人材不足の時代に考えたい「仲間づくり」エフェクチュエーションから学ぶ人材確保のヒント

「求人を出しても応募が来ない……」
「採用できてもすぐに辞めてしまう……」
「仕事はあるのに人がいない……」

そんな悩みを抱える経営者や管理職の方は少なくありません。近年では、業績不振ではなく「人材不足」が原因で倒産する企業も増えています。

せっかくお客様から仕事をいただいても、対応する人がいない。事業を拡大したくても、任せられる人材がいない。そんな状況が全国で起きています。

ところで、少し考えてみてください。
なぜ同じような条件なのに、人が集まる会社と集まらない会社があるのでしょうか?

実はその答えを考える上で、とても参考になるのが「エフェクチュエーション」という考え方です。今回は、優れた起業家が実践しているエフェクチュエーションの中でも、「クレイジーキルトの原則」にある「売り込み」と「問いかけ」をテーマに、人材確保のヒントをお伝えします。

エフェクチュエーションとは何か?

エフェクチュエーションとは、優れた起業家たちの行動パターンを研究して見つかった思考法(意思決定の論理)です。

一般的な経営(コーゼーション)では、以下のような流れを重視します。

従来の経営スタイル(予測主導)

「未来を予測する」 ➔ 「計画を立てる」 ➔ 「実行する」

一方、エフェクチュエーションでは、全く逆のアプローチをとります。

エフェクチュエーション(行動主導)

「今ある資源を活かす」 ➔ 「仲間を増やす」 ➔ 「未来を共につくる」

料理に例えるなら、その違いは一目瞭然です。

  • 一般的な経営:「カレーを作るために、レシピを見て必要な材料を買いに行く」スタイル
  • エフェクチュエーション:「冷蔵庫を開けて、今ある材料を見て何が作れるか考える」スタイル

なんだか家庭的で親しみやすい考え方ですよね。(^^)

クレイジーキルトの原則とは?

「クレイジーキルト」とは、さまざまな色や形の布を縫い合わせて一つの大きな作品を作るパッチワークのことです。

【クレイジーキルトのつながりイメージ】

会社(あなた)
社員顧客地域
学生協力企業行政

一つひとつは異なる存在ですが、ジグソーパズルのように組み合わさり、つながることで大きな価値を生み出します。

エフェクチュエーションでは、この考え方をビジネスに応用します。つまり、「一人で(自社だけで)成功しようとしない」「偶然出会った協力者を増やしながら、予測不能な未来を一緒につくっていく」ということです。そして、そのための具体的なアクションこそが「売り込み」と「問いかけ」なのです。

エフェクチュエーションでいう「売り込み」とは?

売り込みという言葉を聞くと、「必死に営業すること?」「自社の商品を売りつけること?」そんなイメージを持つ方もいるでしょう。しかし、エフェクチュエーションにおける「売り込み(ピッチ)」は少し意味が異なります。

会社の想いや価値観を伝えること

ここでの売り込みとは、自社のスペックを誇ることではなく、以下のような「想い」を発信することです。

  • 「地域の高齢者を支えたい」
  • 「子どもたちの未来を育てたい」
  • 「日本のものづくりを絶やさず守りたい」

多くの企業は求人票に、給与・休日・福利厚生などの「条件」を掲載します。もちろんそれらも大切です。しかし、人は条件だけで動くわけではありません。「共感」によって心が動くことも多いのです。特に若い世代ほど、「何のために自分が時間を使うのか」という働く意義を重視する傾向があります。

にゃんこエピソードで考える「ストーリー」の力

ここで少し、身近な例を考えてみましょう。(=^・^=)

ある日、保護猫の里親募集があったとします。単に「猫を引き取ってください」とだけ書かれていても、なかなか人は集まりません。しかし、以下のようなストーリーが添えられていたらどうでしょうか。

「この子はとっても甘えん坊です。人が帰宅すると、トコトコと玄関まで迎えに来てくれます。座るとすぐに膝の上に飛び乗ってくる、人が大好きな子です」

そんな具体的な姿やストーリーを聞くと、「どんな子だろう?一度会ってみたい!」と思いますよね。企業も全く同じです。単なる仕事内容(タスク)だけでなく、「会社の想い」「そこで働く人のリアルな姿」「実現したい未来」を丁寧に伝えることで、深い共感が生まれます。

「問いかけ」が人材確保を変える

実は、深刻な人材不足時代において、売り込み以上に重要になってくるのが「問いかけ(アスク)」です。

募集ではなく「対話」を始める

多くの企業は「社員を募集しています」という一方通行の発信で終わってしまいます。しかし、エフェクチュエーションを実践する企業は違います。例えば、関わる人たちにこのような問いを投げかけます。

  • 「この地域をもっと元気にするには、何が必要だと思いますか?」
  • 「若い人が本当に働きたくなる会社って、どんな会社でしょうか?」
  • 「あなたなら、うちの環境を使ってどんな働き方を実現したいですか?」

このように問いかけられると、相手は単なる「傍観者(求職者)」ではなくなります。自ら考える「当事者(パートナー)」へと変わっていくのです。

「売り込み」と「問いかけ」の違い

この2つのアプローチの違いを整理すると、以下のようになります。

売り込み(想いの発信)問いかけ(巻き込み)
自社の想いや理念を伝える相手の意見を聞き、巻き込む
現状や魅力を説明する双方向で対話する
相手からの共感を得る未来への参加を促す
応援してくれる「ファン」を増やす一緒に行動する「仲間」を増やす

ファンは外から応援してくれますが、仲間は中に入って一緒に行動してくれます。今の時代、本当の人材確保につながるのはまさに「後者(仲間づくり)」です。

なぜ求人広告だけでは人が集まらないのか?

