研修効果を高める拡張-形成理論:肯定的な感情が学習と成長を促す仕組み

こんにちは。ゆうせいです。

研修や業務の場において、参加者が前向きな気分でいるときほど、新しいアイデアが生まれやすく、参加者同士の交流が活発になる傾向が見受けられます。人間が経験する肯定的な感情は、単にその瞬間の気分を良くするだけでなく、長期的な成長を促す機能を持っています。今回は、心理学の概念である拡張-形成理論について解説します。

拡張-形成理論とは

拡張-形成理論とは、喜びや興味といった肯定的な感情が、人間の思考や行動の選択肢を広げ(拡張)、その結果として知識や人間関係といった長期的に役立つ資源を蓄積する(形成)プロセスを説明する理論です。

高校生の部活動を例に説明します。ある生徒が、練習試合で良い結果を出し、喜びや達成感を抱いている場面を想定します。肯定的な感情を持つ生徒は、普段の練習メニューをこなすだけでなく、新しい技術を試してみようと考えたり、これまで話す機会の少なかった他の部員に助言を求めたりします。思考や行動の範囲が広がる段階が、拡張に該当します。

さらに、新しい技術に挑戦し、他の部員と交流を深めた結果、生徒は新しい運動技能や、部員同士の信頼関係という個人的な資源を獲得します。獲得した技能や信頼関係は、その後の重要な試合や困難な状況に直面した際、問題を解決するための助けとなります。拡張された行動を通じて、将来役立つ資源が蓄積される段階が、形成に該当します。

肯定的な感情を学習環境に取り入れない場合のデメリット

拡張-形成理論の機能を研修設計に組み込まず、参加者に過度なプレッシャーや緊張感ばかりを強いた場合に生じる不利益を列挙します。

  • 参加者の思考や行動の選択肢が狭まり、決められた手順をこなすだけの受け身の姿勢に終始する
  • 失敗に対する恐怖心が先行し、新しい知識の応用や複雑な課題への挑戦が行われなくなる
  • 参加者同士の自発的なコミュニケーションが抑制され、情報共有や協力関係の構築が阻害される

拡張-形成理論を研修設計に活用するメリット

参加者の肯定的な感情を引き出し、行動の拡張と資源の形成を促す環境を整備する利点を示します。

  • 参加者が持つ興味や関心を引き出すことで、研修で提示された枠組みを超えた柔軟な発想や問題解決手法が提案される
  • 参加者同士が肯定的な感情を共有することで、研修終了後も継続して互いを支援し合う人的なつながりが形成される
  • 研修を通じて蓄積された知識や人間関係が、参加者の職場における長期的な適応力や成果の向上に寄与する

参加者の成長を促すための学習ステップ

肯定的な感情の機能を用いて参加者の学習を支援し、将来役立つ資源の獲得を促すためには、以下の手順で研修プログラムを進行する手法が有効です。

1. 肯定的な感情を喚起する導入を行う

研修の開始時に、参加者が過去の業務でやりがいを感じた経験や、現在興味を持っている分野について短い時間で共有する機会を設け、喜びや興味といった感情を引き出します。

2. 思考と行動の選択肢を広げる

正解が一つに定まらない課題を提示し、参加者が自由に意見を出し合える時間を確保します。出された意見に対しては直ちに行う評価を保留し、多様な考え方を受け入れることで思考の拡張を促します。

3. 資源の蓄積を意識させる

グループワークを通じて得られた新しい知識や、他の参加者との協力関係を、研修後の業務においてどのように活用できるかを具体的に言語化させます。

4. 振り返りと定着化を図る

研修の終盤に、参加者が獲得した能力や人脈を各自で書き出させます。獲得した資源を可視化して認識させることで、研修の成果を長期的な財産として定着させます。

研修を設計する際、まずは参加者が安心感や興味を持てるような対話の時間を冒頭に設定する段階から進めてください。肯定的な感情を意図的に引き出すことで、参加者の思考を広げ、持続的な成長を支援する環境の構築が可能になります。

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投稿者プロフィール

山崎講師
山崎講師代表取締役
セイ・コンサルティング・グループ株式会社代表取締役。
岐阜県出身。
海外放浪の末、2000年創業、2004年会社設立。
IT企業向け人材育成研修歴業界歴20年以上。
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学生時代は趣味と実益を兼ねてリゾートバイトにいそしむ。長野県白馬村に始まり、志賀高原でのスキーインストラクター、沖縄石垣島、北海道トマム。高じてオーストラリアのゴールドコーストでツアーガイドなど。現在は野菜作りにはまっている。