ソクラテス・プラトン・アリストテレスから学ぶ「問いの立て方」──考えるエンジニアになるための第一歩

こんにちは。ゆうせいです。

あなたは普段、どんなふうにコードを書いていますか?

仕様をそのまま実装しているだけかもしれません。でも、「なぜこの仕様なのか」「この方法が本当にベストなのか」と考えたことはありますか?

この「問いを立てる力」こそが、古代ギリシャ哲学から学べる最大の教訓です。今回は、ソクラテス → プラトン → アリストテレスの三人を通じて、本質的な問題に向き合う力を育てていきましょう。


ソクラテス:無知を認めるところから始めよう

● 誰?

紀元前5世紀ごろのアテネの哲学者で、文字を残していません。弟子のプラトンによってその思想が伝えられました。

● 何をした?

ソクラテスは「対話」を通じて人に問いかけ、「あなたは本当にそれを知っているのか?」と掘り下げていきました。

有名な言葉

「私は自分が何も知らないことを知っている」

これが無知の知(むちのち)です。

エンジニアへの教訓

  • フレームワークの使い方を知っている=本当にその仕組みを理解している、とは限らない
  • コードレビューで「なんとなく」ではなく、「なぜそうするのか?」を説明できるようになろう

例え話:

あなたがルーターの設定をしていて「これが正しい方法です」と言ったとします。そこでソクラテスは聞きます。

「なぜそれが正しいと思うのですか?根拠は何ですか?」

このように、自分の考えに対してどこまでも問いを重ねていくのが、ソクラテス式の思考法です。


プラトン:目に見えない理想を考える力

● 誰?

ソクラテスの弟子で、「イデア論」を提唱した古代哲学の代表的な存在です。

● 何を考えた?

プラトンは、「この世界には“本物”と“見せかけ”がある」と言いました。そして、「本物(イデア)を知ろうとしなければ、正しい判断はできない」と主張しました。

たとえば…

あなたが「良いUIデザイン」と思っているもの、それは本当に「良い」のでしょうか? それとも、ただ慣れているだけ?

エンジニアへの教訓

  • 設計の背後にある「理想のモデル(イデア)」を思い描こう
  • 現実のコードは常に理想とのギャップを持つ。それを埋めようと努力するのが改善。

アリストテレス:現実の中で原理を見つけ出す

● 誰?

プラトンの弟子で、観察や経験を重視した哲学者です。論理学や自然科学の基礎も築きました。

● 何を考えた?

「すべての物事には目的(テロス)がある」と考えました。そして、それを理解するには原因(アイティア)を探ることが必要だとしました。

四原因説(しげんいんせつ)

原因の種類内容エンジニア的解釈
質料因(しつりょういん)材料使っている言語・ライブラリ
形相因(けいそういん)形や構造アーキテクチャ・設計図
作動因(さどういん)作る働き実装者・開発プロセス
目的因(もくてきいん)目的プロダクトの価値・狙い

たとえば…

「なぜこのAPIはこの構造なのか?」と考えるとき、アリストテレスの四原因を使って分解できます。


三人を通じて身につけたい「問いの型」

哲学者問いの出発点何を目指すかエンジニア的行動
ソクラテス自分の無知問いを深める「なぜ」を5回繰り返す
プラトン見えない理想理念の探究設計の理想形を持つ
アリストテレス現実の構造原因と目的の分析システムを分解して理解する

「問いを立てる力」は、すべての土台になる

「今のやり方に疑問を持てるか?」「本当にこの仕様が最適なのか?」と考えることで、より良い設計・より良いプロダクトにつながります。

エンジニアは常に手を動かすだけでなく、問い続ける知性が必要です。


今後の学習の指針

  • ソクラテスの対話法を意識して、日常の会話でも「なぜ?」「それって本当?」と聞く習慣をつけよう
  • プラトンの『国家』や『饗宴』などの対話篇から、理想を言語化する力を学ぼう
  • アリストテレスの『形而上学』や『ニコマコス倫理学』で、目的と因果の分析を訓練しよう

そして何より、「哲学って面白い!」と感じたら大成功です。

次は「2. カント→ヘーゲル→マルクスで学ぶ人間と社会の認識構造」について一緒に学びましょう!

では、また次のテーマでお会いしましょう!

私たちセイ・コンサルティング・グループでは、様々な学びを提供しております。
IT企業向け新人研修のおすすめ
おすすめの研修内容

投稿者プロフィール

山崎講師
山崎講師代表取締役
セイ・コンサルティング・グループ株式会社代表取締役。
岐阜県出身。
2000年創業、2004年会社設立。
IT企業向け人材育成研修歴業界歴20年以上。
すべての無駄を省いた費用対効果の高い「筋肉質」な研修を提供します!
この記事に間違い等ありましたらぜひお知らせください。