【機械学習の第一歩】クラスタリングとは?データの自動仕分け術を新人エンジニア向けに徹底解説!

こんにちは。ゆうせいです。

「手元にある大量の顧客データ、どんなグループに分けられるんだろう?」

「このアクセスログから、ユーザーの行動パターンをいくつか見つけ出せないかな?」

エンジニアとしてキャリアをスタートさせると、答えが一つではない、漠然としたデータと向き合う機会が増えてきます。

そんなとき、どこから手をつけていいか途方に暮れてしまうこともありますよね。

もし、データ自身に「僕たちはこんなグループに分かれるよ!」と自動で教えてくれる魔法のような方法があったら、知りたくありませんか?

それを実現するのが、今回解説する「クラスタリング」です!

この記事を読めば、クラスタリングの基本的な考え方から代表的な手法、そしてビジネスでの活用法まで、しっかりと理解できます。

さあ、データの声を聞くための第一歩を踏み出しましょう!

クラスタリングって、いったい何?

クラスタリングとは、一言で言うと「似たもの同士を集めて、いくつかのグループ(クラスター)に自動で分ける」ための手法です。

日本語では「クラスター分析」とも呼ばれます。

ここで非常に重要なポイントがあります。それは、クラスタリングが「教師なし学習」という分野の代表的な手法であるということです。

「ん?教師なし学習ってなんだ?」と思いましたか?

機械学習には、大きく分けて「教師あり学習」と「教師なし学習」があります。

  • 教師あり学習: あらかじめ「この画像は犬」「このメールは迷惑メール」といった正解ラベル(教師データ)が与えられたデータを使って、予測モデルを学習させます。
  • 教師なし学習: 正解ラベルがない、いわば"生"のデータの中から、データ自身の構造やパターン、法則性を機械に見つけ出させる手法です。

クラスタリングは、まさにこの教師なし学習。

私たち人間が「こういうグループに分けて」と指示しなくても、データの特徴だけを頼りに、自動で仲間分けをしてくれる、とても賢い技術なのです!

例え話:スーパーの買い物客を自動でグループ分け!

あなたがとあるスーパーの店長になったと想像してみてください。

手元には、たくさんのお客さんの購買データ(いつ、何を、いくつ、いくらで買ったかなど)があります。

このデータをクラスタリングにかけると、どうなるでしょうか?

機械がデータの中の類似性を見つけ出し、例えば以下のような顧客グループを自動で発見してくれるかもしれません。

  • クラスター1: 平日の午前中に来店し、野菜や肉、魚などの生鮮食品を中心に購入するグループ。
  • クラスター2: 週末の夜にまとめて来店し、お惣菜やお酒、冷凍食品をたくさん購入するグループ。
  • クラスター3: 来店頻度は高くないが、一度に高級なワインやチーズ、輸入菓子などを購入するグループ。

どうでしょう?

このようにグループ分けができれば、それぞれのクラスターの特性に合わせたキャンペーンを企画できますよね。

クラスター1の人には「生鮮食品のタイムセール」、クラスター2の人には「週末限定のお惣菜割引クーポン」といった具体的な施策が考えられます。

このように、何の先入観もなしにデータからインサイトを発見できるのが、クラスタリングの面白さであり、強力な点なのです。

クラスタリングの代表的な手法

クラスタリングと一口に言っても、グループ分けの方法(アルゴリズム)はたくさんあります。

ここでは、新人エンジニアがまず押さえておくべき、最も代表的な2つの手法をご紹介しますね。

1. k-means (k平均法)

「クラスタリングといえば、まずはこれ!」と言われるほど、最も有名でシンプルな手法です。

k-meansの仕組み

k-meansは、以下のステップでグループ分けを進めます。

  1. kの決定: 最初に、データをいくつのグループに分けたいか、その数 k を人間が決めます。
  2. 中心点の初期配置: データ空間に、k個の中心点(重心)をランダムに配置します。
  3. グループへの割り当て: すべてのデータ点を、それぞれ最も距離が近い中心点のグループに割り当てます。
  4. 中心点の更新: 新しくできた各グループの平均的な位置(重心)を計算し、そこに中心点を移動させます。
  5. 繰り返し: グループの割り当てと中心点の更新を、中心点がまったく動かなくなるまで、あるいはグループのメンバーに変化がなくなるまで繰り返します。

言葉だけだと少し難しいかもしれませんね。

「全校生徒をいくつかのクラスに分ける」という例えで考えてみましょう!

まず、先生が「よし、全校生徒を5クラス(k=5)に分けよう!」と決めます。

そして、校庭に仮のクラス代表を5人、適当に立たせます(中心点の初期配置)。

次に、全校生徒は、自分に一番近い代表のところに集まります(グループへの割り当て)。

すると、5つのグループができますね。

そしたら、今度は各グループのちょうど真ん中にいるような生徒を、新しい代表として選び直します(中心点の更新)。

代表が変わったので、また全校生徒は一番近い新代表のところに集まり直します。

この「代表決め」と「グループ分け」を、誰もクラスを移動しなくなるまで繰り返せば、自然と似た者同士が集まったクラスが出来上がります。

これがk-meansの基本的な考え方です!

