HTML進化論:タグの裏に隠されたWeb技術の歴史を紐解く
こんにちは。ゆうせいです。
今回は、HTMLの基本はだいたいわかっているというあなたに向けて、その裏にある「進化の歴史」をじっくり解説します。
「なぜHTML5で<div>
から<section>
に変わったの?」
「XHTMLってなんだったの?」
そんな疑問を、歴史の流れとともに明らかにしていきましょう。
HTMLの始まり:ハイパーテキストという革命
HTMLの誕生は1991年。ティム・バーナーズ=リーによって、CERN(欧州原子核研究機構)で研究成果の共有手段として考案されました。
当初のHTMLはとてもシンプルで、構造とリンク機能しか持たないものでした。
<h1>Title</h1>
<p>This is a paragraph.</p>
<a href="...">link</a>
この段階ではまだ「装飾」も「レイアウト」も存在せず、目的はただ一つ:
文書を相互にリンクさせ、世界中で共有できるようにすること
HTML 2.0〜3.2:混乱と拡張の時代
HTML 2.0(1995年)
NCSA MosaicやNetscape Navigatorの登場で、Webブラウザ戦争が勃発。
それぞれが独自拡張タグを導入したことで、互換性の問題が噴出。
HTML 2.0では、フォームやリストなどが正式に仕様化され、ようやく「標準」ができはじめました。
HTML 3.2(1997年)
この頃から、見た目をHTMLで制御しようとする動きが加速します。
<font color="red" size="4">赤い文字</font>
<center>中央寄せ</center>
このような「プレゼンテーション寄りのタグ」が急増。
一方で、構造と見た目の分離ができていないため、メンテナンス性は悪化していきます。
HTML 4.01とXHTML:標準化と厳格化の岐路
HTML 4.01(1999年)
ここで登場するのが「構造重視」の考え方。
次のようなポイントが導入されました。
<style>
や<script>
の明確化- CSSによる装飾の推奨
<div>
や<span>
の活用
CSSの普及によって、「見た目はCSS、構造はHTML」と分業する文化が始まります。
XHTML(2000年〜)
W3Cが推し進めたXMLベースのHTML。
タグの終了が必須になり、厳格な構文チェックが必要になりました。
<img src="img.jpg" alt="image" />
ただし、現実のWeb開発ではエラーの多発や互換性問題が起こり、徐々に採用が減っていきます。
HTML5:失敗と混乱を乗り越えたモダンWebの基盤
HTML5登場(草案:2008年、勧告:2014年)
XHTMLの反省を踏まえ、寛容性(エラーハンドリング)を重視して再設計されました。
中心となったのはW3Cではなく、**WHATWG(Web Hypertext Application Technology Working Group)**です。
HTML5の主な革新
意味論的タグ(セマンティック・エレメンツ)
<header>、<nav>、<main>、<article>、<section>、<footer>
これらは、単なる<div>
地獄からの脱却を図るために導入されました。
構造が明確になり、検索エンジンやスクリーンリーダーにも優しい仕様に。
マルチメディア対応
<video src="movie.mp4" controls></video>
<audio src="sound.mp3" controls></audio>
従来はFlashに依存していた音声・動画再生が、ネイティブで可能に。
Flashの終焉を象徴する機能です。
JavaScript連携の強化
<canvas>
による描画- Web Storage API(ローカルストレージ)
- WebSocket、WebRTC、Geolocation API
HTMLはもはや文書マークアップの枠を超え、Webアプリケーションの土台へと進化しました。
歴史から学べるWebの思想の変遷
時代 | キーワード | 背景 |
---|---|---|
1990年代前半 | 文書共有 | テキストベースのリンク中心 |
1990年代後半 | ビジュアル強化 | ブラウザ戦争による装飾合戦 |
2000年代前半 | 厳格化 | XHTMLによる標準化路線 |
2010年代 | アプリ化・セマンティック化 | スマホ対応・PWA対応へ |
なぜこの歴史を知るべきか?
HTMLを単なる「マークアップ言語」としてではなく、「Web技術の設計思想の集大成」として理解することで、次のような知見が得られます。
- なぜ
<b>
よりも<strong>
が推奨されるのか? - なぜ
<table>
でレイアウトを組んではいけないのか? - なぜHTML5以降、
DOCTYPE
があんなに短くなったのか?
すべてに**理由(歴史的文脈)**があるのです。
今後の学習指針
HTMLの歴史を踏まえたうえで、次のステップに進むなら以下がおすすめです。
- セマンティックHTMLの実践的な書き方を学ぶ
- アクセシビリティ(a11y)対応の考え方を身につける
- ARIA属性とHTMLの役割分担に挑戦
- **Web標準とブラウザ仕様(WHATWGのLiving Standard)**を追いかける
- HTMLを軸にPWAやWebComponentsなど現代Web技術へとつなげていく
HTMLは終わった技術ではありません。
むしろ「これからのWeb」を支える土台として、今も進化を続けています。
ぜひ、コードの背後にある“歴史”を感じながら、より深くHTMLに触れてみてください!
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投稿者プロフィール

- 代表取締役
-
セイ・コンサルティング・グループ株式会社代表取締役。
岐阜県出身。
2000年創業、2004年会社設立。
IT企業向け人材育成研修歴業界歴20年以上。
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