介します。

例えば、5段階評価でアンケートを取ったとします。

ただ「良かった」という感想を眺めるだけでなく、平均点を出して客観的に評価しましょう。

ここで、平均点を出すための計算式を書いてみます。

アンケート平均点 = 全回答者の合計点数 \div 回答者の人数

もし、合計点が 85 点で、回答者が 20 人だった場合、

平均点 = 85 \div 20 = 4.25

となります。

このように数値化することで、「前回の4.0点よりも良くなった!」と成長を実感できますし、上司への報告もしやすくなります。

評価を行うメリットとデメリット

メリットは、次回の改善点が明確になることです。

「話し方は好評だったけど、資料が見にくいという意見が多かった」と分かれば、次は資料を直せばいいですよね。

デメリットは、耳の痛い意見も見なければならないことです。

一生懸命やったのに「つまらなかった」と書かれると落ち込むかもしれません。

でも、それはあなたへの攻撃ではなく、「もっと良くなるためのヒント」です。

ありがたく受け取りましょう。

今後の学習の指針

今日は、研修当日の心構えと、終わった後の評価方法について解説しました。

特に「カークパトリックモデル」は、研修担当者なら必ず知っておくべき共通言語です。

まずはレベル1の「アンケート作成」から始めてみてください。

「楽しかったですか?」という曖昧な質問ではなく、「明日の仕事で使えそうですか?」といった具体的な質問を入れてみるのがコツです。

さて、ここまでで研修の作り方から実施、評価までを一通り学びました。

しかし、企業研修の最終的なゴールは、受講生が満足することではありません。

その先にある「組織の成長」や「ビジネスへの貢献」こそが真の目的です。

次回、最終回となる第4章では、研修を「ただのイベント」で終わらせず、会社の利益につなげるための「長期的・経営的視点」についてお話しします。

少し視座が高い話になりますが、これを知っているとあなたの評価もグッと上がりますよ!

【会社を成長させる】研修を「いい思い出」で終わらせない!投資対効果と改善のサイクル

ついに最終回となりました!

ここまで、研修の「企画」「講師スキル」「実施・評価」について一緒に学んできましたね。

これまでの内容を実践すれば、あなたはもう立派な研修担当者です。

しかし、最後にもう一つだけ、どうしてもお伝えしたいことがあります。

それは、「研修はイベントではない」ということです。

「みんなで集まって勉強して、楽しかったね、解散!」

これでは、会社がお金を出して研修を行った意味がありません。

厳しい言い方かもしれませんが、ビジネスである以上、研修には「成果」が求められます。

今回は、研修を会社の利益につなげるための「経営的な視点」と、研修をより良くし続けるための「改善サイクル」についてお話しします。

少し難しそうなテーマですが、最後まで噛み砕いて解説しますので、ついてきてくださいね!

研修は「コスト」ではなく「投資」である

あなたは「投資」という言葉にどんなイメージを持っていますか?

株や不動産を思い浮かべるかもしれません。

ビジネスにおける投資とは、「将来のリターン(利益)を見込んでお金を使うこと」を指します。

研修も同じです。

会社は「社員の能力が上がれば、もっと売上が上がるはずだ」「ミスが減ってコストが下がるはずだ」と期待して、安くはない費用を払っています。

ここで、経営者が大好きな指標をご紹介しましょう。

「ROI(アール・オー・アイ)」という言葉です。

日本語では「投資対効果」と訳されます。

これを計算する数式は以下のようになります。

ROI(パーセント) = ( 研修で得られた利益 - 研修にかかった費用 ) \div 研修にかかった費用 \times 100

この式がプラスになれば「やってよかった研修」、マイナスになれば「赤字の研修」ということになります。

例えば、100万円かけて営業研修をやったとします。

その結果、営業マンのスキルが上がり、売上の利益が300万円増えたとしたらどうでしょう?

