【数学コラム】線形代数ってなに?「まっすぐ」な世界を「記号」で解く物語

こんにちは。ゆうせいです。

エンジニアとして機械学習やデータ分析の勉強を始めると、必ず立ちはだかる大きな壁があります。

そう、 線形代数 です。

名前からして、なんだか堅苦しくて難しそうですよね。「線」はわかるけど、「形」って何?「代数」って何?と、漢字を見るだけで頭が痛くなってしまう人もいるかもしれません。

でも、この名前の由来をバラバラにして意味を紐解いていくと、実はこの学問が「どんな世界を扱っているのか」が驚くほどクリアに見えてくるのです。

今回は、数式をほとんど使わずに、この不思議な名前の正体に迫っていきましょう。

「代数」は、数の代わりを使うこと

まずは、後半の 代数(Algebra) から片付けてしまいましょう。

これは漢字の通り、 数の代わりに文字を使う ことです。

小学校の算数では、「 1 + 2 = 3 」のように、具体的な数字を使って計算していましたよね。

でも、中学校に入ると「 x + y = z 」のように、アルファベット(変数)が登場しました。これが 代数 です。

  • 具体的な数字(1や100など)にとらわれず、
  • x y といった「仮の姿(代役)」を使って、
  • 一般的な法則や関係性を解き明かす。

つまり、いつでもどんな数字が入ってもいいように、「箱」を用意して計算するテクニックのことです。ここはまだイメージしやすいですよね。

「線形」は、まっすぐで素直な世界

問題は前半の 線形(Linear) です。ここが多くの人を悩ませるポイントです。

一言で言うと、線形とは 「まっすぐな線」 のことです。

英語の Line(線)から来ています。グラフに描いたときに、曲がったり折れ曲がったりせず、定規で引いたようなピーンと伸びた直線のことを指します。

でも、ただまっすぐなだけではありません。線形であるためには、 「素直で裏切らない」 という2つの重要な性質が必要です。

1. 倍にしたら、結果も倍になる(比例)

たとえば、1個100円のリンゴを売っているお店を想像してください。

  • 1個買うと、100円。
  • 2個買うと、200円。
  • 10個買うと、1000円。

買う個数を2倍、10倍にすれば、金額も素直に2倍、10倍になりますよね。グラフにすると、原点を通る綺麗な直線になります。これが 線形 です。

逆に、「3個買うと割引で250円!」というお店はどうでしょう。これはグラフにするとガクッと曲がってしまいますよね。これは 非線形(ひせんけい) と言い、線形代数の世界では扱いません。

2. 足し合わせても結果は同じ(加法性)

Aくんがリンゴを1個、Bくんがリンゴを2個カゴに入れました。

  • 別々に会計しても:100円 + 200円 = 300円
  • 合わせて会計しても:3個で300円

別々に計算して足しても、最初から足して計算しても、結果が変わらない。これも素直な性質ですよね。

つまり、「線形」とは、 予期せぬ変化や依怙贔屓(えこひいき)がない、単純で扱いやすい世界 のことを指しているのです。

なぜ、わざわざ「線形」を学ぶのか?

「代数」と「線形」の意味はわかりました。

  • 線形:まっすぐで素直な関係。
  • 代数:文字を使って計算すること。

合わせると、 「まっすぐで素直な世界を、文字を使って計算する学問」 ということになります。

ここで、こう思いませんか。

「世の中、そんなに単純なことばかりじゃないでしょ? 割引もあるし、空気抵抗もあるし、複雑なことばかりじゃないか!」

その通りです。現実世界はグニャグニャと曲がりくねった 非線形 なことばかりです。

それなのに、なぜエンジニアは必死になって線形代数を学ぶのでしょうか。

それは、 「複雑な曲線も、超拡大すれば直線に見えるから」 です。

地球は丸いですが、私たちが立っている地面は平ら(直線)に見えますよね。それと同じです。

どんなに難しいAIの計算も、複雑な物理現象も、ものすごく細かく切り刻んで拡大していけば、そこには「線形」の世界が広がっています。

難しい曲線のまま扱うのは大変すぎるので、「とりあえず直線(線形)の集まりだと考えよう!」と単純化して、一気に計算してしまう。そのための最強の道具が、 行列 や ベクトル なのです。

まとめ

いかがでしたか。

線形代数という名前は、決して難しい呪文ではありませんでした。

  • 線形:グラフにすると直線になる、素直で予測しやすい関係(比例など)。
  • 代数:具体的な数ではなく、 x y などの記号で一般化すること。

つまり、 「複雑な現実世界を、扱いやすい『直線』の集まりとみなして、記号を使って一気に解き明かすための道具」 だったのです。

こう考えると、無機質な行列の計算も、少しだけ親しみが湧いてきませんか。

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投稿者プロフィール

山崎講師
山崎講師代表取締役
セイ・コンサルティング・グループ株式会社代表取締役。
岐阜県出身。
2000年創業、2004年会社設立。
IT企業向け人材育成研修歴業界歴20年以上。
すべての無駄を省いた費用対効果の高い「筋肉質」な研修を提供します!
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学生時代は趣味と実益を兼ねてリゾートバイトにいそしむ。長野県白馬村に始まり、志賀高原でのスキーインストラクター、沖縄石垣島、北海道トマム。高じてオーストラリアのゴールドコーストでツアーガイドなど。現在は野菜作りにはまっている。