シェルソートはなぜ速い?新人エンジニアでもわかるように徹底解説!

こんにちは。ゆうせいです。

今回は、「シェルソート(Shell Sort)」について解説していきます。

名前を聞いたことはあっても、「どんな仕組みなの?」「なぜ速いの?」と疑問に思っている方も多いのではないでしょうか。バブルソートや挿入ソートと比べてちょっと見慣れないけれど、実はとても面白いアルゴリズムなんです。

初心者の方にもわかるように、図解や例え話を交えながら、ゆっくり丁寧に説明していきます。


シェルソートとは?

シェルソートは、挿入ソート(Insertion Sort)を改良したソートアルゴリズムです。1959年にドナルド・シェル(Donald Shell)によって考案されました。

挿入ソートは、近くの要素を比較して入れ替える仕組みのため、すでにほとんど整っているデータにはとても速く動きます。でも、バラバラなデータが多いと時間がかかります。

そこで、シェルソートでは「離れた位置にある要素同士を先に並び替えてしまおう!」という工夫を加えます。

シェルソートは「引っ越しの荷造り」に似ています。最初に部屋ごとにざっくりと不要なものを捨てて、次に箱ごとに整理し、最後に段ボールの中を丁寧に整えるような流れです。最初に大雑把な整理をすることで、後の細かい作業がスムーズになる点が共通しています。いきなり小さなものを一つずつ整理するより、段階的に効率よく進められるのが特徴です。


シェルソートの基本的な考え方

通常の挿入ソートでは、隣り合う要素を一つずつ比較して並べますが、シェルソートでは、最初にもっと離れた距離の要素をグループ化し、それぞれを並び替えていきます。

このときに使う「間隔」を間引き(ギャップ)と呼びます。

最初は大きな間隔でグループ化 → 並び替え
次にその間隔を小さく → また並び替え
最後に間隔を1にして、通常の挿入ソートで仕上げ

このようにして、徐々にデータを整えていくのがシェルソートです。


例を使って流れを見てみよう

以下のような配列があったとします。

[8, 5, 3, 7, 6, 2, 1, 4]

これをシェルソートで処理する場合、まずは「間隔4」でグループ化して並べ替えます。

1回目(間隔4でのグループ)

[8, 6], [5, 2], [3, 1], [7, 4]
⇒ それぞれのペアで挿入ソート

グループ1:インデックス 0 と 4 → [8, 6]

グループ2:インデックス 1 と 5 → [5, 2]

グループ3:インデックス 2 と 6 → [3, 1]

グループ4:インデックス 3 と 7 → [7, 4]

このときの「それぞれのペアでソート」とは、この各グループの中で、通常の挿入ソートを行います。

グループ1: [8, 6]
8 と 6 を比較

6 の方が小さいので、入れ替える → [6, 8]

この結果、インデックス0と4の位置にそれぞれ 6, 8 が入ります。

グループ2: [5, 2]
2 の方が小さいので、入れ替える → [2, 5]

インデックス1と5がそれぞれ 2, 5 に

グループ3: [3, 1]
1 の方が小さい → 入れ替える → [1, 3]

グループ4: [7, 4]
4 の方が小さい → 入れ替える → [4, 7]

⇒ ソート後 ⇒ [6, 2, 1, 4, 8, 5, 3, 7]

2回目(間隔2でのグループ)

[6, 1, 3, 7], [2, 4, 5, 8]

⇒ ソート後 ⇒ [1, 2, 3, 4, 6, 5, 7, 8]

3回目(間隔1でのグループ = 通常の挿入ソート)

最終調整 ⇒ [1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8]

途中でざっくり並べておいたおかげで、最後の調整がとても楽になっています。


どこが速いのか?

ポイントは「遠く離れた要素の入れ替えができること」です。

挿入ソートでは、後ろの小さい数字を先頭に持ってくるには、たくさんの入れ替えをしないといけません。でも、シェルソートでは離れた場所同士を比べられるため、大きく順序を改善できます。

これにより、最初のうちに「全体をざっくり整える」ことができるので、最終段階の処理が速くなるというわけです。


時間計算量はどうなる?

シェルソートの時間計算量は、選ぶ間隔(ギャップ)の方法によって変わります。

一例として、よく使われる Hibbardの間隔 を使ったときの平均時間計算量は、

O(n^1.5)

(エヌの1.5乗)

最悪の場合はもう少し遅くなりますが、それでも単純な挿入ソートやバブルソートよりはずっと速いです。


バブルソート・挿入ソートと比較してみよう

ソート方法平均時間計算量特徴
バブルソートO(n²)遅い、理解しやすい
挿入ソートO(n²)整ったデータには速い
シェルソートO(n^1.5)前後挿入ソートを改良、実用的
マージソートO(n log n)安定して高速
クイックソートO(n log n)非常に高速、ただし不安定なことも

たとえるなら「大掃除の効率化」

シェルソートは、大掃除をする時に「まずは部屋ごとにザックリ片付けて、あとで細かい掃除をする」ようなイメージです。

いきなり小さいゴミを一つずつ拾っていくより、まずは大きな物をどかしてから最後に細部を整える方が早く終わりますよね?

これがまさに、シェルソートの発想なのです。


シェルソートのメリットとデメリット

メリット

  • 実装が簡単で、かつ効率的
  • 少ないメモリで動作する(インプレースソート)
  • データがある程度整っているときには非常に速い

デメリット

  • 最良の間隔(ギャップ)を選ぶのが難しい
  • 安定ソートではない(同じ値の順序が保証されない)
  • 計算量の理論的な解析が複雑

まとめ:シェルソートは「一見地味だけど、意外と実力派」

  • 挿入ソートを進化させたソート
  • 離れた位置の要素を先に整理できる
  • 平均的に速く、実用性が高い
  • ギャップの選び方によって性能が変わる

シンプルながら、データの規模によっては十分な性能を発揮するアルゴリズムです。


次に学ぶべきこと

シェルソートのしくみを理解できたら、次はこんなことを学んでみるとよいでしょう。

  • クイックソートやマージソートとの比較
  • ギャップの最適な選び方(Sedgewick間隔など)
  • 安定ソートと非安定ソートの違い
  • ソートアルゴリズム全体の性能比較と選び方

アルゴリズムの幅を広げることで、より適切な選択ができるようになります。学習のペースは人それぞれなので、焦らずじっくり進めていきましょう。

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投稿者プロフィール

山崎講師
山崎講師代表取締役
セイ・コンサルティング・グループ株式会社代表取締役。
岐阜県出身。
2000年創業、2004年会社設立。
IT企業向け人材育成研修歴業界歴20年以上。
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