Teachable MachineはMobileNetを使っているとのことですが、全く何も学習させなくても画像認識をすることはできますか?
こんにちは。ゆうせいです。
今回は、AIや機械学習に興味がある方から、こんな素朴で、でもとっても本質的な質問をいただきました。
「Teachable MachineはMobileNetを使っているとのことですが、全く何も学習させなくても画像認識をすることはできますか?」
これは素晴らしい質問ですね!結論から言うと、「Teachable Machineの画面上では、あなたが何かを教えないと認識は始まらない。でも、その内部にいるAIは、実はもうたくさんのことを知っている」というのが答えになります。
「どういうこと?」と思いますよね。大丈夫です!このブログを読み終わる頃には、その仕組みがすっきり理解できているはずですよ。
Teachable Machineの中にいる「物知りなAI」
まず、質問にある「MobileNet(モバイルネット)」についてお話しなければなりません。
MobileNetは、Googleが開発した画像認識のためのAIモデルです。これを「AIの脳」だと考えてみてください。そして、この脳は生まれたての赤ちゃんの脳ではありません。いわば、膨大な写真図鑑をすでに学習し終えた、物知りな大人の脳なんです。
具体的には、ImageNet(イメージネット)と呼ばれる、1000種類以上のカテゴリーに分類された100万枚以上の画像データセットでトレーニングされています。犬や猫、車、飛行機、果物など、世の中のありとあらゆる物の特徴をすでに見分ける能力を持っているんですね。
Teachable Machineの役割は「先生」のあなたを助けること
では、Teachable Machineは何をしているのでしょうか?
Teachable Machineは、この物知りなAI(MobileNet)を、あなたがやりたいことに合わせて「再教育」するためのツールです。この技術を専門用語で「転移学習(Transfer Learning)」と呼びます。
例えるなら、こんな感じです。
- MobileNetくん: 世の中のありとあらゆる物の形や色、質感を理解している、とても賢いアシスタント。
- あなた: 「うちの猫の『タマ』と『ポチ』を見分けてほしい」という新しい仕事をMobileNetくんにお願いしたい先生。
- Teachable Machine: MobileNetくんに新しい仕事を覚えてもらうための、非常に分かりやすいマニュアルや教育ツール。
あなたはTeachable Machineというツールを使って、MobileNetくんに「これがタマの写真だよ」「こっちがポチの写真だよ」と、いくつかサンプルを見せてあげるだけです。
すると、MobileNetくんは元々持っている「猫というものの特徴」や「物の違いを見分ける能力」を応用して、「なるほど、この模様がタマで、この耳の形がポチなんですね!」と、あっという間に新しい仕事(タマとポチの判別)を覚えてくれます。
質問への最終的な回答
さて、最初の質問に戻りましょう。
「全く何も学習させなくても画像認識をすることはできますか?」
答えはこうなります。
Teachable Machineの内部にいるMobileNet自体は、すでに犬や猫、リンゴなどを認識する潜在的な能力を持っています。しかし、Teachable Machineというツールの目的は、ユーザーが「何と」「何を」区別したいのかを教えて、あなた専用の画像認識モデルを作ることにあります。
そのため、Teachable Machineの画面を開いて、いきなりカメラにリンゴを写しても、「リンゴです」とは答えてくれません。それは、あなたがまだ「リンゴ」というクラス(分類)を作って、「こういうものがリンゴだよ」と教えてあげていないからです。
つまり、ユーザーの視点から見ると、Teachable Machineで画像認識をさせるには、最低限のクラス作成と画像の学習が必ず必要になる、ということです。
まとめ:賢いAIを、あなた好みに育てるのがTeachable Machine
- Teachable Machineが使っているMobileNetは、もともと非常に賢いAIです。
- このAIは「転移学習」という技術によって、膨大な知識を元に、あなたが教えたい新しいこと(例:「グー」と「パー」の判別など)をすぐに学習できます。
- ただし、Teachable Machineの仕組み上、あなたが「何を認識させたいか」を教える(学習させる)というステップは必須です。
全くのゼロからAIを育てるのは非常に大変な作業ですが、Teachable Machineは、すでに賢いAIを連れてきてくれて、「さあ、この子にあなたのやりたいことを教えてあげてください!」と、一番楽しくてクリエイティブな部分だけを体験させてくれる素晴らしいツールなんですね。
ぜひ、身の回りの色々なものをTeachable Machineに教えて、あなただけのAIを作って遊んでみてください!