( 300万 - 100万 ) \div 100万 \times 100 = 200

つまり、200パーセントのROIです。

これは「使ったお金が3倍になって返ってきた(元本+利益)」という大成功の投資になります。

ROIを意識するメリットとデメリット

メリットは、研修の価値を数字で証明できることです。

「社員が喜んでいました」と言うよりも、「ROIが200パーセントでした」と言ったほうが、社長は「おお、よくやった!」と褒めてくれるでしょう。予算も取りやすくなります。

デメリットは、計算が難しいことです。

「売上が上がったのは研修のおかげなのか?」「たまたま景気が良かったからではないか?」という因果関係を証明するのは、プロでも悩むところです。

初心者のうちは、「この研修は、会社にどんな利益をもたらすことを目指しているのかな?」と意識するだけでも十分です。

やりっぱなしを防ぐ「長期的な追跡」

研修直後はモチベーションが高くても、1週間もすれば元の習慣に戻ってしまう……。

これは人間の脳の仕組み上、仕方のないことです。

ダイエットと同じで、継続しなければ効果は出ません。

そこで重要になるのが「長期的な追跡(フォローアップ)」です。

研修が終わって「さようなら」ではなく、その後も関わり続けるのです。

具体的には以下のような方法があります。

  1. 1ヶ月後のアンケート:「研修で習ったことを、今も実践できていますか?」と聞きます。
  2. 3ヶ月後のインタビュー:現場の上司に「彼らの動きは変わりましたか?」とヒアリングします。
  3. リマインドメール:「あの時のポイントを覚えていますか?」と定期的にメールを送ります。

植物に水をやり続けるように、研修後も少しずつ刺激を与えることで、学びが定着し、本当の意味でのスキルになります。

研修を育て続ける「PDCAサイクル」

ここまで学んできたプロセスを、一つの円として繋げましょう。

ビジネスの基本、「PDCAサイクル」です。

研修作りも、このサイクルを回し続けることで完成度が上がっていきます。

  • Plan(計画):第1章でやった「企画」です。ニーズを分析し、目的を決めましたね。
  • Do(実行):第2章・第3章でやった「実施」です。実際に研修を行います。
  • Check(評価):第3章でやった「評価」です。アンケートやROIで結果を確認します。
  • Action(改善):そして今回です。評価結果をもとに、「次はここを直そう」と修正します。

「アンケートで『時間が足りない』と言われたから、次は休憩時間を増やそう」

「『内容が難しい』と言われたから、事例をもっと噛み砕こう」

こうしてAction(改善)を行うと、それが次のPlan(計画)になります。

このPDCAをグルグル回すことで、あなたの研修は前回よりも今回、今回よりも次回と、どんどん素晴らしいものに進化していくのです。

全4回のまとめ

長い間、お付き合いいただきありがとうございました。

最後に、これまでの旅路を振り返ってみましょう。

  1. 企画の基礎:誰のために何をするのか? 設計図(ADDIEモデル)を作りました。
  2. 講師スキル:KISSの法則でシンプルに伝え、情熱を持って話すことを学びました。
  3. 実施と評価:準備で不安を消し、カークパトリックモデルで成果を測りました。
  4. 組織への影響:研修を投資と考え、PDCAを回して改善し続ける重要性を知りました。

これらはすべて、繋がっています。

どれか一つが欠けても、良い研修にはなりません。

今後の学習の指針

あなたはもう、研修担当者としての「地図」と「コンパス」を持っています。

あとは実際に歩き出すだけです。

これからの学習として、まずは**「他社の研修事例を調べてみる」**ことをおすすめします。

ネットで「新入社員研修 事例」と検索すると、いろんな会社がどんな工夫をしているかが出てきます。

「あ、これは第2章でやったテクニックだ!」と気づけるようになっているはずです。

失敗を恐れずに、あなたらしい研修を作ってください。

あなたの作った研修で、誰かの人生が少しでも良い方向に変わることを願っています。

それでは、またどこかの研修会場でお会いしましょう!

セイ・コンサルティング・グループでは新人エンジニア研修のアシスタント講師を募集しています。

投稿者プロフィール

山崎講師
山崎講師代表取締役
セイ・コンサルティング・グループ株式会社代表取締役。
岐阜県出身。
2000年創業、2004年会社設立。
IT企業向け人材育成研修歴業界歴20年以上。
すべての無駄を省いた費用対効果の高い「筋肉質」な研修を提供します!
この記事に間違い等ありましたらぜひお知らせください。