ご存じですか?アブセンティーズムとプレゼンティーズム
こんにちは。今回は「アブセンティーズム(absenteeism)」と「プレゼンティーズム(presenteeism)」という、少し専門的な言葉について初心者向けに丁寧に解説しますね。
アブセンティーズムとは
定義と意味
「アブセンティーズム(absenteeism)」とは、従業員が予定や期待されている勤務日に欠勤・休業している状態を指します。欠勤という形で“見える損失”と言えます。
例えでいうと?
例えばクラスに「本当は出席予定なのに」ちょっと熱があって休んでしまった生徒がいたとしましょう。先生もクラスも、「あ、今日はこの子来てないな」とすぐわかりますよね。これが欠勤=アブセンティーズムです。
原因となるもの
身体的な病気(風邪・ケガなど)、精神的な不調(ストレス・うつなど)、家庭事情(育児・介護など)など多岐に渡ります。
企業・組織における影響
- 欠勤するとその人の仕事が遅れたり、他の人が代わりに動かないといけない。
- 代替要員の手配、残業の増加、チームのモチベーション低下など追加コストも発生。
- 見える損失なので“休んでいる分”という数値で把握しやすい特徴があります。
プレゼンティーズムとは
定義と意味
「プレゼンティーズム(presenteeism)」とは、従業員が出勤あるいは勤務してはいるものの、何らかの心身の不調等により本来のパフォーマンスを発揮できていない状態を指します。つまり「出てきているけれど、最高の働きではない」という“隠れた損失”です。
例えでいうと?
例えば授業には来ているけれど、「頭がぼーっとしてて先生の説明がほとんど入ってこない」生徒がいるとしましょう。教室にはいるから“来てる”けど、学習効果としてはあまり出ていない…という感じです。
なぜ“隠れた損失”なのか
- 欠勤のように「休んでいる」という明確なサインが少ないため、見過ごされがち。
- 「出社している=普通に働いている」と思われてしまい、実は集中力が落ちていたりミスが多かったりといった損失が蓄積する。
- 研究では、労働生産性の低下において、プレゼンティーズムが欠勤よりも大きな割合を占めるというデータもあります。
原因となるもの
長時間労働・過重負荷、職場環境の悪さ、人間関係のストレス、身体的不調(肩こり・腰痛・目の疲れ)、精神的不調などが挙げられます。
両者の違いと関係性
| 項目 | アブセンティーズム | プレゼンティーズム |
|---|---|---|
| 状態 | 欠勤・休業している | 出勤しているが効率が落ちている |
| 可視性 | 高い(“休んでいる”という明確な形) | 低い(“働いている”ため見えづらい) |
| 生産性影響 | 量的なロス(その人の仕事がそのまま消失) | 質的なロス(働いていても成果が出ていない/ミスが増える) |
| 対策 | 欠勤を減らす、復職支援など | 健康管理・働き方改善・早期発見が重要 |
プレゼンティーズムの状態を放置すると、体調が悪化して最終的にアブセンティーズム(長期欠勤)につながるケースもあります。
業績・生産性に与える影響
日本でのデータ
- 日本では、メンタルヘルスに関連したプレゼンティーズムによる生産性損失が約460億ドル(日本円で約7兆円)と推計され、アブセンティーズムの損失(約18.5億ドル)を大きく上回っています。
- 企業の健康関連コストのうち、プレゼンティーズムが約77.9%を占め、アブセンティーズムは4.4%に留まるという報告もあります。
意味すること
企業や組織にとって、単に「欠勤を減らす」だけでなく、「出勤しているけど本来の力を出し切れていない状態をどう改善するか」が非常に重要です。健康や働き方が生産性と直結しています。
数式でざっくり理解(簡易版)
生産性損失 ≒(予定勤務時間) ×(1 − 実効率率)
日本語表記:実働損失量=予定勤務時間×(1−実効率率)
予定勤務時間=T、実効率率=E(0〜1の数値)とした場合、実働損失量=T×(1−E)。
Eが高いほど損失は少なく、低いほど損失が大きくなります。
事例:企業や職場での取り組み
事例1:健康経営としての取り組み
