エンジニア必見!なぜ1時間は60分?古代バビロニアの「60進数」が教える数の神秘

こんにちは。ゆうせいです。

みなさん、今すぐ手元の時計を見てください。または、スマートフォンの時計アプリを開いてみましょう。1時間は何分ですか?そう、60分ですよね。では、なぜ「100分」で1時間ではないのでしょうか?私たちは普段、お金を数えるときも、距離を測るときも「10進数」を使っているのに、時間だけはなぜか中途半端な「60」という数字に支配されています。

実は、このルールの起源は4000年以上前、メソポタミア文明の「古代バビロニア」にまで遡ります。

新人エンジニアのみなさんは、普段の業務で「2進数」や「16進数」といったコンピュータ特有の数え方に触れているはずです。しかし、太古のエンジニアたちが愛した「60進数」の仕組みを知ることで、データ構造や数値計算に対する視野がぐっと広がりますよ。今日は、そんな古代の知恵を紐解いていきましょう!

そもそも「N進数」ってなに?

まずは基本のおさらいから始めましょう。普段私たちが使っている「10進数」とは、0から9までの10種類の数字を使って数を表現する方法です。9の次は位(くらい)が一つ上がって「10」になりますよね。

一方で、エンジニアの世界で親しみ深い「2進数」は、0と1の2種類しか使いません。1の次はもう位が上がって「10」(これで十進数の2を表す)となります。

では、バビロニア人が使っていた「60進数」はどういうことでしょうか?想像してみてください。ひとつの位に、0から59までの数字が入るのです。そして、59の次になって初めて位が上がり、次の桁へ進みます。

例えば、60進数での「10」は、私たちが知る10と同じですが、60進数での「100」という表記は存在しません。代わりに 1 \times 60 + 0 のような形で表現されることになります。現代の時計で言うなら「1時間0分」が、まさに60進数における「1桁上がった状態」なのです。

なぜ「60」なのか?その秘密は「割り算」にあり

ここで疑問が湧きませんか?「なんでまた、60なんて大きな数を選んだんだ?」と。指で数えるなら10が便利だし、もっと単純な数のほうが楽そうです。

しかし、古代のバビロニア人は非常に合理的でした。彼らが60を選んだ最大の理由、それは「約数(やくすう)」の多さにあります。

約数とは、ある整数を割り切ることができる整数のことです。例を見てみましょう。私たちが大好きな「10」の約数を確認します。

10の約数:1, 2, 5, 10

全部で4つしかありません。もし10個のパンを3人で分けようとすると、

10 \div 3 = 3.333...

となり、綺麗に分けられず喧嘩になってしまいます。

では、「60」はどうでしょうか?一緒に数えてみましょう。

60の約数:1, 2, 3, 4, 5, 6, 10, 12, 15, 20, 30, 60

なんと、12個もあります!

60個のパンなら、2人でも、3人でも、4人でも、5人でも、6人でも、喧嘩せずにぴったり等分できるのです。

3人で分ける場合を見てください。

60 \div 3 = 20

あまりが出ることなく、非常に美しい結果になりますね。

古代において、土地の分配や食料の配給、天体の動きを計算する際、この「割り切れやすさ」は計算コストを下げるための最強のツールでした。コンピュータがなかった時代、割り算の結果が循環小数(無限に続く小数)にならないことは、エンジニアにとって死活問題だったのです。

60進数のメリットとデメリット

この強力なシステムにも、良い点と悪い点があります。現代の視点から整理してみましょう。

メリット:分数の計算が圧倒的に楽

先ほど触れた通り、約数が多いということは、分数を小数に直しやすいことを意味します。

例えば、全体の 1/3 を計算したいとき、10進数では 0.333... となり扱いづらいですが、60進数的な考え方(例えば60分)なら「20分」と整数でスパッと表せます。

角度の計算で円を360度(60の倍数)にするのも同じ理由です。

デメリット:覚えるのが大変すぎる

想像してみてください。小学校で習った「九九」は、9 \times 9 までの81通りでしたよね。

もし私たちが完全な60進数を使っていたら、「五十九・五十九(ごじゅうく・ごじゅうく)」まである掛け算表を暗記しなければなりません。およそ 60 \times 60 で3600通り近い組み合わせを覚えるなんて、考えただけで頭が痛くなりませんか?

バビロニア人は、楔形文字(くさびがたもじ)という記号をうまく組み合わせて表現していましたが、それでも現代の10進数や2進数に比べると、表記や計算のルールは複雑になりがちです。

現代に残るバビロニアの遺産

古代のシステムは滅びてしまったわけではありません。現代のエンジニアリングの現場でも、しっかりとその痕跡は残っています。

  • 時間: 1時間 = 60分、1分 = 60秒
  • 幾何学: 円周 = 360度(60 \times 6)
  • 地理: 緯度や経度の表現

これらはすべて、割り算のしやすさを重視した60進数の名残りです。もし時間を10進数に変えようとすると、「1時間の3分の1」を表現するのに「3.333...時間」や「33.333...分」と言わねばならず、直感的に時間を把握するのが難しくなってしまうでしょう。

今後の学習へのステップ

いかがでしたか?普段何気なく見ている時計の数字には、古代のエンジニアたちの「計算を楽にしたい」「正確に分割したい」という執念と知恵が詰まっていました。

「数はただの記号ではなく、目的に合わせてデザインされたツールである」という視点は、これからプログラミングやシステム設計を行う上で非常に大切です。

次は、コンピュータがなぜ「2進数」や「16進数」を選んだのか、その物理的な理由やメモリ効率の観点から深く学んでみてください。ビット演算の仕組みを理解すると、バビロニア人が60を選んだのと同じくらい、コンピュータにとって2が合理的であることが見えてくるはずです。

それでは、また次の記事でお会いしましょう!

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投稿者プロフィール

山崎講師
山崎講師代表取締役
セイ・コンサルティング・グループ株式会社代表取締役。
岐阜県出身。
2000年創業、2004年会社設立。
IT企業向け人材育成研修歴業界歴20年以上。
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