アンゾフ・マトリックスとは? やさしく学ぶ経営戦略の基本

「会社って、どうやって成長していくんだろう?」と考えたことはありませんか?

経営の世界には、会社がこれからどの方向に進めばよいかを整理するための、地図のような考え方があります。その代表的なものが「アンゾフ・マトリックス」です。

名前だけ聞くと少し難しそうですよね。でも、大丈夫です。「商品」と「お客さん」の組み合わせで考えるだけなので、中学生でもしっかり理解できます。

実際の経営戦略会議でもよく使われる、とても実用的な考え方なんですよ。「次に何をするべきか」を整理したいときに、とても役立ちます。

アンゾフ・マトリックスの全体像

アンゾフ・マトリックスは、次の2つの視点で考えます。

商品:今ある商品か、新しい商品か
市場:今のお客さんか、新しいお客さんか

この2つを組み合わせると、会社の成長戦略は4つに分けられます。

既存市場(今のお客さん)新規市場(新しいお客さん)
既存商品市場浸透戦略市場開拓戦略
新規商品製品開発戦略多角化戦略

こうして見ると、将棋やマス目のゲームのようにも見えますよね。経営者は、この4つのマスを見ながら、「次にどこを目指すか」を考えているのです。

4つの戦略をやさしく解説

市場浸透戦略

市場浸透戦略とは、今ある商品を、今のお客さんにもっと買ってもらう方法です。

たとえば、コンビニがポイント2倍キャンペーンを行ったり、いつも買ってくれているお客さん向けに割引をしたりする方法が当てはまります。

たとえるなら、「仲のよい友達に、もっとたくさん遊ぼうよと声をかける」ようなものです。

メリットは、すでにある商品とすでにいるお客さんを相手にするため、失敗しにくいことです。準備もしやすく、比較的すぐ実行できます。

一方で、大きく成長するには限界があります。安全ではあるけれど、派手な伸び方はしにくい戦略です。

堅実だけれど、少し地味に見えるかもしれませんね。でも、会社にとってはとても大切な土台です。

市場開拓戦略

市場開拓戦略とは、今ある商品を、新しいお客さんに売る方法です。

たとえば、日本で売れているお菓子を海外でも販売する、学生向けの商品を社会人向けにも広げる、といった方法です。

たとえるなら、「今まで仲良くしていたグループの外にも、同じ遊びを広める」イメージです。

メリットは、売れる相手が広がることです。うまくいけば、一気に成長のチャンスが広がります。

ただし、新しいお客さんには今まで通りのやり方が通じないこともあります。言葉、文化、習慣、好みが違えば、工夫も必要です。

「同じ商品ならどこでも売れる」と考えると、思わぬ苦戦をすることがあります。そこが難しいところですね。

製品開発戦略

製品開発戦略とは、新しい商品を、今のお客さんに売る方法です。

たとえば、スマートフォン会社が新モデルを出したり、人気のお店が新メニューを加えたりするケースです。

たとえるなら、「いつもの友達に、新しいゲームを持っていく」ようなものです。

メリットは、すでに応援してくれているお客さんとの関係を深めながら、新しい売上を作れることです。ファンの多い会社にとっては、とても強い戦略になります。

ただし、新しい商品を作るには、お金も時間もかかります。せっかく作っても、お客さんに受け入れられないこともあります。

新作はワクワクしますよね。でも、ワクワクの裏には努力と緊張もたっぷりあるわけです。

多角化戦略

多角化戦略とは、新しい商品を、新しいお客さんに売る方法です。

たとえば、家電メーカーがまったく別の分野に進出する、飲食店が教育事業を始める、といった動きです。

たとえるなら、「知らない人たちと、初めての遊びを始める」ようなものです。

うまくいけば、大きな成長につながります。今までにない新しい柱を作れる可能性があるからです。

その反面、4つの中で最もリスクが高い方法でもあります。商品も新しい、お客さんも新しいとなると、経験が少なく、失敗の可能性も高くなります。

いきなり難易度が高いので、慎重な準備が欠かせません。まさに上級者向けの戦略と言えそうです。

実際の経営戦略会議ではどう使っているのか

実際の経営戦略会議では、アンゾフ・マトリックスは「考えを整理する道具」として使われます。

会議では、たとえば次のような話し合いが行われます。

今の主力商品は、まだ今のお客さんにもっと売れるだろうか。
新しい地域や年齢層に広げる余地はあるだろうか。
今のお客さん向けに、新商品を出したほうがよいだろうか。
それとも、まったく別の事業に挑戦するべきだろうか。

このような問いを、感覚だけで話すと、議論が散らかりがちです。ところが、アンゾフ・マトリックスを使うと、話の位置づけがすぐにはっきりします。

会議で出る案アンゾフ・マトリックス上の位置づけ
既存商品の販促を強化する市場浸透戦略
海外や新しい地域へ進出する市場開拓戦略
新商品・新サービスを作る製品開発戦略
新規事業を始める多角化戦略

