【過去は関係ない】「今」を変えれば未来は変わる!スキル上達のマルコフ性とは

こんにちは。ゆうせいです。

新しいプログラミング言語や技術を学んでいるとき、ふと「自分には才能がないんじゃないか」とか「学生時代にもっと数学をやっておけばよかった」なんて、変えられない過去を悔やむことはありませんか?

あるいはスポーツの世界でも、「練習をサボった罪悪感」でスランプに陥ることがありますよね。

今日は、そんな過去の呪縛からあなたを解放し、最短で成長するための思考法を「スキルの数式」から学びましょう。

1. スポーツを科学する「スキルの数式」

今回ご紹介するのは、一見すると「?」となる長い数式ですが、言っていることは非常にシンプルで哲学的です。

P(S_{t+1}|S_t) = P(S_{t+1}|S_t, S_{t-1}, S_{t-2}, \dots, S_1)

記号がズラリと並んでいますが、怖がらないでください。

これは「未来を決めるのは何か?」という問いに対する、数学からの回答です。

2. 数式を解読しよう

この式は、確率論における 「マルコフ性(Markov Property)」 という性質を表しています。

記号の意味を物語風に見ていきましょう。

  • S (State): 状態 です。あなたの「現在のスキルレベル」や「コンディション」だと思ってください。
  • t (Time): 時間 です。 S_t は「今日の自分」、 S_{t+1} は「明日の自分」です。
  • S_{t-1}, \dots, S_1 : これらは 「過去の履歴」 です。昨日の自分、一昨日の自分、一年前の自分……という過去の積み重ねです。

式が教えてくれること

式の左側を見てください。

P(S_{t+1}|S_t)

これは「 今日の状態( S_t )さえわかれば、明日の状態( S_{t+1} )の確率は計算できる 」という意味です。

そして式の右側は、「今日の状態に加えて、過去のあらゆる履歴( S_{t-1} \dots )を知っている場合の確率」です。

この2つが 「イコール( = )」 で結ばれている。

これがどういうことかわかりますか?

「明日の結果を予測するのに、 過去の履歴は不要である(今の状態だけあればいい) 」と言っているのです。

どれだけ過去に失敗していても、あるいはどれだけ昔は天才と呼ばれていても関係ない。「今、どの位置にいるか」だけが、次のステップを決定するという力強いメッセージです。

3. エンジニアが知っておくべき専門用語

この考え方は、現代のIT技術の根幹を支えています。

マルコフ連鎖(Markov Chain)

「次の状態が、現在の状態のみによって確率的に決まる」というモデルのことです。

例えば、Webページの検索ランクを決めるGoogleの初期アルゴリズム(PageRank)や、文章を自動生成するAIの基礎も、この考え方がベースになっています。「今の単語がこれなら、次に来る単語はこれだろう」と、直前の状態から次を予測しているのです。

状態遷移(State Transition)

システム設計の基本です。

「ログイン画面(状態A)」で「ボタンを押す(アクション)」と、「ホーム画面(状態B)」に遷移する。

エンジニアは、複雑なシステムを「今どういう状態で、何が起きるとどう変わるか」というシンプルな遷移の連続として捉える必要があります。そこに「昨日どうだったか」という複雑な履歴を持ち込むと、システムはバグの温床になります。

4. この考え方を使うメリットとデメリット

メリット

「『今』に全集中できる」 ことです。

学習において、「文系だったから」とか「3日サボったから」という変えられない過去変数は、未来( S_{t+1} )の計算には不要なノイズです。

「今( S_t )、コードが書けるか書けないか」。もし書けないなら、今勉強して状態を「書ける」に変えればいい。そうすれば、明日の成功確率は確実に上がります。思考がシンプルになり、行動しやすくなります。

デメリット

「積み重ねの文脈を見失うことがある」 という点です。

現実の人間は単純なマルコフ連鎖ではありません。「疲労」や「基礎知識」といった要素は、見えないパラメータとして蓄積されています。

「今日無理やり徹夜して仕事を終わらせた(状態はクリア!)」としても、体には疲労が残っており、明後日にダウンするかもしれません。数式を単純化しすぎて、隠れた「負債」を無視しないように注意が必要です。

5. 今後の学習の指針

今日からは、学習に行き詰まったらこう考えてみてください。

「過去のことは一旦忘れよう。重要なのは、 今の自分のステータス( S_t ) を正確に把握することだ」

何がわかっていて、何がわかっていないのか。今の現在地さえ正確にデバッグできれば、次の目的地へ進むルートは必ず見えます。エンジニアとしての成長は、その「現状把握と更新」の繰り返しなのです。

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投稿者プロフィール

山崎講師
山崎講師代表取締役
セイ・コンサルティング・グループ株式会社代表取締役。
岐阜県出身。
2000年創業、2004年会社設立。
IT企業向け人材育成研修歴業界歴20年以上。
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