カント・ヘーゲル・マルクスから学ぶ!エンジニアのための「人間と社会の認識構造」入門

こんにちは。ゆうせいです。

エンジニアとして日々コードを書いていると、こんなことを感じる瞬間はありませんか?

  • ユーザーが思った通りに使ってくれない
  • 理にかなっているはずの機能が、現場では不評
  • 技術的には正しいのに、なぜか採用されない

こうした問題の背景には、「人間の認識の仕組み」や「社会の構造」が深く関わっています。

今回はカント → ヘーゲル → マルクスという3人の哲学者を通じて、「私たちが世界をどう認識し、それが社会とどう関係しているのか」を一緒に学びましょう。


カント:人間の認識にはフィルターがある

● 誰?

18世紀のドイツの哲学者で、近代哲学の大きな転換点を作った人物です。

● どんなことを考えた?

カントは、「私たちは世界をそのまま見ているのではない」と言いました。つまり、人間の頭の中には「認識のメガネ」があるというのです。

キーワード:認識の形式

  • 時間・空間という“枠組み”で、世界をとらえている
  • だから、私たちは「物自体(ものそのもの)」を直接知ることはできない

エンジニア的に言うと…

ユーザーがUIを通して見ている世界 ≠ 実際のシステム内部

たとえば、あなたが作ったアルゴリズムがいかに優秀でも、ユーザーの目に「便利」と映らなければ意味がないのです。

例え話:

ARアプリを作ったことがあるとします。カメラが捉えた映像に情報を重ねる――それが人間の認識の構造に似ています。カントは、「人はいつもフィルター越しに世界を見ている」と言っているんです。


ヘーゲル:すべては対立しながら発展していく

● 誰?

カントの思想を受け継ぎながら、それを大きく発展させた19世紀のドイツの哲学者です。

● 何を考えた?

ヘーゲルは、世界のすべては「矛盾をはらみながら成長する」と考えました。

有名な構造:「弁証法(べんしょうほう)」

テーゼ(主張)→アンチテーゼ(反対)→ジンテーゼ(統合)テーゼ(主張) → アンチテーゼ(反対) → ジンテーゼ(統合)

日本語にすると:

ある立場(肯定) → それに反対する立場 → 両者を統合した新たな立場

エンジニア的に言うと…

  • A案(MVC)とB案(MVVM)を比較して、C案(新しい設計思想)に昇華させる
  • 技術選定で、ライバル技術の長所を取り入れて独自のスタイルを作る

実践例:

あなたがある社内ツールをリファクタリングしようとしたとします。

  • 現状(テーゼ):現行のシンプルな構成
  • 課題(アンチテーゼ):スケーラビリティに欠ける
  • 解決(ジンテーゼ):分散設計を部分導入した新アーキテクチャ

ヘーゲルの考え方は、対立を単なる「どっちが正しいか」ではなく、「どう統合するか」と考える姿勢につながります。


マルクス:社会構造が認識と行動を決める

● 誰?

ヘーゲルの哲学を土台にしつつ、それを現実の経済と社会に適用した19世紀の思想家です。

● 何を考えた?

マルクスは、「意識が社会を作るのではない。社会構造が人の意識を決める」と考えました。

キーワード:下部構造と上部構造

構造内容
下部構造経済・労働・生産手段などIT企業のビジネスモデル
上部構造文化・思想・法律など働き方・開発スタイル・価値観

エンジニア的に言うと…

  • 「アジャイル文化」や「OSSの精神」も、その開発環境や経済構造によって生まれている
  • 組織の設計思想は、その企業のビジネス構造から強く影響を受けている

例え話:

あなたが「いいプロダクトを作りたい」と思っても、チームが受託開発で納期に縛られていれば、理想は実現できないかもしれません。

つまり、マルクスはこう言っているのです:

あなたの“思考”や“理想”は、それが置かれている社会や構造と切り離せない。


図で整理:3人の考えのつながり

[カント]───「人はそのまま世界を見られない」
     ↓
[ヘーゲル]───「世界は対立しながら進化する」
     ↓
[マルクス]───「社会の構造が思考を決めている」

そしてこれらは、こうも読み替えられます。

哲学者キーワードエンジニア的応用例
カント認識フィルターUX設計、ユーザー視点の仮説立て
ヘーゲル矛盾と統合技術選定、設計パターンの昇華
マルクス社会と構造組織設計、働き方、プロジェクト戦略

エンジニアにとっての哲学的実践とは?

  • 見えているものの背後を疑う(カント)
  • 対立を受け入れ、乗り越える方法を考える(ヘーゲル)
  • システムを社会構造の一部として理解する(マルクス)

たとえば、プロダクト開発がうまく進まないとき、「技術の問題」ではなく「構造の問題」かもしれないと気づくこと。これはまさに、哲学の力です。


今後の学習の指針

  • カントの『純粋理性批判』では難しいので、入門書や図解で「認識の構造」をざっくり理解する
  • ヘーゲルは『精神現象学』のダイジェストや、弁証法の図解から入るとわかりやすい
  • マルクスは『資本論』よりも『経済学・哲学草稿』などで思想の核を知るのが先

哲学を通じて、技術と社会の“つながり”を見抜く目を持ちましょう!

次は「3. ニーチェ→ハイデガー→サルトルで学ぶ存在と自由」について、深く掘り下げてみましょう!

では、また次のテーマでお会いしましょう!

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投稿者プロフィール

山崎講師
山崎講師代表取締役
セイ・コンサルティング・グループ株式会社代表取締役。
岐阜県出身。
2000年創業、2004年会社設立。
IT企業向け人材育成研修歴業界歴20年以上。
すべての無駄を省いた費用対効果の高い「筋肉質」な研修を提供します!
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