『シン・営業力』第4章から学ぶ「情報力」――情報を集める営業から、情報が集まる営業へ

前回の記事では、『シン・営業力』(天野眞也著)の第3章を通して、「戦略眼」について考えました。

お客様のゴールはどこにあるのか。

そのゴールに向かうために、どのような道筋を描けばよいのか。

そして、営業は単に「商品を売る人」ではなく、「お客様のゴールまで一緒に走る人」なのではないか。

そんなお話でした(^^)

さて、今回取り上げる第4章のテーマは、ずばり「情報」です。

「情報? インターネットで検索すれば、いくらでも出てくるじゃない?」

そう思われるかもしれません。

たしかに、企業のホームページを見れば、会社概要や事業内容はわかります。ニュースを検索すれば、その会社の最近の動きも見えてきます。

生成AIに質問すれば、業界動向まで短時間で整理できる時代になりました。

では、営業にとって「情報」は、以前ほど重要ではなくなったのでしょうか?

私は、むしろ逆なのではないかと思います。

情報が簡単に手に入る時代だからこそ、

「ほかの人が知らない情報を持っている」

「バラバラの情報をつなげて意味を見いだせる」

「相手に役立つ形で情報を届けられる」

そんな営業担当者の価値が高まっているのではないでしょうか。

今回は、第4章を読みながら、営業における「情報力」について考えていきます!(^^)

そもそも営業における「情報力」とは?

営業における情報力というと、

「お客様のことをたくさん知っている」

という意味に聞こえますよね。

もちろん、それも大切です。

ただ、第4章を読んで感じたのは、情報力にはもう一段深い意味があるということでした。

私は次のように整理しました。

情報力 = 情報を集める力 × 情報をつなげる力 × 情報を活用する力

日本語で表現するなら、

情報力 = 「知る力」×「考える力」×「役立てる力」

というイメージです。

どれか一つだけでは足りません。

たとえば、冷蔵庫の中に食材がたくさん入っていても、料理をしなければ夕食にはなりませんよね。

ニンジンがあります。

玉ねぎがあります。

ジャガイモがあります。

お肉があります。

「食材情報、いっぱい持っています!」

……いやいや、カレーを作ってください(笑)

営業も似ています。

情報を大量に持っていても、

「では、その情報から何がわかるのか?」

「お客様にどんな提案ができるのか?」

まで考えなければ、価値にはなりにくいのです。

法人営業で大切な「4つの情報」

第4章では、法人営業にとって重要な情報として、4つの観点が紹介されています。

「組織情報」

「担当情報」

「案件情報」

「工程情報」

です。

初めて聞くと、

「なんだか営業管理システムの入力項目みたい……」

と感じるかもしれません(^^;)

そこで、少し噛み砕いて考えてみましょう。

情報簡単に言えばたとえば知りたいこと
組織情報会社や部署のこと組織構成、役割、決裁の流れ、各部署の関係など
担当情報人のこと担当者の役割、関心事、課題、立場など
案件情報仕事・商談のことどんな計画があるのか、予算、競合、課題など
工程情報仕事の流れのこといつ何をするのか、どこで問題が起きるのかなど

4種類をバラバラに見るのではなく、組み合わせるところがポイントなのだと思います。

「Java研修を検討しています」だけでは情報が足りない

たとえば、私たちのような研修会社に、

「来年度、新入社員向けJava研修を検討しています」

というお問い合わせがあったとしましょう。

もちろん、ありがたいお話です!

しかし、

「承知しました! Java研修のお見積もりを送ります!」

だけで終わってしまったら、見えているのは案件のごく一部です。

もう少し知りたくなりませんか?

