√ や Σ、n! の記号はどう生まれた?計算記号の由来とその歴史
こんにちは。ゆうせいです。
今回のは、計算を簡潔に記述するための記号たちを取り上げます。
べき乗、平方根、階乗、総和、総乗──私たちが普段当たり前のように使っているこれらの記号は、どのようにして生まれたのでしょうか?
歴史的な記録に基づき、誰が、いつ、どのような目的で導入したかをひとつひとつ確認していきます。
「aⁿ」べき乗(累乗)の記号とその歴史
意味と定義
- 「aⁿ」は、「a を n 回かける」という意味。
- 「べき乗(冪乗)」または、n が自然数の場合は「累乗」とも呼ばれる。
- 「べき(冪)」は、漢字では「覆う」「被せる」という意味を持つ。
記号の起源
- 導入者:ルネ・デカルト(René Descartes)
- 初出:1637年『La Géométrie』
- 記号として上付き文字を使う形が確立された。
- 「power(冪)」の語源は、ユークリッドが「直線の平方」を表すのに使った言葉に由来。
計算機言語での記号「^」
- 「^」はべき乗を表す記号として、1960年に登場したALGOL60という言語で使用されたのが最初の例とされる。
- この記号は「キャレット(caret)」「ハット(hat)」とも呼ばれる。
「√」平方根(ルート)の記号とその起源
意味と定義
- √a は、「a の平方根」、つまり「2乗すると a になる数」
- 一般に「n 乗根」は、an\sqrt[n]{a} と書かれる。
記号の歴史
項目 | 内容 |
---|---|
原型 | 1525年:クリストフ・ルドルフ(Christoph Rudolff)が著書『Coss』で使用 |
形状の由来 | ラテン語で「根」を意味する radix の頭文字 r を引き延ばしたもの |
現在の形 | 1637年:ルネ・デカルトが「√」の上に横線(ヴィンキュラム)を加えたことで定着 |
その他の表記の例
- イタリアでは「R」
- 英国では「L」や「ℓ」
などが過去には使われていた。
「n!」階乗の記号とその誕生
意味と定義
- n! は、1 から n までの連続した積
- 例:5! = 1×2×3×4×5 = 120
- 英語では factorial
記号の起源
- 導入者:クリスチャン・クランプ(Christian Kramp)
- 初出:1808年『Éléments d'arithmétique universelle』
- 記号「!(感嘆符)」が選ばれたのは、階乗が急激に増加することに由来する。
発展形「!!」二重階乗
条件 | 二重階乗の定義 |
---|---|
偶数 n | n!! = n × (n−2) × (n−4) × … × 2 |
奇数 n | n!! = n × (n−2) × (n−4) × … × 1 |
- 二重階乗は、組合せ論や特殊な数列で使用される。
「Σ」総和記号の使用と由来
意味と定義
- Σ は、「ある範囲にわたる項をすべて加算する」ことを表す。
- 例:∑i=1nai=a1+a2+⋯+an\sum_{i=1}^{n} a_i = a_1 + a_2 + \dots + a_n
記号の起源
- 導入者:レオンハルト・オイラー(Leonhard Euler)
- 初出:1755年『Institutiones calculi differentialis』
- 由来:英語の「sum」の頭文字 S に対応するギリシア文字 Σ(シグマ)
「Π」総乗記号の使用と由来
意味と定義
- Π は、「ある範囲にわたる項をすべて掛け算する」ことを表す。
- 例:∏i=1nai=a1×a2×⋯×an\prod_{i=1}^{n} a_i = a_1 \times a_2 \times \dots \times a_n
記号の起源
- 導入者:明確な初使用者は記録されていない。
- 由来:英語「product」の頭文字 P に対応するギリシア文字 Π(パイ)
- 記号としての使用は19世紀後半~20世紀初頭にかけて定着したとされる。
まとめ:記号は数式の「省略」と「構造化」のために生まれた
数学において、べき乗・平方根・階乗・総和・総乗といった記号は、
同じ操作の繰り返しやまとまった処理を簡潔に表現するために発明されました。
そして、それぞれの記号は具体的な人物・文献・時代背景の中で発展してきました。
記号 | 概要 | 導入者・時期 |
---|---|---|
aⁿ | べき乗 | ルネ・デカルト(1637年) |
√ | 平方根 | クリストフ・ルドルフ(1525年)/デカルト(1637年) |
n! | 階乗 | クリスチャン・クランプ(1808年) |
Σ | 総和 | レオンハルト・オイラー(1755年) |
Π | 総乗 | 起源不明(19世紀後半以降に定着) |
^ | プログラミング用の累乗記号 | ALGOL60(1960年) |
参考文献
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