ある企業では、社員の健康支援制度を強化して「出勤/勤務しているがパフォーマンスが落ちている人」の数を減らそうとしました。ストレスチェック導入、健康相談窓口、柔軟な働き方の採用などにより、プレゼンティーズムの損失が有意に低下しました。
事例2:特にメンタルヘルス領域
日本の大規模調査では、メンタルヘルスに起因するプレゼンティーズムの損失が巨大であると報告されており、企業がこの領域に注力することで将来的な欠勤(アブセンティーズム)や離職リスクを軽減できるとされています。
中高生にもわかる例え
サッカーチームで考えてみましょう。チームのメンバーAくんが「少し熱っぽいけど大丈夫だから出る」と言って出場したとします。ただ、体調は本調子ではなく、いつもの動きができずパスミスも増えてしまった。これが“プレゼンティーズム”。一方、Bくんは「今日は休む」と言って出場しなかった。これが“アブセンティーズム”。どちらもチームの勝ちに貢献できなければ、損失ですよね。
メリット・デメリットと注意点
メリット(理解すると得)
- これらの概念を知ることで、組織運営・健康管理・働き方改革などの幅広い視点から“隠れたリスク”を可視化できます。
- 健康経営・ウェルビーイングといった時流の施策と結びつけやすい。
- 個人としても「出てるけどフルパフォーマンスじゃない」状態を自覚しやすくなり、セルフケアや早めの対策につながります。
デメリット・注意点
- プレゼンティーズムの測定が難しい(働いているだけに、効率低下が見えにくい)。
- 「休まない=良いこと」と風潮になると、無理な出勤→症状悪化→長期欠勤リスクが生じる。
- 健康だけに偏ると、働き方・業務量・職場文化の問題を見落とす可能性も。
猫ちゃんエピソード 🐱
さて、ちょっとリラックスした話も。私の友だちの飼い猫「ミケちゃん」は朝から少し元気がなくて、「遊ぼう」と誘ってもソファでゴロゴロ。飼い主さんは「お腹でも壊したかな?」と心配していたのですが、実はちょっと寒くて毛布から出る気になれなかっただけでした。
これは言うなら「出席してるけど活動効率が落ちてる」…つまり人でいう“プレゼンティーズム”状態。ミケちゃんはちゃんとそこにいるけれど、ベストコンディションではなかった。飼い主さんがひざにミケちゃんを乗せて暖めてあげたら、すぐに毛づくろいを始めて「活動モード」に戻りました。
このエピソードが教えてくれるのは:環境や未調整な体調が、本人の出席・参加はしていても“働き甲斐”や“活動効率”を下げるということ。働く人も、猫も似てる部分あるなあと感じました。
まとめ
今回は、
- アブセンティーズム=欠勤・休業という“目に見える”損失
- プレゼンティーズム=出勤はしているが効率が落ちている“見えにくい”損失
という2つの働き方・健康状態に関わる概念を解説しました。
組織では、これらの両方を理解・対策することで生産性や業績に好影響をもたらす可能性があります。実際、プレゼンティーズムによる損失が欠勤よりも大きいという日本のデータも出ています。
今後の学習指針
- 自分(または自社)が「出勤している・働いている」の外見だけで判断していないか振り返る。
- 最近「働いているが調子悪い」「集中できない」と感じる日がないかチェックする。
- 組織としては、健康・働き方・職場文化の3方向からアプローチを考える。
- 「健康=コスト」ではなく「健康=資産」という視点を持つ。
少しでも参考になれば嬉しいです。もし「業界別データ」や「具体的な対策プラン」も知りたい場合は、続編としてご紹介しますね。
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投稿者プロフィール
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セイ・コンサルティング・グループ株式会社専務取締役
IT企業向け人材育成研修歴業界歴20年以上
キャリアコンサルタント・産業カウンセラー
アンガーマネジメントファシリテーター、コンサルタント
ハッピーな人生を送る秘訣は「何事も楽しむ!」ことにあり。
一期一会を大切に、そして楽しく笑顔になる研修をミッションに!
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