  • 長所: 仕組みがシンプルで分かりやすく、計算速度が速い。
  • 短所: 最初にkの数を決めなければならない。球状でない、複雑な形のクラスターを見つけるのは苦手。

2. 階層的クラスタリング

もう一つが、データの構造を階層的に捉える、その名も「階層的クラスタリング」です。

これには大きく2つのアプローチがあります。

凝集型と分割型

  • 凝集型: 最初は、すべてのデータ点がそれぞれ独立した一つのクラスターだと考えます。そこから、最も似ている(距離が近い)クラスター同士を一つにまとめる、という作業を繰り返していき、最終的にすべてのデータが大きな一つのクラスターになるまで続けます。
  • 分割型: 凝集型とは逆に、最初はすべてのデータが一つの巨大なクラスターに属していると考えます。そこから、最も似ていない(距離が遠い)グループに分割していく、という作業を繰り返します。

生物の分類図を思い浮かべると、凝集型のイメージが掴みやすいかもしれません。

「チワワ」と「柴犬」は似ているから「イヌ」というグループに、「三毛猫」と「シャム猫」は似ているから「ネコ」というグループにまとめる。

さらに、「イヌ」と「ネコ」は「食肉目」という、より大きなグループにまとめる…。

このように、小さなグループから大きなグループへとまとめていく様子が、まさに階層的クラスタリングなのです。

この手法の大きな特徴は、「デンドログラム」と呼ばれる樹形図でクラスタリングの過程を可視化できることです。デンドログラムを見れば、どこで分割すれば、いくつのクラスターに分けるのが良さそうか、といったことを視覚的に判断できます。

  • 長所: kの数を事前に決める必要がない。デンドログラムによってデータの構造を視覚的に理解しやすい。
  • 短所: データ数が多くなると、計算に非常に時間がかかる。

クラスタリングの注意点と活用のヒント

クラスタリングは強力ですが、使う上でいくつか知っておくべき注意点があります。

  1. 結果の解釈は人間の仕事クラスタリングは自動でグループ分けをしてくれますが、出来上がったグループが「何者なのか」を解釈するのは、分析者である私たち人間の仕事です。スーパーの例で言えば、データだけを見て「クラスター1は、平日に生鮮食品を買うグループ」という意味付けを行う必要があります。
  2. 唯一の正解はない教師なし学習なので、「この分け方が絶対的に正しい」という答えはありません。k-meansでkの数を変えたり、違うアルゴリズムを試したりすることで、結果は変わってきます。分析の目的に応じて、最も納得感のある結果を探していく試行錯誤が重要です。
  3. どの「ものさし」で距離を測るかが重要「似ている」かどうかを判断するためには、データ点同士の「距離」を計算する必要があります。この距離計算には、最も一般的な「ユークリッド距離」の他にも様々な種類があり、どのものさしを使うかによっても結果が変わることを覚えておいてください。

まとめ:次のステップへ!

今回は、正解データなしでデータの中から自動でグループを見つけ出す「クラスタリング」について解説しました。

  • クラスタリングは、似たもの同士を集める「教師なし学習」の手法。
  • 代表的なアルゴリズムに、kの数を決めてから分ける「k-means」や、階層構造で捉える「階層的クラスタリング」がある。
  • 顧客セグメンテーションや異常検知など、ビジネスでの応用範囲は非常に広い。
  • ただし、結果の解釈やアルゴリズムの選択には、分析者の洞察が不可欠。

クラスタリングの世界に興味が湧いてきたあなたへ、最後に今後の学習ステップを提案します。

  1. とにかくk-meansを動かしてみる!まずは百聞は一見にしかず。Pythonのscikit-learnなどのライブラリを使えば、驚くほど簡単なコードでk-meansを実行できます。有名なアヤメ(iris)のデータセットなどを使って、実際にデータをグループ分けしてみましょう。
  2. kの決め方を調べてみるk-meansの課題である「最適なkの数」をどうやって決めるのか、という点を探求してみましょう。「エルボー法」や「シルエット分析」といった手法を学ぶと、より根拠を持ってkを決定できるようになります。
  3. 他のアルゴリズムにも触れてみるk-meansが苦手な複雑な形のクラスターを見つけられる「DBSCAN」など、世の中にはたくさんのクラスタリングアルゴリズムがあります。それぞれの得意・不得意を知ることで、分析の引き出しが一気に増えますよ。

クラスタリングは、データに隠された物語を読み解くための、強力なツールです。

ぜひマスターして、あなたのエンジニアとしての価値を高めていってください。応援しています!

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投稿者プロフィール

山崎講師
山崎講師代表取締役
セイ・コンサルティング・グループ株式会社代表取締役。
岐阜県出身。
2000年創業、2004年会社設立。
IT企業向け人材育成研修歴業界歴20年以上。
すべての無駄を省いた費用対効果の高い「筋肉質」な研修を提供します!
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