すべての会社が黒字になることは理論的に可能なのか?

こんにちは。ゆうせいです。

今回は少し不思議で、けれどもとても考えさせられるテーマについてお話しします。

「世の中のすべての会社が黒字になることは、理論的にあり得るのか?」

経済の仕組みをちょっとかじったことがある人でも、この問いは一瞬「うーん……」と考えてしまうかもしれませんね。でも大丈夫。この記事では、誰でも理解できるように、例えを使いながら丁寧に解説していきます。


結論:理論上は難しい、現実ではほぼ不可能

まず結論から言うと、「理論的にすべての会社が黒字になることは非常に難しく、現実ではほぼ不可能」と言えます。

なぜなら、経済というのは「相対的な利益と損失」で動いているからです。


そもそも「黒字」とは?

黒字とは、「収益(売上)」が「費用(コスト)」よりも大きい状態のことです。

数式で書くとこうなります。

  • 黒字:収益 − 費用 > 0
  • (読み:しゅうえき ひく ひよう が 0 より おおきい)

逆に、

  • 赤字:収益 − 費用 < 0

経済は「ゼロサムゲーム」ではないが……

まず、「経済=ゼロサムゲーム」というイメージを持っている人もいるかもしれません。ゼロサムゲームとは、誰かが得をすれば、誰かが必ず損をする仕組みのことです。

例えば、カードゲームやポーカーが典型的なゼロサムです。

ですが、実際の経済は必ずしもそうではありません。新しい価値を生み出すこと(=経済成長)によって、全体のパイ(GDP)が大きくなれば、みんなが利益を得ることも理論上は可能です。

じゃあ黒字化できるのでは?と思った方へ

ここが落とし穴です。

たとえパイが大きくなっても、以下のような問題が立ちはだかります。


壁その1:競争による価格下落

すべての会社が黒字になるには、「すべての会社の商品・サービスが十分に売れ、かつ高価格を維持する」必要があります。

でも、現実の市場では常に競争があり、価格は下がりやすい。たとえば、パン屋が3軒あるとしましょう。

1軒だけなら1個300円で売れるパンも、3軒で争えば200円に下がるかもしれません。すると、利益が圧縮されていきます。

つまり、「誰かの黒字は誰かの赤字によって支えられている」ことが多いのです。


壁その2:需要と供給のバランス

たとえ技術があっても、「売る相手(需要)」が足りないと黒字にはなれません。

たとえば、100社のタクシー会社がいて、乗る人が1万人しかいなかったら?

多くの会社が「売上ゼロ」になるのは目に見えています。つまり、黒字化には「買ってくれる人の数」も重要です。


壁その3:会計ルールと税制

たとえすべての企業が売上を立てても、減価償却や税引後利益など、会計処理によって赤字になる場合もあります。

たとえば機械を1億円で買った年は、売上があっても「会計上の赤字」になることもあるんです。


壁その4:補助金や公共事業などの「非市場的要因」

国や自治体が支援している会社(たとえば公共インフラや医療系法人など)は、市場競争をしていなくても黒字を出すことができます

でもその黒字は、別の会社(=納税している企業)の税金によって成り立っています。

つまり、「一部の黒字は、他の誰かの負担で成り立っている」わけです。


図解:全社黒字が難しい理由

こちらの図をご覧ください。

+-------------------+          +-----------------+
| 売上(Revenue)    |  → 支出 → | 費用(Cost)     |
+-------------------+          +-----------------+
        ↑                             ↓
   他社の支出(他社が買う)        他社の収入(売上になる)

= 他社の赤字が、自社の黒字を生む可能性がある

このように、企業間のつながりの中で「利益と損失」は生まれています。


例え話:黒字だけの世界は「全員1位」の運動会?

もしすべての会社が黒字だとしたら、それは「運動会で全員が1位」というような話になります。

一見平和的に見えるかもしれませんが、競争がなければ効率化もイノベーションも生まれません。

経済の仕組みは、ある程度の競争とリスクを前提にしているんですね。


もし全社黒字を目指すなら?

完全に理論上の話ですが、以下のような条件が必要です。

条件内容
経済成長全体のGDPが毎年大きくなり続けること
完全雇用失業者がほぼいない状態
資本と労働の効率配分無駄な企業が存在しない状態
社会主義的な補助赤字企業に対して恒常的に支援がある

でもこのような条件を同時にかつ永続的に成立させることは、現実では非常に難しいと言わざるを得ません。


今後の学びの指針

このテーマに興味を持ったなら、以下の分野を学んでみるとより深く理解できます!

  • マクロ経済学:全体経済の動きやGDP、インフレなどを学びます
  • ミクロ経済学:企業や個人の意思決定、需要と供給について考えます
  • 会計学・財務諸表:黒字や赤字がどう計算されるのかが見えてきます
  • 経営戦略論:なぜ競争が必要なのか、企業はどう戦略を立てるのかを学べます

最後に問いかけてみましょう。

「黒字化」は本当にすべての企業にとって必要なのでしょうか?

実は、「適切な赤字」や「長期的な投資赤字」も、健全な経営には必要なことがあるんです。ぜひ、次は「赤字の価値」についても考えてみてください!

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投稿者プロフィール

山崎講師
山崎講師代表取締役
セイ・コンサルティング・グループ株式会社代表取締役。
岐阜県出身。
2000年創業、2004年会社設立。
IT企業向け人材育成研修歴業界歴20年以上。
すべての無駄を省いた費用対効果の高い「筋肉質」な研修を提供します!
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