【節税の基礎】「引く場所」が違うだけで効果が倍増?所得控除と税額控除の違い

こんにちは。ゆうせいです。

確定申告の準備を進めていると、やたらと「〇〇控除」という言葉が出てきて混乱しませんか。

医療費控除、基礎控除、配偶者控除、住宅ローン控除……。

どれも「税金を安くしてくれるありがたいもの」であることに変わりはありません。しかし、実はこの「控除」には、決定的な2つの種類があることをご存知でしょうか。

それが「所得控除」と「税額控除」です。

名前はよく似ていますが、その威力には天と地ほどの差があります。この違いを理解していないと、せっかくの節税チャンスの効果を正しく見積もることができません。

今日は、私たち研修講師の懐事情に直結する、この2つの違いをわかりやすく解説します。

そもそも「控除」とは?

控除(こうじょ)とは、簡単に言えば「差し引くこと」です。

税金の計算において、ある一定の金額をマイナスして、支払う税金を安くする仕組みのことですね。

ただ、計算式の「どこから」差し引くかによって、呼び名と効果が全く変わってきます。

イメージしやすいように、ネットショッピングで例えてみましょう。

  • 所得控除 = 「ポイントを使って、対象商品の価格を下げること」
  • 税額控除 = 「最後にレジで配られる、金券クーポンを使うこと」

どちらがお得そうか、なんとなく想像がつきますか?

では、それぞれの仕組みを詳しく見ていきましょう。

所得控除:税率をかける「前」に引く

まず、私たちが普段よく耳にする「医療費控除」や「生命保険料控除」、そして「青色申告特別控除」などは、すべてこちらの所得控除のグループに入ります。

これは、税率をかける前の「課税所得(税金の対象となる利益)」から差し引くものです。

計算の流れ

  1. 売上から経費を引く
  2. そこからさらに「所得控除」を引く
  3. 残った金額に「税率」をかける

実際の効果は?

たとえば、税率が20%の人(所得税10%+住民税10%と仮定)が、10万円分の所得控除を受けたとしましょう。

10\text{万円} \times 20% = 2\text{万円}

つまり、手元に残るお金(節税効果)は2万円です。

10万円を引いたからといって、税金が10万円安くなるわけではありません。あくまで「税率を掛け算する前の数字」を小さくしただけなので、効果は税率分に薄まってしまうのです。

それでも、私たちフリーランスにとっては、小規模企業共済やiDeCo(イデコ)など、自分で積み増しできるものが多いので、非常に重要な節税手段であることには変わりありません。

税額控除:税率をかけた「後」に引く

一方、税額控除は別格の強さを持っています。

代表的なものに「住宅ローン控除」や、最近話題の「定額減税」などがあります。

これは、税率をかけて計算し終わった後の「本来支払うべき税金」から、直接差し引くものです。

計算の流れ

  1. 売上から経費を引く
  2. 所得控除を引いて、税率をかける
  3. 算出された税金から、直接「税額控除」を引く

実際の効果は?

先ほどと同じく、10万円分の税額控除を受けたとしましょう。

10\text{万円} = 10\text{万円}

計算はいりません。税金そのものから10万円が値引きされるので、手元に残るお金(節税効果)はそのまま10万円です。

比較すると一目瞭然

  • 所得控除10万円の効果 \rightarrow 2万円お得(税率20%の場合)
  • 税額控除10万円の効果 \rightarrow 10万円お得

同じ「10万円の控除」という名前でも、税額控除の方が圧倒的にパワーが強いことがわかりますね。まるで魔法のクーポンのようです。

フリーランス講師はどう活用すべきか

「それなら、全部税額控除にすればいいじゃないか」と思いますよね。

しかし残念ながら、私たちフリーランスが自由に使える税額控除はあまり多くありません。

国の政策として「家を買ってほしい(住宅ローン控除)」「配当金への二重課税を防ぎたい(配当控除)」といった特定の目的に対して用意されていることが多いためです。

ですので、戦略としては次のようになります。

  1. 所得控除を積み上げる(基本戦略)iDeCo、小規模企業共済、青色申告特別控除など、自分でコントロールできる「所得控除」を最大限活用して、税率がかかる元本を減らす。
  2. 使える税額控除を見逃さない(ボーナス)もし自宅兼オフィスを購入してローンを組んでいるなら、住宅ローン控除は絶対に申告する。また、2024年のような「定額減税」がある年は、その恩恵をしっかり受ける。

まとめ

最後に、二つの違いを整理しましょう。

  • 所得控除:税率をかける前に引く。「課税される利益」を減らすもの。効果は税率による。
    • 例:医療費控除、社会保険料控除、小規模企業共済など
  • 税額控除:税金を計算した後に引く。「税金そのもの」を減らすもの。効果は金額そのまま。
    • 例:住宅ローン控除、定額減税、配当控除など

確定申告書を書くとき、第一表の左側にあるのが所得控除、右側にあるのが税額控除です。

「右側にある控除の方が、最終的なインパクトが強いんだな」と覚えておくだけで、数字の見え方が変わってくるはずです。

さて、税額控除のような「直接引く」効果を持ちながら、返礼品までもらえてしまう大人気制度「ふるさと納税」については、もう活用されていますか?

実はあれ、仕組み上は「寄付金控除」という名前ですが、実質的には税額控除に近い最強の節税術なんです。

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投稿者プロフィール

山崎講師
山崎講師代表取締役
セイ・コンサルティング・グループ株式会社代表取締役。
岐阜県出身。
2000年創業、2004年会社設立。
IT企業向け人材育成研修歴業界歴20年以上。
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学生時代は趣味と実益を兼ねてリゾートバイトにいそしむ。長野県白馬村に始まり、志賀高原でのスキーインストラクター、沖縄石垣島、北海道トマム。高じてオーストラリアのゴールドコーストでツアーガイドなど。現在は野菜作りにはまっている。