組織情報

「人事部が研修を企画しているのか?」

「情報システム部門も関係するのか?」

「配属先の現場責任者は誰なのか?」

担当情報

「研修担当者は何を一番心配しているのか?」

「技術習得を重視しているのか?」

「新人の離職や定着も課題なのか?」

案件情報

「何人が受講するのか?」

「予算はどのくらいなのか?」

「他社も検討しているのか?」

工程情報

「いつまでに研修会社を決めるのか?」

「新人はいつ配属されるのか?」

「研修後はどんな仕事をするのか?」

こうした情報が少しずつつながると、

「Java研修を売る」

という視点から、

「お客様が新人を戦力化するために、どんな研修が必要なのか?」

という視点へ変わっていきます。

前回の「お客様のゴールを目指す」という話にもつながってきましたね!

情報は「点」ではなく「線」にする

情報には、おもしろい性質があります。

一つだけでは意味がわからなくても、複数集まると急に意味が見えてくるのです。

たとえば、

「新人が30人いる」

という情報があったとします。

それだけでは、

「なるほど、30人ですね」

で終わります。

そこへ、

「今年は例年より10人多い」

という情報が加わったらどうでしょう?

さらに、

「現場の教育担当者は増えていない」

という情報が加わります。

そして、

「昨年は配属後のOJT負担が大きかった」

という情報まで加わったら?

見えてくるものが変わりますよね。

新人が30人いる

例年より10人多い

教育担当者は増えていない

昨年はOJT負担が大きかった

「今年は配属後の教育負担がさらに増えるのでは?」

「研修中に、より実践力を高める必要があるのでは?」

提案につながる!

情報は、一つひとつが「点」です。

点と点を結ぶと「線」になります。

線が増えると「面」になり、お客様の状況が立体的に見えてきます。

探偵ドラマで、刑事さんがホワイトボードに写真やメモを貼って、赤い線でつないでいる場面がありますよね。

「あの人物と、この出来事がつながった!」

営業でも、似た瞬間があります。

もちろん、お客様を捜査してはいけませんが(笑)

情報をコツコツ集めると「相談される営業」になる

第4章で特に興味深いと感じたのが、情報を集め続けることで、お客様から頼られる存在になっていくという考え方です。

普通、営業担当者は、

「お客様から情報をもらう人」

だと思いがちです。

しかし、情報を蓄積していくと立場が少し変わってきます。

たとえば、同じ会社のいろいろな部署と話をしている営業担当者がいたとしましょう。

A部署では、こんな課題を聞いた。

B部署では、こんな取り組みが始まっている。

C部署では、似た問題をすでに解決している。

すると、

「実はB部署さんでは、こんな取り組みをされていますよ」

「似た課題について、別の部署ではこんな方法がありました」

といった情報提供ができるようになります。

お客様から見れば、

「あれ? この営業担当者、うちの会社のことをかなり知っているぞ」

という状態になります。

そして少しずつ、

「ちょっと相談してもいいですか?」

と声をかけてもらえるようになる。

営業として、とても強い状態ですよね(^^)

「御用聞き営業」と「情報提供型営業」の違い

御用聞き営業情報提供型営業
何かありませんか?最近こんな傾向があります
ご要望を教えてくださいこんな課題はありませんか?
依頼を待つ課題を一緒に見つける
案件が出てから動く案件になる前から関係をつくる
情報をもらう情報を交換する

「何かありませんか?」

だけでは、お客様も困ってしまいます。

「何かって言われても……ないですね」

となりますよね(^^;)

一方、

「最近、新人研修では生成AIの活用ルールについて相談される企業が増えているのですが、御社では何か検討されていますか?」

と聞かれたらどうでしょう。

「ああ、それなら実は……」

と会話が始まるかもしれません。

良い情報は、次の情報を呼び込むのですね。

「ファン」、そして「大ファン」をつくる

第4章では、「ファン」や「大ファン」という考え方も登場します。

営業でファン?

