AIの進化を解き明かす!モデルコンテキストプロトコル(MCP)とRAGの決定的違いとは?
こんにちは。ゆうせいです。
最近、ニュースやインターネットで「AI」や「大規模言語モデル(LLM)」という言葉を毎日のように見かけますよね。ChatGPTなどがその代表例ですが、これらのAIは、私たちの質問に答えたり、文章を作ってくれたり、本当に賢くて驚かされます。
しかし、そんな賢いAIにも、実は苦手なことがあるんです。例えば、最新の情報を知らなかったり、時々もっともらしいウソをついてしまったり…。
そこで、AIをもっと賢く、もっと正確にするための新しい技術が次々と生まれています。その中でも、最近注目を集めているのが「モデルコンテキストプロトコル(MCP)」と「RAG」という二つの技術です。
「なんだか難しそうな名前…」と感じたかもしれませんね。でも、ご安心ください!
この記事を読み終わる頃には、「なるほど、そういうことか!」と、二つの違いがスッキリ理解できるようになっているはずです。専門用語も出てきますが、一つひとつ丁寧に解説していくので、一緒に学んでいきましょう!
まずは基本から!RAGってなんだろう?
まずは、比較的よく耳にする「RAG(ラグ)」から見ていきましょう。
RAGとは、「Retrieval-Augmented Generation」の略で、日本語にすると「検索拡張生成」となります。
なんだか漢字が並んでいて難しそうですね。でも、やっていることは意外とシンプルなんですよ。
一言で言うと、RAGは「AIが回答を作る前に、専門書で下調べをする仕組み」のことです。
もう少し詳しく説明しますね。
通常のAI(LLM)は、自分がもともと持っている知識だけで質問に答えようとします。しかし、その知識は学習した時点のもので止まっているので、最新の出来事や、非常に専門的な内容には答えられないことがあるのです。
そこでRAGの出番です!
RAGは、質問が来ると、まずその質問に関連する情報を、外部のデータ(例えば、社内マニュアルや、最新のニュース記事が集まったデータベースなど)から探し出してきます。これが「検索(Retrieval)」の部分です。
そして、探し出してきた新鮮な情報を参考資料としてAIに渡し、「この情報を使って回答を作ってね」とお願いするのです。AIは、その参考資料をもとに、より正確で、より新しい情報に基づいた回答を生成(Generation)します。
高校生でもわかる!RAGの例え話
テスト勉強を想像してみてください。
頭の中にある知識だけでテストに挑むのが、普通のAIです。もちろん、もともと勉強していれば高得点が取れますが、習っていない範囲や、忘れてしまった問題は解けませんよね。
一方、RAGは、テスト中に「教科書や参考書を見てもいいよ」と言われているようなものです。
問題(質問)が出されたら、まず教科書(外部データ)をパラパラとめくって、関連するページを探し(検索)、その内容をしっかり読んでから、自分の言葉で答案(回答)を書く(生成)。
どうでしょう?カンニングしながらテストを受けるようなもの、と考えるとイメージしやすいのではないでしょうか。もちろん、AIの場合はルール違反ではありませんよ!
RAGのメリットとデメリット
RAGを使うと、どんないいことがあるのでしょうか?
メリット:
- ハルシネーションを減らせる!:ハルシネーションとは、AIが事実に基づかない、もっともらしい嘘をついてしまう現象のことです。RAGは信頼できる情報源を基に回答を作るので、このハルシネーションを大幅に減らすことができます。
- 最新の情報に対応できる!:AIモデルそのものを再学習させるのは大変ですが、外部データベースを更新するだけなら簡単です。そのため、常に最新の情報に基づいた回答が可能になります。
- 情報の出どころがわかる!:「どの資料を参考にしてこの回答を作りました」ということがわかるので、情報の信頼性を確認しやすくなります。
一方で、少し注意が必要な点もあります。
デメリット:
- 検索の精度が命!:もし、見当違いの参考資料を探してきてしまったら、AIもそれを基にトンチンカンな回答を作ってしまいます。検索の性能が、そのまま回答の質に直結するのです。
- 少し時間がかかることも:検索して、そのあとに生成する、という2つのステップを踏むため、単純に回答するよりも少し応答に時間がかかる場合があります。
新しい概念!MCPってなんだろう?
さて、RAGのイメージが掴めたところで、次はいよいよ「モデルコンテキストプロトコル(MCP)」の登場です。
MCPは、まだRAGほど有名ではないかもしれませんが、AIの未来を考える上でとても重要なキーワードになる可能性を秘めています。
MCPとは、「Model Context Protocol」の略です。日本語にすると「モデルコンテキストプロトコル」となります。
ここで重要なのが「プロトコル」という言葉。プロトコルとは、簡単に言うと「お約束事」や「共通のルール」のことです。例えば、私たちが会話するとき、相手が話し終わってから話す、といった暗黙のルールがありますよね。それも一種のプロトコルです。
つまりMCPとは、「AIが、外部のさまざまな機能(ツール)とスムーズに会話するための共通ルール」のことなのです。
AIは、文章を作るだけでなく、計算したり、検索したり、カレンダーに予定を入れたり、色々なツールを使えたらもっと便利になりますよね?しかし、ツールごとに使い方の作法(APIの仕様など)がバラバラだと、AIは一つひとつ覚えなくてはならず、とても大変です。
そこでMCPは、「ツールを使いたいときは、こういう形式で呼びかけてね」「ツールからの返事は、こういう形式で返すからね」という共通の言語やルールを定めることで、AIと多種多様なツールとの連携を簡単にしよう!という考え方なのです。
高校生でもわかる!MCPの例え話
あなたが国際交流イベントに参加したと想像してください。
会場には、アメリカ、中国、フランス、ブラジルなど、いろいろな国から来た人がいます。それぞれ話す言葉が違いますよね。
もし、あなたがそれぞれの国の言葉を話せなければ、コミュニケーションを取るのはとても難しいです。
しかし、もし「このイベントでは、みんな英語で話しましょう」という共通のルール(プロトコル)があったらどうでしょう?
