非正規化とは?メリット・デメリット

こんにちは。ゆうせいです。
今回は、データベース設計における「非正規化(ひせいきか)」という考え方について、わかりやすく丁寧に解説していきます。
「正規化(せいきか)」という言葉は聞いたことがあっても、「非正規化って、つまり正規化しないってこと?」「何のためにわざと整理を崩すの?」と思ったことはありませんか?
この記事では、
- 非正規化とはどんな設計手法か
- 正規化との違い
- 非正規化のメリットとデメリット
- 非正規化を使うべき具体的な場面
- 特に重要な「履歴を残す」という観点
を、初心者でも理解できるように例えや図を交えて解説していきます!
非正規化とは?基本のキを理解しよう
あえて“整えない”ことで得られる効率
非正規化とは、正規化されたデータ構造の一部または全部を、意図的に緩めて冗長性を持たせる設計手法です。
「冗長性」とは、同じ情報を何度も保存してしまう状態のことを言います。
通常は避けたいものですが、あえて冗長にすることで得られる利点があるんです。
正規化との違いをざっくり比較
項目 | 正規化 | 非正規化 |
---|---|---|
構造 | 情報を分割して整理 | 情報をまとめて1つに記録 |
処理速度 | 遅くなることがある(JOINが必要) | 速くなることが多い |
管理 | 一元管理で保守しやすい | 更新ミスのリスクが増える |
履歴保持 | 困難(上書きされる) | 容易(当時の状態をそのまま残せる) |
非正規化の実例を見てみよう
正規化された注文データ
注文ID | 顧客ID |
---|---|
1 | 101 |
顧客ID | 顧客名 | メールアドレス |
---|---|---|
101 | 山田太郎 | yamada@example.com |
注文ID | 商品名 | 単価 |
---|---|---|
1 | ノートパソコン | 80000 |
1 | マウス | 2000 |
非正規化された注文データ(履歴付き)
注文ID | 顧客名 | 顧客メールアドレス | 商品1 | 単価1 | 商品2 | 単価2 | 注文日 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 山田太郎 | yamada@example.com | ノートパソコン | 80000 | マウス | 2000 | 2024-06-01 |
このように、顧客名やメールアドレス、注文時の単価までも「注文テーブル」に直接書き込むことで、「そのときの事実」を一発で確認できるようになります。
非正規化のメリットとは?
① 処理速度が速くなる
テーブルを分割しなくてよいため、JOIN(結合)処理が不要になり、検索が速くなります。
特にレポート出力や集計処理の多いシステムで効果的です。
② 履歴を残しやすくなる
ここがこの記事の重要ポイントです!
非正規化されたデータでは、情報がその時点のまま保存されるので、たとえば以下のようなことが可能になります。
- 「当時の顧客の連絡先はどれだったか?」
- 「注文時の価格はいくらだったか?」
- 「今とは違うが、過去にはこうだった」
これらを上書きせずに残すことができるのです。
なぜ履歴が必要なのか?
こんなときに役立ちます!
- 顧客がメールアドレスを変更したときでも、過去の連絡先情報が必要になる場合
- 商品の単価が変動している場合、注文当時の価格で請求したいとき
- 会計・監査などで正確な証拠として過去の記録が求められる場面
つまり、非正規化は“レシートのコピーをすべて残しておく”設計と考えるとイメージしやすいです。
正規化では履歴を残せないの?
原則的には「履歴テーブル」を別途用意することで履歴管理も可能です。
しかし非正規化であれば、履歴と実データが一体化しており、シンプルに確認しやすいという利点があります。
非正規化のデメリットとは?
もちろん、良いことばかりではありません。注意点も押さえておきましょう。
デメリット | 内容 |
---|---|
データが冗長になる | 同じ情報が何度も保存され、無駄なデータ量が増える |
更新が煩雑になる | 顧客のメールアドレス変更時、複数のテーブルを手動で更新する必要がある |
整合性を保ちにくい | 情報に矛盾が起きやすく、バグやミスの原因となり得る |
例え話で理解する非正規化
正規化は「引き出しで整理された文房具」
必要なときに取り出せるけれど、いくつもの引き出しを開けなければならない。
「文房具はここ」「書類はあそこ」——整理整頓されている状態です。
非正規化は「机の上に全部広げた状態」
すぐに使えるが、ごちゃごちゃしやすい。
「見つけやすい」が「散らかる」のトレードオフですね。
非正規化を使うべき場面とは?
次のようなケースでは、非正規化の効果が特に発揮されます。
- 高速な検索が求められるデータ分析・BIツール
- 注文履歴や請求記録のように“その時点の事実”を残したい業務
- アクセスログなど、更新よりも記録が重視されるデータ
数式でイメージする非正規化
正規化された場合のSQL例:
SELECT 注文.注文ID, 顧客.メールアドレス
FROM 注文
JOIN 顧客 ON 注文.顧客ID = 顧客.顧客ID;
これは注文と顧客を結合(JOIN)して、情報を取得する操作です。
(読み:注文テーブルと顧客テーブルを「結合」してメールアドレスを表示)
非正規化された場合は:
SELECT メールアドレス FROM 注文 WHERE 注文ID = 1;
JOIN不要でそのまま取得可能です。
読み込みが圧倒的に速くなります。
まとめ:非正規化は「目的に応じた柔軟な武器」
非正規化は、単にデータを「雑に扱う」ものではありません。
処理の高速化、履歴の保持といった目的があるからこそ、選ばれる設計なのです。
ただし、使いどころを間違えると、保守が困難になったり、バグの温床にもなります。
大切なのは、正規化と非正規化のバランス感覚です。
今後の学習のステップ
ここまで読んで「非正規化って奥が深いな」と感じた方は、次のテーマに進んでみてください!
- 正規化の3つの基本形(第1〜第3正規形)
- 履歴テーブルや監査ログの実装パターン
- インデックス最適化と検索効率の改善方法
- NoSQLにおける非正規化設計との比較
非正規化は「例外的」な技法ではなく、実務で使われる重要なテクニックのひとつです。
データの「速さ」と「記録性」を両立させたいあなたは、ぜひ非正規化にも精通していきましょう!
セイ・コンサルティング・グループの新人エンジニア研修のメニューへのリンク
投稿者プロフィール

- 代表取締役
-
セイ・コンサルティング・グループ株式会社代表取締役。
岐阜県出身。
2000年創業、2004年会社設立。
IT企業向け人材育成研修歴業界歴20年以上。
すべての無駄を省いた費用対効果の高い「筋肉質」な研修を提供します!
この記事に間違い等ありましたらぜひお知らせください。