【超入門】機械学習になぜ線形代数が必要なのか?挫折しないための基礎知識と学習法

こんにちは。ゆうせいです。

エンジニアとしてのキャリアをスタートさせたばかりのあなた、機械学習の勉強を始めようとして「うっ、数学……」と固まってしまった経験はありませんか。

特に「線形代数(せんけいだいすう)」という言葉を聞いただけで、教科書の無機質な数式の羅列が頭をよぎり、そっと本を閉じたくなってしまう気持ち、痛いほどよくわかります。私も最初はそうでした。

でも、安心してください。実は機械学習における線形代数は、難しい証明問題を解くためのものではなく、大量のデータを一瞬でさばくための「最強の武器」なのです。

今回は、なぜ機械学習に線形代数が必要不可欠なのか、その理由を数式アレルギーの方でもわかるように、直感的な言葉で紐解いていきます。これを読み終わる頃には、少しだけ数学と仲良くなれているはずですよ。

線形代数とは「データを整理整頓する棚」である

まず質問です。あなたは普段、エクセルなどの表計算ソフトを使いますか。

もし使うなら、線形代数の基礎はもう理解できたも同然です。なぜなら、線形代数で扱う「行列(ぎょうれつ)」とは、まさに「エクセルの表そのもの」だからです。

機械学習の世界では、専門用語として以下の2つを頻繁に使います。

  • ベクトル
  • 行列

名前は厳ついですが、中身はシンプルです。

たとえば、あるお店の「商品の売上データ」を想像してみてください。

「りんご、みかん、バナナ」の売上個数を横一列に並べたもの、これがベクトルです。単なる「数のリスト」と考えてください。

そして、その売上リストが「1月1日分、1月2日分、1月3日分……」と何日分も積み重なって、縦横に数字が並んだ表になったもの、これが行列です。

つまり、線形代数とは、バラバラの数字をベクトルや行列という「棚」にきれいに整理整頓して、まとめて扱いやすくするための学問なのです。そう考えると、少し親しみが湧いてきませんか。

なぜ機械学習に必須なのか?

データを表にするだけなら、エクセルで十分だと思うかもしれません。では、なぜわざわざ線形代数という数学を使うのでしょうか。

最大の理由は、計算のスピードと効率にあります。

機械学習、特にディープラーニングのような技術では、膨大な数の計算を繰り返します。これを一つひとつ順番に計算していたら、スーパーコンピューターを使っても何年もかかってしまいます。

ここで線形代数の出番です。

1. まとめて計算できる「一括処理能力」

ふたたび買い物を例に考えてみましょう。あなたが八百屋で買い物をするとします。合計金額を出すとき、頭の中では次のような計算をしていますよね。

合計金額 = りんごの個数 \times りんごの単価 + みかんの個数 \times みかんの単価

これは単純な計算です。しかし、もし商品が1万種類あったらどうでしょう。あるいは、全国1000店舗分の計算を同時にしなければならないとしたら。気が遠くなりますね。

プログラムでこれを書くとき、線形代数を使わないと「for文」などの繰り返し処理を使って、1つずつ足し算と掛け算を行わなければなりません。これはコンピューターにとって、あまり効率の良い作業ではないのです。

しかし、線形代数(行列の計算)を使うと、この1万種類の商品計算や1000店舗分の集計を、たった1回の命令で「ドン!」とまとめて処理できます。

コンピューター、特にGPUと呼ばれる部品は、この「行列の計算」を並列処理することに特化しています。線形代数のルールに従って式を立てることで、コンピューターの性能をフル活用し、爆速で学習を進めることができるのです。

2. 複雑な世界をシンプルに記述できる

もうひとつの理由は「言葉の便利さ」です。

機械学習の仕組みを数式で書くとき、一つひとつの変数(データの項目)をすべて書き出していると、式が横に果てしなく長くなり、何をしているのか誰にも読めなくなってしまいます。

しかし、ベクトルや行列を使えば、どんなに膨大なデータであっても、たった数文字の記号で表現できます。

例えば、予測値を出すための計算式は、線形代数の記法を使うと以下のようにスッキリ表現されます。

予測値 = 重み行列 \times 入力データ + バイアス

この短い式の中に、何万、何億というデータの計算処理がすべて詰め込まれているのです。エンジニアや研究者は、この共通言語を使うことで、複雑なモデルをシンプルに議論し、共有しています。

線形代数を学ぶメリットとデメリット

ここで、改めて学ぶことのメリットと、初心者が陥りやすいデメリットを整理しておきましょう。

メリット

  • 論文や技術書が読めるようになる最新のAI技術は、ほぼすべて数式で説明されています。基礎記号が読めるだけで、情報の吸収力が劇的に上がります。
  • エラーの原因がわかるようになるプログラミングをしていると「行列の形が合わない(Shape Error)」というエラーによく遭遇します。線形代数の知識があれば、どこで計算が食い違っているのかすぐに修正できます。
  • 効率的なコードが書けるPythonのライブラリ(NumPyなど)は線形代数をベースに作られています。数学的な理解があれば、無駄な処理を省いた高速なコードが書けます。

デメリット

  • 直感的に理解しにくい2次元(平面)や3次元(空間)までは図でイメージできますが、機械学習では「100次元」や「1000次元」といったデータを扱います。これを無理に頭で描こうとすると混乱します。
  • 計算が面倒手計算で行列の掛け算を行うのは非常に手間がかかり、ミスもしやすいです。これが挫折の原因になりがちです。

今後の学習の指針

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。最後に、これから学習を始めるあなたへ、私からのアドバイスです。

「手計算ができなくてもいい。仕組みと意味を理解しよう!」

エンジニアにとって重要なのは、複雑な行列計算を紙とペンで解けることではありません。それはコンピューターがやってくれます。

大切なのは、「この行列とこのベクトルを掛けると、データがどう変換されるのか」というイメージを持つこと、そしてそれを「Pythonなどのプログラムでどう表現するか」を知ることです。

まずは、Pythonの数値計算ライブラリである「NumPy(ナムパイ)」を触りながら、コードと数式の対応関係を学んでみてください。実際に動く数字を見ると、抽象的だった概念が急に腑に落ちる瞬間が必ず訪れます。

さあ、恐れることはありません。まずはエクセルで作った表を「これが行列か」と眺めることから始めてみませんか。

あなたのエンジニアライフが、数学という武器を得てさらに飛躍することを応援しています!

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投稿者プロフィール

山崎講師
山崎講師代表取締役
セイ・コンサルティング・グループ株式会社代表取締役。
岐阜県出身。
2000年創業、2004年会社設立。
IT企業向け人材育成研修歴業界歴20年以上。
すべての無駄を省いた費用対効果の高い「筋肉質」な研修を提供します!
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学生時代は趣味と実益を兼ねてリゾートバイトにいそしむ。長野県白馬村に始まり、志賀高原でのスキーインストラクター、沖縄石垣島、北海道トマム。高じてオーストラリアのゴールドコーストでツアーガイドなど。現在は野菜作りにはまっている。