昔は求人広告を出せば、それなりに応募が集まりました。しかし現在は前提条件がガラリと変わっています。少子高齢化によって働く人口そのものが激減しているためです。

つまり、「企業が人を選ぶ時代」から「人が企業を選ぶ時代」へと完全に変化しました。立場が逆転したからこそ、従来の「お金を払って広告を出し、応募を待つ」だけの方法では太刀打ちできなくなっているのです。

人材確保のために今すぐできる5つの実践方法

① 理念をわかりやすく発信する

自社の存在意義を、誰もが理解できる言葉にしましょう。「利益を出すため」だけではなく、「社会や目の前のお客様にどんな価値を提供したいのか」を伝えることがすべての土台になります。

② 社員のストーリーを発信する

業務内容の箇条書きだけでは伝わらない魅力を届けましょう。「未経験から成長したプロセス」「お客様に喜んでもらえて感動したエピソード」「チームで困難を乗り越えた物語」などが、人の心を動かします。

③ 地域との接点を増やす

地元の学校、商工会議所、自治体、地域のイベントなどに積極的に顔を出し、交流を増やしましょう。求人媒体を経由しない、意外なところからの素晴らしい出会いは、地道なつながりから生まれます。

④ インターンシップを活用する

短期間でも、実際に会社の雰囲気や仕事を体験してもらう機会を作りましょう。働くイメージが具体的になるため、入社後のミスマッチ(早期離職)を防ぐことにも直結します。

⑤ 問いかけ型の採用活動を行う

「一緒にこの街の未来を創りませんか?」「あなたの強みを活かせる場を、面談を通じて一緒に考えてみませんか?」といった、対話型の採用を意識してみましょう。

採用は恋愛に似ている?

少しユニークな例えをしてみます。採用活動は「恋愛や結婚」にとてもよく似ています。

街で初めて会った人に、いきなり「条件は良いので、私と結婚してください!」と言われても困ってしまいますよね(笑)。

まずは声をかけて知り合い、お互いの話をじっくり聞き、価値観を共有し、少しずつ信頼関係を築いていく。そのプロセスの結果として、「この人と一緒に歩んでいきたい」と思えるようになります。採用もまったく同じです。求人票の条件だけでは信頼関係は生まれません。共感と対話の積み重ねこそが重要なのです。

これからの時代は「採用」から「仲間づくり」へ

人材不足が深刻化する今、「どうやって人を集めるか(Causation的な発想)」だけを考えていては限界があります。大切なのは、「どうやって自社のキルト(組織)に加わってくれる仲間を増やすか(Effectuation的な発想)」です。

エフェクチュエーションの考え方において、人材は単なる「労働力(コスト)」ではありません。未知の未来を一緒に切り拓いていく頼もしい「パートナー」です。だからこそ、自社の想いを伝え、相手に問いかけ、対話を重ね、巻き込んでいく行動が求められます。

まとめ

エフェクチュエーションにおける「売り込み」とは、自社の理念や想いを伝えること。
一方で「問いかけ」とは、相手に未来づくりに参加してもらうための対話です。

人材不足で悩む企業ほど、「求人広告を出す ➔ 応募を待つ」という受け身の予測型になりがちです。しかし、人が自然と集まる企業は、自ら想いを発信し、地域とつながり、対話を重ねて「仲間」を増やしています。

人材不足の時代だからこそ、「どうやって採用するか」ではなく、「どうやって共感してもらうか」という視点への転換がますます重要になっていくでしょう。


皆さんの会社では、どのような未来を実現したいでしょうか?
そして、その未来に共感してくれる仲間に、今どんな問いかけができるでしょうか?

ぜひ一度、じっくりと考えてみてください。その小さな問いかけこそが、未来の素晴らしい人材を確保するための、確かな第一歩になるはずです。(^^)

参考文献
・サラス・サラスバシー著、吉田満梨監訳『エフェクチュエーション 優れた起業家が実践する「5つの原則」』ダイヤモンド社、2022年
・Sarasvathy, S. D. Effectuation: Elements of Entrepreneurial Expertise, Edward Elgar Publishing, 2008
・Academy of Management Review, Vol.26, No.2, 2001




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投稿者プロフィール

田渕講師
田渕講師
セイ・コンサルティング・グループ株式会社専務取締役
IT企業向け人材育成研修歴業界歴20年以上
キャリアコンサルタント・産業カウンセラー
アンガーマネジメントファシリテーター、コンサルタント
ハッピーな人生を送る秘訣は「何事も楽しむ!」ことにあり。
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