あなたは英語さえ話せれば、どの国の人とも会話できますよね。
MCPは、この「英語」のような役割を果たします。
AIが、検索ツールや計算ツール、予約ツールといった様々な国の人(外部ツール)と話すための「共通言語」、それがMCPなのです。
MCPのメリットとデメリット
MCPが普及すると、どんな未来が待っているのでしょうか?
メリット:
- AIの能力が無限に広がる!:共通ルールに従うだけで、AIは様々なツールを使いこなせるようになります。これにより、ただ質問に答えるだけでなく、旅行の計画を立てて航空券を予約したり、複雑なデータを分析してグラフを作成したりと、より高度で複雑なタスクを実行できるようになる可能性があります。
- 開発が楽になる!:ツールを作る開発者は、MCPという共通ルールにさえ対応すれば、自分たちのツールを様々なAIに簡単に使ってもらえるようになります。AIごとに連携方法を変える必要がなくなるのです。
一方で、新しい概念ならではの課題もあります。
デメリット:
- まだ発展途上:MCPは比較的新しい考え方のため、まだ「これが世界標準だ!」というものが定まっていません。まさに今、標準化が進んでいる最中です。
- 対応ツールがこれから:共通ルールができたとしても、それに対応してくれるツールが増えなければ意味がありません。これから対応するサービスが増えていくことが期待されています。
RAGとMCP、決定的違いは「目的」にあり!
さて、ここまでRAGとMCPをそれぞれ見てきましたが、二つの違いは見えてきましたか?
ここで一度、両者の決定的な違いを整理しておきましょう。それは「目的」です。
- RAGの目的は「AIの回答の質を高めること」です。外部の正確な知識をAIに与えることで、より賢い回答を引き出すための技術です。
- MCPの目的は「AIの能力を拡張すること」です。AIが外部のツールと連携するための共通ルールを定めることで、AIができることの幅を広げ、開発を効率化するための技術(プロトコル)です。
もう一度、先ほどの例え話で考えてみましょう。
- RAGは「優秀な司書」のような存在です。あなたの質問(知りたいこと)に対して、図書館の中から最も役立つ本(情報)を探してきてくれます。
- MCPは「万能な通訳者」です。あなたが、色々な専門家(外部ツール)と話したいときに間に入って、スムーズにコミュニケーションが取れるように手助けしてくれます。
司書と通訳者、役割が全く違いますよね。RAGとMCPも、それくらい役割が違うのです。
この違いを表にまとめてみました。
項目 | RAG (検索拡張生成) | MCP (モデルコンテキストプロトコル) |
主な目的 | 回答の精度向上、最新情報の反映 | 外部ツールとの連携、AIの能力拡張 |
役割 | 知識の検索と提供 | ツール連携のための共通ルール |
例え | 優秀な司書 | 万能な通訳者 |
焦点 | 「何を」参考にするか(What) | 「どうやって」連携するか(How) |
今後の学習に向けて
ここまで読んでくださり、ありがとうございます!RAGとMCPの違い、ご理解いただけたでしょうか?
最後に、これからAIについてもっと学んでいきたいと考えているあなたへ、今後の学習の指針を少しだけお話しさせてください。
重要なのは、RAGとMCPは「どちらが優れているか」という対立する関係ではない、ということです。むしろ、この二つは組み合わせることで、さらに強力なAIシステムを生み出すことができます。
例えば、MCPという共通ルールを使って、AIが「RAG(検索ツール)」を呼び出す、といったことが考えられます。ユーザーから複雑な質問が来たときに、AIが「これは専門的な知識が必要だな」と判断し、MCPの作法にのっとってRAGシステムに「この件について調べてきて」と依頼する、という流れです。
もし、あなたがAI技術に興味を持ち、何か手を動かしてみたいと思ったら、まずは比較的情報が多く、具体的な仕組みを作りやすい「RAG」から触れてみるのがおすすめです。簡単なRAGのシステムを自分で作ってみることで、「AIに外部知識を与える」という感覚を掴むことができるでしょう。
そして、RAGの理解が深まったら、ぜひMCPのような新しい技術の動向にも目を向けてみてください。AIが今後どのように社会と関わり、その能力を拡張していくのか、その大きな流れが見えてくるはずです。
AIの世界は日進月歩で、新しい技術が次々と生まれています。今日の知識が明日には古くなるかもしれません。しかし、今回学んだような基本的な概念をしっかり押さえておけば、きっと新しい技術もスムーズに理解できるはずです。
ぜひ、これからもAIの世界の探求を楽しんでくださいね!
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投稿者プロフィール
- 代表取締役
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セイ・コンサルティング・グループ株式会社代表取締役。
岐阜県出身。
2000年創業、2004年会社設立。
IT企業向け人材育成研修歴業界歴20年以上。
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