アイドルみたいですよね(笑)

ただ、法人営業では非常に大切な考え方だと思います。

ここでいうファンは、

「この営業担当者なら相談してもいい」

「この会社の商品なら一度検討してみよう」

と思ってくださる方、と考えるとわかりやすいでしょう。

さらに関係が深くなると、

「こうしたほうがいいですよ」

「次はこの人に話したほうがいいですよ」

「こんな計画が出ているので、早めに準備したほうがいいですよ」

と、営業担当者の成功まで応援してくださる方が現れることがあります。

まさに「大ファン」です。

大ファンは「社内ナビゲーター」

私は、大ファンを「社内ナビゲーター」のような存在だと感じました。

初めて訪れる大きな駅を想像してください。

出口が10個あります。

地下街もあります。

似た名前のビルもあります。

地図を見ても、

「えっ、どっち!?」

となることがありますよね(笑)

そんなとき、その街に詳しい友人が、

「その出口じゃないよ。3番出口から出て右!」

と教えてくれたら、とても助かります。

法人営業でも同じです。

会社の外からでは、誰が本当のキーパーソンなのか、どの部署に相談すべきなのか、いつ提案するのがよいのか、なかなかわかりません。

そんなとき、

「その件なら○○部長にも話しておいたほうがいいですよ」

「来月、予算の話が始まるので今のうちですよ」

と教えてくださる方がいたら、営業活動は大きく変わります。

大ファンは「利用する人」ではありません

「よし! お客様の会社の中に大ファンをつくろう!」

と思った方。

ちょっと待ってください(^^;)

大ファンは、営業戦略のために「利用する人」ではありません。

信頼関係の結果として生まれる存在なのだと思います。

情報だけ欲しがる。

案件だけ紹介してもらう。

困ったときだけ連絡する。

そんな関係では、長続きしません。

むしろ、

相手が困っていたら助ける。

役立つ情報があれば届ける。

すぐに売上にならなくても相談に乗る。

約束したことは守る。

相手の立場を尊重する。

そうした小さな積み重ねが、

「この人なら応援したい」

という気持ちにつながるのでしょう。

「情報を取りに行く営業」から「情報が集まる営業」へ

営業を始めたばかりの頃は、情報を自分から取りに行く必要があります。

調べる。

質問する。

訪問する。

人に会う。

話を聞く。

地道です。

「もっと楽な方法はないの?」

と言いたくなりますよね(^^;)

ところが、信頼関係が積み重なると、少しずつ状況が変わります。

お客様から、

「そういえば、こんな話が出ていますよ」

「来年度、こういう計画があります」

「○○さんにも一度会ってみますか?」

と声をかけてもらえるようになります。

自分から情報を取りに行く

情報が増える

お客様への理解が深まる

役立つ情報を返せる

信頼される

相談される

新しい情報が入ってくる

さらに役立つ提案ができる

もっと情報が集まる!

ここまで来ると、営業活動に「好循環」が生まれます。

情報があるから信頼される。

信頼されるから情報が入る。

情報が増えるから、さらに良い提案ができる。

良い提案をするから、もっと信頼される。

雪だるまが坂を転がりながら大きくなるようなイメージですね(^^)

にゃんこエピソード――情報を持っている猫は強い!?

ここで恒例の、にゃんこエピソードです(=^・^=)

猫を見ていると、

「情報って大事なんだなぁ」

と思うことがあります。

たとえば、家の中で暮らすにゃんこ。

飼い主が冷蔵庫を開けても、知らん顔。

洗濯機を回しても、知らん顔。

ところが掃除機を出すと、

サッ!

と逃げます。

そして、おやつの袋をほんの少し、

「カサッ……」

と触っただけで、どこからともなく、

「ニャッ!」

と登場します。

さっきまで寝ていたでしょう!?

