【エンジニアの投資術】「運」と「実力」を数式で分ける!不確実性を味方につける思考法

こんにちは。ゆうせいです。

皆さんは「投資」をしていますか?

株価や仮想通貨のチャートを見ていると、上がったり下がったり、まったく規則性がないように見えますよね。

エンジニアの仕事も同じです。

「サーバーのアクセス数」や「プロジェクトの進捗」は、基本的には計画通り(右肩上がりなど)に進むはずなのに、なぜか突然スパイクしたり、停滞したりします。

今日は、そんな「予測不能な動き」の正体を暴き、一喜一憂しない強いメンタルを手に入れるための「市場の数式」をご紹介します。

1. 投資に成功する「市場の数式」

今回解読するのは、金融工学の基礎とも言える、動き続けるものを記述するための数式です。

dX = hdt + f(X)dt + \sigma \times \epsilon_t

なんだか物理の公式みたいでカッコいいですね。

これは「確率微分方程式」と呼ばれるジャンルの式で、ノーベル経済学賞にも関わるような深い理論の入り口です。

2. 数式を解読しよう

この式は、時間の経過とともに変化する数値(株価やアクセス数など)が、「2つの要素」 の足し算でできていることを示しています。

  • dX変化量 です。「次の瞬間に価格( X )がどれだけ動くか」を表します。
  • dt時間の経過 です。

この式の右辺を、大きく2つのパートに分けて見てみましょう。

① 予測できる「トレンド」のパート

前半の hdt + f(X)dt の部分です。

これは 「ドリフト項」 と呼ばれ、「本来こう動くはずだ」という 実力や傾向 を表します。

  • 企業の成長力
  • サービスの着実なユーザー増加
  • エンジニアが書いたコードの処理能力

ここは、計算や努力でコントロールできる「秩序」の世界です。

② 予測できない「ノイズ」のパート

後半の \sigma \times \epsilon_t の部分です。

これが 「拡散項」 と呼ばれる、この数式の主役です。

  • \sigma (シグマ): ボラティリティ(変動の激しさ) です。
  • \epsilon_t (イプシロン): ランダムな衝撃(ノイズ) です。

つまり、この式はこう言っているのです。

「世の中のすべての変化は、『確実なトレンド』と『予測不能なノイズ』の足し算で決まる」

3. エンジニアが知っておくべき専門用語

この数式の考え方は、システム運用やデータ分析において極めて重要です。

シグナルとノイズ(Signal vs Noise)

エンジニアは、発生した現象が「トレンド(シグナル)」なのか「たまたま(ノイズ)」なのかを見極める必要があります。

例えば、エラー率が1%上がったとき、それが「バグの混入(トレンドの変化)」なのか、「たまたまユーザーの操作が偏っただけ(ノイズ)」なのか。

前者の f(X) の変化なら即対応が必要ですが、後者の \epsilon_t なら無視して構いません。これを見誤ると、無駄な対応に追われることになります。

ランダムウォーク(Random Walk)

「酔っ払いの千鳥足」のように、次に右に行くか左に行くか全くわからない動きのことです。

市場の動きや、バグの発生タイミングは、短期的にはこのランダムウォーク( \epsilon_t )の影響を強く受けます。「短期間の結果に一喜一憂しても無駄だ」というのは、数学的に正しい態度なのです。

4. この考え方を使うメリットとデメリット

メリット

「メンタルが安定し、本質に集中できる」 ことです。

株価が下がったり、アクセスが急減したりしたとき、慌てずにこう考えられます。

「これはトレンド( h )が変わったのか? それとも単なるノイズ( \sigma )か?」

もしノイズなら、放っておけば平均値に戻ります。エンジニアとしてのリソースは、変えられない「運(ノイズ)」の制御ではなく、変えられる「実力(トレンド)」の向上に集中させるべきだと気づけます。

デメリット

「『ブラックスワン』に弱い」 という点です。

この数式は、あくまで「想定の範囲内(正規分布)」のノイズを前提としています。

しかし現実には、リーマンショックや大規模な震災のような、計算外の巨大な衝撃(外れ値)が発生します。「数式上はあり得ない確率だ」と高を括っていると、そういった想定外の事態で破綻するリスクがあります。

5. 今後の学習の指針

これからのエンジニア生活では、グラフやデータを見たときに「線を引く」イメージを持ってください。

ジグザグに動くデータの中に、一本の滑らかな線(トレンド)を見出すのです。

「今日のバグ報告数は多かった( dX は大きかった)。でも、それはリリース直後だから(トレンド)、それともたまたま変な使い方が集中したから(ノイズ)?」

この「分解する思考」ができれば、投資でも仕事でも、パニックにならずに冷静な一手を打てるようになりますよ。

次回は、ユーザーの好みを分析し、思わずクリックさせてしまう技術、「⑦広告の数式」について解説します。

「なぜAmazonは私が欲しいものを知っているのか?」その謎に迫ります。お楽しみに!

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投稿者プロフィール

山崎講師
山崎講師代表取締役
セイ・コンサルティング・グループ株式会社代表取締役。
岐阜県出身。
2000年創業、2004年会社設立。
IT企業向け人材育成研修歴業界歴20年以上。
すべての無駄を省いた費用対効果の高い「筋肉質」な研修を提供します!
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