【脱・数学アレルギー】機械学習で「微分」が実は一番大事な理由、教えます

こんにちは。ゆうせいです。

前回の線形代数に続き、今回は多くの新人エンジニアが頭を抱える「微分(びぶん)」についてお話しします。

高校の数学で習ったとき、「接線の傾きを求めて何になるの?」と疑問に思ったことはありませんか。グラフの上で接線を引いたり、複雑な公式を覚えたり、一体これが実社会のどこで役に立つのかイメージしづらかったですよね。

しかし、断言します。機械学習において、微分は「学習そのもの」を司る心臓部です。

もし微分がなければ、AIはいつまでたっても賢くなれません。ただの計算機で終わってしまいます。なぜ微分がそこまで重要なのか、そしてエンジニアとしてどう向き合えばいいのか、数式が苦手な方にも伝わるように解説していきます。

微分とは「ナビゲーションシステム」である

まず、難しい定義は一旦忘れましょう。機械学習における微分を一言で表すなら、「ゴールへ向かうためのナビ」です。

機械学習の目的は、与えられたデータに対して最も適した答えを出せるように、AIの中身(パラメータ)を調整することです。

ここで、AIの賢さを評価する「テスト」を行うと想像してください。

AIが間違った答えを出せば出すほど、点数は悪くなります。この「間違いの大きさ」を専門用語で「損失(そんしつ)」や「誤差(ごさ)」と呼びます。

エンジニアとしてのあなたの目標は、この「損失」をできるだけ 0 に近づけることです。つまり、「損失が最小になる状態」を目指すわけです。

ここで微分の出番です。

微分を計算すると、「パラメータを少し増やせば損失が減るのか、それとも減らせば損失が減るのか」という「進むべき方向」が分かります。

例えるなら、あなたは今、目隠しをして深い山のどこかに立っているとします。目標は、谷底(損失がゼロの地点)まで降りることです。周りの景色は見えません。どうやって降りますか。

きっと、足元の地面を探って「どちらに傾いているか」を確かめますよね。そして、足元が下がっている方向へ慎重に一歩を踏み出すはずです。

この「足元の傾き」こそが、数学でいう「微分」の正体です。

なぜ機械学習に必須なのか?

もう少し具体的に、機械学習の仕組みの中で微分がどう働いているかを見ていきましょう。

1. 「勾配降下法」という学習の基本ルール

機械学習のモデルがデータを学習するプロセスは、実は以下のようなシンプルなサイクルの繰り返しです。

  1. 適当な設定で予測してみる。
  2. 正解とのズレ(損失)を計算する。
  3. 微分を使って、ズレを小さくする修正方向を見つける。
  4. 設定(パラメータ)を少しだけ修正する。
  5. 1に戻る。

この繰り返しの手法を、専門用語で「勾配降下法(こうばいこうかほう)」と呼びます。勾配とは傾き、つまり微分のことです。

もし微分がなかったらどうなるでしょう。

修正すべき方向が分からないため、パラメータをあてずっぽうに変更するしかありません。「値を 0.1 増やしてみようかな?いや、減らしてみようかな?」と試行錯誤していたら、何億通りもあるパラメータの調整なんて永遠に終わりません。

微分は「値を減らせ!そうすれば誤差が小さくなるぞ!」と、最短ルートを教えてくれるのです。

2. 複雑なニューラルネットワークを正しく調整する

最近話題のディープラーニング(深層学習)は、多数の層が重なった複雑な構造をしています。

出力結果が間違っていたとき、「どの層の、どのパラメータが原因で間違えたのか」を特定するのは非常に困難です。しかし、微分には「連鎖律(れんさりつ)」という便利な性質があります。

これを使うと、最後の出力に出た誤差の原因を、出口から入口に向かって順番に遡りながら特定できます。これを「誤差逆伝播法(ごさぎゃくでんぱほう)」と言います。

名前は難しいですが、やっていることは「責任の所在を突き止めて、それぞれの担当者に反省させること」です。この「反省の量(修正量)」を計算するために、微分の技術が不可欠なのです。

微分を学ぶメリットとデメリット

ここで、微分を理解することのメリットと、初心者がつまずきやすいポイントを整理します。

メリット

  • 「学習が進まない」理由がわかるモデルの学習が途中で止まってしまったとき、「勾配(微分値)が消えてしまったのか(勾配消失)」、「勾配が大きすぎて暴走したのか(勾配爆発)」といった推測ができるようになります。
  • 新しいアルゴリズムを理解できる世の中には様々な「最適化手法(AdamやRMSpropなど)」がありますが、これらはすべて「微分の使い方を工夫したもの」です。基本がわかれば、最新の手法も怖くありません。
  • パラメータ調整の勘所がつかめる「学習率」という設定値がありますが、これは「微分の結果に従って、どれくらい大きく一歩を踏み出すか」を決めるものです。微分の意味を知っていると、この調整が上手になります。

デメリット

  • 計算が複雑になりがち高校数学の微分は x が1つだけでしたが、機械学習では x が何万個もある「偏微分(へんびぶん)」を扱います。式を見ると圧倒されるかもしれません。
  • 「局所解」という罠微分は「今の足元の傾き」しか教えてくれません。そのため、本当の谷底(最適解)ではなく、山の中腹にある小さなくぼみ(局所解)にハマってしまい、そこから抜け出せなくなることがあります。

今後の学習の指針

ここまで読んで、「微分って思ったより実用的だな」と感じていただけたら嬉しいです。

最後に、これから学習を進める上でのアドバイスをお伝えします。

「複雑な微分の計算式を、手で解こうとしないでください」

エンジニアの仕事は、数式の証明ではありません。Pythonのライブラリ(PyTorchやTensorFlowなど)を使えば、.backward() とたった一行書くだけで、コンピューターが勝手に微分計算をやってくれます。これを「自動微分」と呼びます。

ですから、まずは以下の概念をイメージできるようになることを目指してください。

  • 損失関数(Loss Function): 学習のゴール(最小化したい値)。
  • 勾配(Gradient): ゴールに向かう方向(微分の結果)。
  • 学習率(Learning Rate): 一歩の歩幅。

「損失関数という山の斜面を、勾配というコンパスを見ながら、学習率という歩幅で降りていく」

このイメージさえ持っていれば、あなたはもう立派に機械学習の挙動を理解できています。

焦らず、まずはコードを動かしながら、数字が減っていく様子(学習が進む様子)を楽しんでみてください。

あなたのエンジニアとしての成長曲線が、右肩上がりに急上昇することを願っています!

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投稿者プロフィール

山崎講師
山崎講師代表取締役
セイ・コンサルティング・グループ株式会社代表取締役。
岐阜県出身。
2000年創業、2004年会社設立。
IT企業向け人材育成研修歴業界歴20年以上。
すべての無駄を省いた費用対効果の高い「筋肉質」な研修を提供します!
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学生時代は趣味と実益を兼ねてリゾートバイトにいそしむ。長野県白馬村に始まり、志賀高原でのスキーインストラクター、沖縄石垣島、北海道トマム。高じてオーストラリアのゴールドコーストでツアーガイドなど。現在は野菜作りにはまっている。