【数学史】線形代数は何のために生まれた?元祖は「ツルとカメ」の計算だった
こんにちは。ゆうせいです。
前回は、線形代数が「まっすぐな世界を記号で解く」学問だというお話をしました。
では、そもそも昔の数学者たちは、なぜこんな面倒なルールを作り出したのでしょうか。学生を苦しめるため? いえいえ、違います。
実は、線形代数が生まれた理由は、とても切実で、実用的なものでした。
一言で言えば、 「大量の連立方程式を、楽をして解きたかったから」 です。
今回は、線形代数のルーツをたどりながら、人類がどのようにしてこの「最強の計算道具」を手に入れたのか、その歴史物語を解説しましょう。
きっかけは「ツルカメ算」の限界
皆さんは小学生の頃、「ツルカメ算」をやりましたよね。
「ツルとカメが合わせて10匹います。足の数は全部で28本です。それぞれ何匹?」というあれです。
中学生になると、これを と
を使って解くようになります。いわゆる 連立一次方程式 です。
変数が2つ( と
)くらいなら、手計算でも余裕ですよね。
もし、動物園全体の計算を頼まれたら?
しかし、これが動物園全体の話になったらどうでしょうか。
ツルとカメだけでなく、クモ(足8本)、イカ(足10本)、ムカデ(足たくさん)...と種類が増えていき、変数が 100個 になったら?
- ...
式も100本、変数も100個。
これを手計算で「代入法」や「加減法」を使って解こうとしたら、紙が何枚あっても足りませんし、途中で絶対に計算ミスをしてしまいます。
昔の数学者や測量士たちは、こうした膨大な計算に頭を抱えていました。「もっと効率よく、機械的に解く方法はないのか!」と。
発明:「数字だけ」を抜き出して整理する
そこで天才たちは気づきました。
「いちいち とか
とか書くから面倒なんだ。重要なのは 『係数(数字)』 だけじゃないか?」
先ほどのツルカメの式を見てください。
この中で、本当に意味を持っているのは「 」「
」「
」という数字たちです。
そこで、変数(文字)を取り払い、数字だけを並べて箱に入れてみました。
これこそが、線形代数の主役である 行列(Matrix) の誕生です。
線形代数は「計算の工場」
行列という発明により、人類は連立方程式を「数字のパズル」として扱えるようになりました。
- 数字だけを並べる(行列を作る)。
- 決められたルールに従って、行を足したり引いたりする(掃き出し法など)。
- すると、自動的に答えが浮かび上がってくる。
つまり、線形代数が作られた最初の目的は、 「どんなに数が増えても、同じ手順で機械的に答えを出せる計算システム」 を作ることだったのです。
コンピュータがない時代、このテクニックは、星の軌道計算や土地の測量など、国家プロジェクトレベルの計算を支える最強の武器でした。
進化:「計算」から「空間」へ
最初は「計算を楽にする道具」として生まれた線形代数ですが、その後、デカルトという数学者が「座標」という概念を発明したことで、劇的な進化を遂げます。
数字のペア を、グラフ上の「点」や「矢印」として見ることができるようになったのです。
これによって、線形代数は新たな役割を手に入れました。
「空間を操る魔法」 です。
- 数字の列(ベクトル)
空間上の「矢印」を表す。
- 数字の箱(行列)
矢印を「回転」させたり「拡大」させたりする装置を表す。
連立方程式を解くための道具だった行列が、いつの間にか「空間をグニャグニャ動かすためのコントローラー」に生まれ変わったのです。
これが、現在の3DゲームやCGアニメーション、そしてAIのデータ処理に使われている理由です。マリオがジャンプして回転できるのも、実は裏側で線形代数(行列)が計算してくれているおかげなんですよ。
まとめ
いかがでしたか。
線形代数が作られた理由、それは意外にも人間臭いものでした。
- 元々の目的:変数がたくさんある連立方程式を、手計算で解くのがあまりに面倒くさかったから(サボるための発明)。
- 進化した目的:数字を使って、空間(図形)を回転させたり変形させたりするため。
「面倒な計算をどうにかして楽にしたい」という先人たちの執念が、現代のAIを支える土台になっていると思うと、少し感動しませんか。
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投稿者プロフィール
- 代表取締役
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セイ・コンサルティング・グループ株式会社代表取締役。
岐阜県出身。
2000年創業、2004年会社設立。
IT企業向け人材育成研修歴業界歴20年以上。
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学生時代は趣味と実益を兼ねてリゾートバイトにいそしむ。長野県白馬村に始まり、志賀高原でのスキーインストラクター、沖縄石垣島、北海道トマム。高じてオーストラリアのゴールドコーストでツアーガイドなど。現在は野菜作りにはまっている。