集合記号「⊂」「∪」「∈」「∅」はどこから来た? ルーツとエピソードから学ぶ“集合の記号”の歴史

こんにちは。ゆうせいです。

今回のテーマは、数学でよく出てくる**「集合」の記号**たちです。
あなたも学校で、「A⊂B」や「x∈A」といった記号に出会ったことがありますよね。

でも、その記号がどうしてその形なのか?
なぜ「∅」は空集合なのか?
そんなふうに由来を気にしたことはありますか?

今回は、「集合」を表す記号の成り立ちとその背後にある歴史やエピソードをたっぷりご紹介します。記号の意味だけでなく、誰が最初に使ったのか?なぜその形なのか?を知ることで、もっと数学を身近に感じられるようになりますよ。


集合って何だっけ?

まず前提として、「集合」とは何か?を簡単に整理しておきましょう。

数学における集合とは、

「ある共通の性質を持つものの集まり」のこと。

たとえば、偶数の集合、動物の集合、好きな映画の集合…なんでも「共通性」を軸に集めれば、それは数学的な集合になります。


「⊂」と「⊃」はどこから来た?

H2:A⊂B の意味と由来

記号「⊂」は、「AはBの部分集合である」という意味。
英語では「A is a subset of B」や「A is included in B」と言います。

この「⊂」の形、よく見ると「<」に似ていませんか?
実は、この形は昔「A<B」と書かれていた名残なのです!

H3:いつ、誰が使い始めた?

  • 最も古い使用例は、リヒャルト・デデキントの1872年の著作。
  • その後、エルンスト・シュレーダーが1890年の論文で明確に「⊂」を集合記号として導入。
  • フランスの数学者ジョセフ・ゲルゴンヌは1817年に「C」や「⊃」を使っていたという記録も。

つまり、「⊂」と「⊃」は、不等号と文字のC(containの頭文字)から生まれた記号なんですね。

H3:「⊃」はその逆

「A⊃B」は「AはBを含む」、つまり「Aが大きくてBを中に持っている」状態。

このように、「⊂」と「⊃」は双方向の視点で使われるのです。


「⊆」「⊇」「⊊」「⊋」もある?

もちろんです!

記号意味
「AはBに含まれる」(AとBが等しい場合も含む)
「AはBの真部分集合(A≠B)」
「AはBを含む」(B⊆Aと同じ)
「AはBの真上位集合」

「∈」と「∋」の記号の意味と背景

H2:x∈A の意味とルーツ

「x∈A」は、「xは集合Aの要素である」という意味。

実はこれ、ギリシャ文字の「ε(エプシロン)」に由来していて、ラテン語で「est(…である)」の略とされていました。

H3:誰が使ったの?

  • 1889年:ジュゼッペ・ペアノが記号「ε」を導入(uncial体と呼ばれる書体を使用)
  • 1903年:バートランド・ラッセルが著書『Principles of Mathematics』で定型化された「∈」を使用

つまり、「∈」は「“属する”という関係性をεで表した」記号なのです。

H3:逆向きの「∋」もある!

「A∋x」は「Aがxを含む」という意味ですが、意味は「x∈A」と同じ。
順番の違いだけで、どちらを使ってもOKです。

否定形もある!

記号意味
「xはAに属さない」
「Aはxを含まない」

これらは、1939年に数学者集団「ニコラ・ブルバキ」によって導入されました。


「∩」「∪」はどうしてこの形?

H2:交差と合併の記号の由来

  • 「A∩B」:AとBの共通部分(積集合)
  • 「A∪B」:AとBの合わせた集合(和集合)

これらは、1888年にペアノが幾何学の論文で使ったのが初出とされています。

H3:実は「∪」と「∩」は“文字”だった!

  • 「∪」は「union(合併)」の頭文字「U」から。
  • 「∩」はその逆向きで、形のバランスから使われたとされます。

これらの記号、実は「カップ(cup)」と「キャップ(cap)」とも呼ばれ、
ソフトウェアで変換するときに「cup」「cap」と入力すれば出てくることもあります!


「∅(空集合)」はなぜその形?

H2:「∅」=要素がひとつもない集合

「∅」は、空集合(何も要素を含まない集合)を表します。
これも、ニコラ・ブルバキが1939年に導入しました。

H3:形の由来は「ノルウェー語のØ」!

ブルバキの中心人物だったアンドレ・ヴェイユが、「∅」はノルウェー語のアルファベット「Ø」に由来すると語っています。

間違えやすい記号もある!

  • 「φ」:ギリシャ文字 phi(似てるけど別物)
  • 「0/(スラッシュゼロ)」:タイプライター時代に代用されたもの

その他の集合記号もある!

記号意味
AcAの補集合(全体集合Uに対してA以外の要素)
A+BAとBの直和集合(A∩B=∅ の場合)
A\B または A-BAの中でBに入らない要素の集合(差集合)
AΔB対称差:AまたはBのどちらかにだけ含まれる要素の集合

H3:濃度(|A|)も忘れずに

「|A|」は、集合Aに含まれる要素の個数、つまり濃度(カーディナリティ)を表します。
たとえば、A = {1, 2, 3} のとき、|A| = 3 となります。


まとめ:集合記号は「言語」として生まれた

今回のテーマでは、「集合」という抽象的な概念を表すために、
数学者たちが試行錯誤して作り出した記号たちをご紹介しました。

特に印象的なのは、

  • 多くの記号が「英単語の頭文字」に由来していたり
  • 書きやすさや視覚的なわかりやすさを意識していたこと

集合記号はただのマークではなく、意味の詰まった“ことば”なのです。

参考文献

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投稿者プロフィール

山崎講師
山崎講師代表取締役
セイ・コンサルティング・グループ株式会社代表取締役。
岐阜県出身。
2000年創業、2004年会社設立。
IT企業向け人材育成研修歴業界歴20年以上。
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