マージソートはなぜ速い?新人エンジニアにもわかるやさしい解説

こんにちは。ゆうせいです。

今回は、ソート(並び替え)アルゴリズムの中でも「安定して速い」と言われているマージソート(Merge Sort)について、なぜそれほど効率的なのか、仕組みや特徴をわかりやすく解説します。

プログラミングを学び始めたばかりの方でも理解できるように、丁寧に、そして例えも交えて説明していきますね。


マージソートって何?

マージソートは「分割統治法(ぶんかつとうちほう)」という考え方をベースにしたソート方法です。

分割統治法とは、問題を小さく分けて、個別に解決してからまとめるというアプローチです。簡単に言えば、「いったんバラして整理してから、きれいにまとめ直す」という方法なんですね。

マージソートは「テストの答案を点数順に並べる作業」に似ています。まずクラスを半分ずつに分けて、それぞれで答案を点数順に並べます。その後、2つの並び済みのリストを見比べながら、点数の低いほうから順番に1つのリストへ統合します。最初に小さなまとまりで整理しておくことで、最後に全体をスムーズにまとめられるのが特徴です。段階的に統合するため、どんな順番でも安定して効率よく整理できます。


どうやって並び替えるの?

マージソートの基本的な流れはこの3つです。

  1. 配列(数字の並び)を真ん中で半分に分ける
  2. また半分に分ける…を繰り返して、1個になるまで分割する
  3. 小さい順に並べ直しながら、再び一つにマージ(統合)していく

ちょっとイメージしにくいですよね。では、実際に数字を使って見てみましょう。

例:[8, 4, 5, 2, 9, 1, 7, 3]

これをマージソートで処理すると…

Step 1: [8, 4, 5, 2]     [9, 1, 7, 3]
Step 2: [8, 4] [5, 2]    [9, 1] [7, 3]
Step 3: [8] [4] [5] [2]  [9] [1] [7] [3]
Step 4: [4, 8] [2, 5]    [1, 9] [3, 7]
Step 5: [2, 4, 5, 8]     [1, 3, 7, 9]
Step 6: [1, 2, 3, 4, 5, 7, 8, 9]

最後にはしっかりと昇順(小さい順)に並び替えられていますね。


速さの理由①:分ける作業が早い

データを半分に分けていく作業は、とても効率的です。

なぜなら、データ数が2倍になるたびに必要な分割回数は1回しか増えないからです。これを数学的に表すと「log n(ログ・エヌ)」と呼ばれます。

たとえば、8個のデータなら3回で1個ずつに分けられます。
(8 → 4 → 2 → 1)

つまり、分割にかかる時間は log n に比例して増えるということなんですね。


速さの理由②:マージが効率的

分割されたデータを元に戻す「マージ(統合)」の操作も、実はとても効率的です。

マージする対象はすでに小さい順に並んでいるので、先頭同士を比べて、小さい方を取り出すだけでよいのです。

この処理は1つのデータにつき1回行えば済むので、全体ではn(データ数)に比例する時間で終わります。


時間の合計:n × log n

マージソートにかかる全体の時間は、

分割:log n 回
マージ:各回で n 回分

これをまとめると、 O(nlog⁡n)O(n \log n)

(オー・エヌ・ログ・エヌ)

日本語にすれば、「データの個数 × 分割の段階数」です。

この時間計算量は、非常に優秀です。どんな並び方のデータでも、常に安定して速いというのがマージソートの強みです。


他のソートと比べてみよう

ソートの種類平均的な速さ最悪の速さ特徴
バブルソートO(n²)O(n²)非常に遅い、初心者向け
選択ソートO(n²)O(n²)単純な構造だけど非効率
クイックソートO(n log n)O(n²)速いが運に左右される
マージソートO(n log n)O(n log n)安定して速く、順番も保てる

マージソートはどんなときに使う?

次のような場面に向いています。

  • ソート結果で同じ値の順番を保ちたい(安定ソート
  • データ数が多くても遅くならない処理が必要なとき
  • 再帰処理を使っても問題ない環境

一方で、配列のコピーを繰り返すためメモリの使用量が増えるのが弱点です。


たとえ話:トーナメント方式

マージソートをイメージしやすくするために、例え話をしてみましょう。

たとえば、8人のかけっこ大会があったとします。

1回戦:2人ずつ走って、速い方が勝ち残る
2回戦:勝ち残り同士でまた走る
決勝戦:最後の2人で競争!

こうして最終順位が決まっていく…この流れがまさにマージソートそのものなんです。

1対1で比べる → 勝った方が次に進む → 最後に順位が確定する


マージソートの長所と短所

メリット

  • ソート結果が安定する(同じ値の順番が保たれる)
  • 常に速い(最悪でも O(n log n))
  • 理解しやすく、学習に適している

デメリット

  • メモリ使用量が多い(別の配列を作る必要がある)
  • 再帰が深くなるとスタックオーバーフローの危険がある

まとめ:マージソートは「コツコツ型の優等生」

  • 小さな問題に分けて、確実に整理していく
  • 分割もマージも効率が良い
  • 安定していて、どんなデータでも速い
  • ただし、メモリにはやや不利

堅実で真面目な印象のアルゴリズムです。


今後の学習のステップ

マージソートを理解できたら、次は以下のようなことにもチャレンジしてみてください。

  • クイックソートとの違いを体感する
  • 再帰処理(recursive function)の仕組みを深く学ぶ
  • イテレーティブ版(再帰なし)のマージソートを実装してみる
  • 分割統治法を使った他のアルゴリズム(例:二分探索)を学ぶ

一つひとつステップアップしていけば、きっとアルゴリズムに対する理解が深まります。

楽しみながら、着実に身につけていきましょう!

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投稿者プロフィール

山崎講師
山崎講師代表取締役
セイ・コンサルティング・グループ株式会社代表取締役。
岐阜県出身。
2000年創業、2004年会社設立。
IT企業向け人材育成研修歴業界歴20年以上。
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