【新人エンジニア必見】AI界の宿命のライバル?OpenAIから分かれたAnthropic、その思想と戦略の違いを徹底解説

こんにちは。ゆうせいです。

あなたが今、当たり前のように使っているChatGPT。その開発元であるOpenAIには、かつて志を同じくする仲間たちがいました。しかし、AIが人類にもたらす未来への考え方の違いから、ある日彼らは袂を分かち、新たな会社を立ち上げます。その会社の名前は「Anthropic」。今や、AIアシスタント「Claude」を開発し、OpenAIの最大のライバルとも目される存在です。

まるで映画のような話だと思いませんか?

新人エンジニアのあなたにとって、OpenAIとAnthropicは単なるツール提供会社ではありません。彼らの存在は、「私たちはAIとどう向き合うべきか?」という大きな問いを、私たち一人ひとりに投げかけています。

今回は、もともと一つ屋根の下にいた彼らがなぜ別の道を歩むことになったのか、その背景に触れながら、両社の思想や方向性の違いを深く掘り下げていきましょう。この物語を知ることで、あなたがAIツールを見る目はきっと変わるはずです!

なぜ彼らはOpenAIを去ったのか?「安全」への考え方の違い

すべての始まりは、OpenAIの内部で起こった路線対立でした。

OpenAIの初期の目標は、「全人類に利益をもたらす安全なAGI(汎用人工知能)を作る」というものでした。しかし、GPT-3といった非常に高性能なモデルが開発され、Microsoftからの巨額な出資を受け入れるなど、商業化への動きが加速するにつれて、一部のメンバーが強い懸念を抱き始めます。

その中心にいたのが、後のAnthropic創業者たちです。彼らは、「AIの能力を急激に進化させること」や「商業的な成功」よりも、「AIの安全性を確立すること」を何よりも優先すべきだと考えていました。AIが予測不能な動きをしたり、悪用されたりするリスクを、もっと真剣に考えるべきだと訴えたのです。

しかし、OpenAI全体の方向性は、より速い技術開発とサービス展開へと傾いていきました。この溝は埋めがたく、最終的に彼らはOpenAIを去り、「AIの安全性研究」を企業理念のど真ん中に据えたAnthropicを設立する道を選びました。

つまり、Anthropicの誕生は、OpenAIへのアンチテーゼ(反対命題)そのものだったのです。

AIの“しつけ方”に現れる決別の意志:RLHF vs. Constitutional AI

袂を分かった両社の思想の違いは、AIモデルの「しつけ方」に最も象徴的に現れています。

OpenAIのアプローチ:「人間のフィードバックによる強化学習(RLHF)」

OpenAIは、人間がAIの回答を評価し、「良い」「悪い」を教え込む「RLHF (Reinforcement Learning from Human Feedback)」という手法を主軸に開発を進めてきました。これは、AIをより人間の感覚に近づける上で非常に効果的な方法です。

しかし、Anthropicの創業者たちは、この方法に潜むリスクを懸念しました。評価者の主観やバイアスがAIに色濃く反映されてしまうのではないか?商業的な都合で、AIの応答が特定の方向に誘導されてしまうのではないか?という疑問です。

Anthropicのアンサー:「Constitutional AI(憲法AI)」

そこで、彼らがOpenAIへのアンサーとして生み出したのが、「Constitutional AI(憲法AI)」です。

これは、人間が直接評価するのではなく、まずAIに「他者を傷つけない」「正直である」といった普遍的な原則をまとめた「憲法」を教え込みます。そして、AI自身に、自分の回答がその憲法に違反していないかチェックさせ、自律的に修正させるのです。

このアプローチは、特定の人間や組織の意図が入り込む余地を減らし、より客観的で一貫した倫理観をAIに持たせようという、彼らの強い意志の表れと言えるでしょう。OpenAI時代に感じていた懸念への、直接的な回答なのです。

製品哲学の違い:万能の天才か、信頼の専門家か

この歴史的背景と技術的アプローチの違いは、私たちが使う製品の性格にも色濃く反映されています。

比較項目OpenAI (GPTシリーズ)Anthropic (Claudeシリーズ)
目指す姿革新的で多機能な「万能の天才」安全で信頼できる「誠実な専門家」
開発の優先度新機能の追加、性能向上、多機能化(画像生成など)を重視安全性、倫理、長文処理能力、ハルシネーション(嘘)の抑制を重視
性格の例え刺激的でアイデア豊富なクリエイター。たまに大胆な間違いもする。慎重で思慮深いアシスタント。確信が持てないことは「分かりません」と正直に言う。
背景にある思想まずはすごいAIを作り、その力を全人類の利益のためにコントロールする。AIの振る舞いを予測・制御できる安全な基盤をまず確立することが最優先。

OpenAIが次々と新しい機能(画像生成、Webブラウジングなど)を発表し、AIの可能性を世に問う「攻め」の姿勢を見せる一方、AnthropicはClaudeの長文読解能力を高めたり、企業向けの信頼性の高いサービスに注力したりと、「守り」を固めながら着実に歩を進めているように見えませんか?

新人エンジニアとして、この物語から何を学ぶか

OpenAIとAnthropicの物語は、単なる企業間の競争ではありません。これは、「AIという強大な力を、私たち人間はどうコントロールしていくべきか」という、現代における最も重要なテーマの一つを映し出しています。

この物語を踏まえて、あなたが意識すべきことは以下の通りです。

  1. 技術の背景にある「思想」を読む: なぜこの機能が実装されたのか?なぜこのツールはこういう応答をするのか?その裏にある開発者の思想や歴史的背景を想像することで、ツールの本質的な理解が深まります。
  2. 「安全性」への感度を高める: Anthropicが問いかけるAIの安全性というテーマは、これからのすべてのエンジニアにとって無関係ではありません。あなたが書く一行のコードが、社会にどのような影響を与える可能性があるのか、常に考える視点を持ってください。
  3. あなた自身の「AI観」を持つ: あなたは、AIに何を求めますか?生産性の向上ですか?創造性の爆発ですか?それとも、間違いのない信頼性ですか?OpenAIとAnthropic、どちらのビジョンにより共感するかを考えてみることは、あなた自身のエンジニアとしての軸を定める上で良いきっかけになるでしょう。

AI開発の最前線では、かつての仲間たちが異なる信念を掲げて、日々競い合っています。その競争が、技術をさらに進化させているのです。

ぜひ、この壮大な物語の登場人物になったつもりで、両社の今後の動向を追い続けてみてください。それはきっと、あなたのエンジニアとしての未来を考える上で、最高の道しるべとなるはずです。

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投稿者プロフィール

山崎講師
山崎講師代表取締役
セイ・コンサルティング・グループ株式会社代表取締役。
岐阜県出身。
2000年創業、2004年会社設立。
IT企業向け人材育成研修歴業界歴20年以上。
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