つまり、アンゾフ・マトリックスは、経営者が「今どこにいて、次にどこへ向かうのか」を確認するための整理シートのようなものです。

会議の場で感情的になりそうなときほど、このようなフレームワークが役立ちます。頭の中のモヤモヤを、4つの箱に分けて見えるようにしてくれるからです。

身近な例で考えると、もっと分かりやすい

たとえば、学校の文化祭でクラスがお店を出す場面を想像してみてください。

すでに人気のクレープを、今来てくれている生徒たちにもっと買ってもらう工夫をする。そんな方法は市場浸透戦略です。

同じクレープを、保護者や他校の見学者にも売るなら市場開拓戦略になります。

クレープに加えて、タピオカや限定スイーツも販売するなら製品開発戦略です。

さらに、食べ物だけでなくゲームコーナーまで始めるなら、多角化戦略に近づきます。

こうして置きかえると、会社の話もぐっと身近に感じませんか? 経営戦略は、実は日常の選択にもよく似ているのです。

にゃんこエピソードで学ぶアンゾフ・マトリックス

ある日、にゃんこカフェを営むミケちゃんは、少し悩んでいました。

「最近、お客さんの数が少し伸び悩んでいるにゃ……。どうしたらもっと喜んでもらえるかにゃ?」

そこでミケちゃんは、作戦会議を開くことにしました。

市場浸透戦略で考えたこと

まずは、今来てくれている常連さんにもっと楽しんでもらうことを考えました。

スタンプカードを作って、来店ごとにポイントがたまるようにしたのです。

「また来たくなるにゃ♪」と常連さんもにっこり。これは大成功でした。

市場開拓戦略で考えたこと

次に、近くに来る外国人観光客にも来てもらえないか考えました。

お店のメニューに英語を入れて、写真も増やしました。

すると、「かわいい!」と立ち寄るお客さんが少しずつ増えていきました。

製品開発戦略で考えたこと

さらに、今のお客さん向けに猫型スイーツを新しく作りました。

肉球マシュマロ入りドリンクや、猫耳クッキー付きのケーキは大人気です。

「かわいすぎて食べられないにゃ!」という声まで出るほどでした。

多角化戦略で考えたこと

勢いに乗ったミケちゃんは、猫グッズの通販も始めてみました。

ところが、ここで思わぬ苦戦です。発送作業、箱詰め、お問い合わせ対応に大忙し。

「にゃーっ、通販は思ったより大変だにゃ……!」

結局、スタンプカードと猫スイーツは好調でしたが、通販は準備不足で大変だったそうです。

このエピソードから分かるのは、「全部やればよいわけではない」ということです。自分たちの強みや準備の状況に合った戦略を選ぶことが大切なのです。

かわいいにゃんこカフェでも、経営の基本はしっかり同じなんですね。

にゃんこ、あなどれません……!

アンゾフ・マトリックスを式のイメージで考える

アンゾフ・マトリックスは、式のイメージで考えると理解しやすくなります。

成長の方向 = 商品の新しさ × 市場の新しさ

日本語でさらにやさしく言うと、

会社の成長の大きさ = どれだけ新しい商品か × どれだけ新しいお客さんに向かうか

商品の新しさも、市場の新しさも小さいほど、比較的安全です。反対に、両方が大きくなるほど、挑戦の度合いもリスクも高くなります。

ゲームで言えば、初級ステージから上級ステージへ進むようなイメージですね。

4つの戦略のメリットとデメリット

戦略メリットデメリットリスクの大きさ
市場浸透戦略取り組みやすく、失敗しにくい大きな成長はしにくい低い
市場開拓戦略新しいお客さんに広げられる新しい市場への対応が必要中くらい
製品開発戦略今のお客さんとの関係を深められる開発コストや失敗の可能性がある中くらい
多角化戦略成功すると大きく成長できる最も難しく、失敗のリスクも高い高い

表にすると、4つの違いがかなり見えやすくなりますよね。

どの戦略が正しいかは、会社の状況によって変わります。大切なのは、「今の自分たちに合っているのはどれか」を考えることです。

まとめ

アンゾフ・マトリックスは、「商品」と「市場」という2つの視点から、会社の成長戦略を4つに整理する考え方です。

今ある商品を今のお客さんにもっと売るのが市場浸透戦略。今ある商品を新しいお客さんに売るのが市場開拓戦略。新しい商品を今のお客さんに売るのが製品開発戦略。新しい商品を新しいお客さんに売るのが多角化戦略です。

実際の経営戦略会議では、「今の売上をどう伸ばすか」「新しいお客さんに広げるべきか」「新商品を作るか」「新規事業に挑戦するか」といった議論を整理するために使われています。

難しそうに見える言葉ですが、考え方そのものはとてもシンプルです。文化祭のお店や、にゃんこカフェの作戦会議に置きかえると、ぐっと分かりやすくなります。

大切なのは、勢いだけで選ばないことです。自社の強み、準備、資金、経験を見ながら、ぴったり合う方向を選ぶことが、よい戦略につながります。

「どこへ進むか」を考えることは、会社だけでなく、学びや進路を考えるときにも役立ちます。今ある得意を伸ばすのか、新しい挑戦をするのか。そんな視点にもつながっていくのです。

今後の学習のヒント

アンゾフ・マトリックスを学んだあとは、次にSWOT分析やPEST分析も学ぶと、経営戦略の理解がさらに深まります。

自分たちの強みと弱みを見つめること。外の環境の変化を知ること。そして、そのうえでどの方向へ進むかを考えること。そうした流れがつながると、経営戦略はただの知識ではなく、「使える考え方」になっていきます。

次に誰かと作戦会議をするときは、ぜひ心の中で4つのマスを思い浮かべてみてくださいね。「今のまま伸ばす? 新しい相手に広げる? 新しいものを作る? それとも新しい分野へ行く?」そんな問いが見えてくるはずです。

学びを少しずつ積み重ねると、ニュースで見る会社の動きも、とても面白く見えてきますよ😊




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投稿者プロフィール

田渕講師
田渕講師
セイ・コンサルティング・グループ株式会社専務取締役
IT企業向け人材育成研修歴業界歴20年以上
キャリアコンサルタント・産業カウンセラー
アンガーマネジメントファシリテーター、コンサルタント
ハッピーな人生を送る秘訣は「何事も楽しむ!」ことにあり。
一期一会を大切に、そして楽しく笑顔になる研修をミッションに!