なぜわかる!?(笑)

にゃんこは、

「どの音が自分に関係する情報なのか」

を見事に選別しています。

冷蔵庫の音。

掃除機の音。

玄関の音。

おやつの袋の音。

全部「音」という情報ですが、意味は違います。

つまり、

「情報量が多いこと」

と、

「必要な情報を見分けられること」

は別なのですね。

営業も同じだと思います。

お客様について100個の情報を持っていたとしても、全部が同じ重要度ではありません。

「来年度から新人が20人増える」

「教育担当者が異動する」

「新しい開発プロジェクトが始まる」

「部長が人材育成を重要課題としている」

そんな情報の中には、今後の提案を大きく左右するものがあります。

にゃんこがおやつ袋の「カサッ」を聞き逃さないように、営業も、

「この情報は重要だ!」

と気づく感度を磨きたいですね。

……ただし、お客様がおやつを出してくれるわけではありません(笑)

情報力にはデメリットや注意点もある

情報を集めれば集めるほど良い。

そう言いたいところですが、注意も必要です。

情報が多すぎると整理できなくなる

情報を集めること自体が目的になると、

「あれも聞こう」

「これも記録しよう」

となり、情報の山ができます。

しかし、使わない情報を大量に持っていても意味がありません。

大切なのは、

「何のために、この情報を知りたいのか?」

という目的です。

情報が古くなることもある

人事異動があります。

組織変更があります。

方針変更もあります。

去年の重要人物が、今年も重要人物とは限りません。

情報には「賞味期限」があるのですね。

人から聞いた情報を鵜呑みにしない

「○○さんがこう言っていました」

という情報が、必ずしも会社全体の意見とは限りません。

事実なのか。

個人の意見なのか。

推測なのか。

分けて考える必要があります。

情報が増えるほど、「情報を疑う力」も必要になるのだと思います。

情報力を仕事に活かすための簡単な習慣

では、第4章から学んだ内容を、普段の仕事にどう取り入れればよいでしょうか。

難しく考えなくてもよいと思います。

お客様と話したあと、次の4つをメモするだけでも違います。

観点振り返る質問
組織情報誰が関係しているのだろう?
担当情報この方は何を大切にしているのだろう?
案件情報どんな課題や計画があるのだろう?
工程情報いつ、何が起きるのだろう?

そして、もう一つ質問を追加します。

「私は、このお客様にどんな情報を返せるだろう?」

ここが重要なのではないでしょうか。

情報は「もらうもの」だけではありません。

与えるものでもあります。

情報は「通貨」のようなもの

私は、営業における情報は「通貨」に少し似ていると感じます。

価値ある情報を受け取ったら、自分からも価値を返す。

たとえば、

業界動向を伝える。

他社事例を紹介する。

新しい技術について説明する。

課題解決のヒントを届ける。

相手に合いそうな人を紹介する。

そんな「情報の交換」が続くと、関係が豊かになっていきます。

反対に、

「何か情報ください」

「案件ありませんか?」

「誰か紹介してください」

ばかりでは、情報口座の残高が減ってしまうかもしれません(^^;)

営業だからこそ、

「今日は何を聞き出そう?」

だけではなく、

「今日は何を持って帰ってもらおう?」

と考えたいですね。

第4章から学んだことをまとめてみましょう

ポイント意味
4つの情報を見る組織・担当・案件・工程という複数の角度からお客様を理解する
点を線にするバラバラの情報を組み合わせて意味を考える
情報を返す聞くだけではなく、お客様に役立つ情報を提供する
信頼を積み重ねる小さな行動の積み重ねによって相談される存在になる
ファンを増やす「この人なら相談したい」と思ってもらえる関係をつくる
大ファンとの関係を大切にする利害だけではない、人と人との信頼関係を育てる
情報が集まる状態を目指す自分から探すだけでなく、自然と相談や情報が届く存在になる

第2章では「観察眼」を学びました。

第3章では「戦略眼」を学びました。

そして第4章では「情報」が登場しました。

ここまでをつなげると、

観察する

情報を集める

情報をつなげる

お客様のゴールを考える

戦略を描く

行動する

信頼される

さらに情報が集まる

という循環が見えてきます。

営業力とは、

「話が上手なこと」

だけではないのですね。

むしろ、

よく見る。

よく聞く。

よく考える。

相手に役立つ情報を届ける。

約束を守る。

そんな地道な積み重ねのほうが、大きな成果につながるのかもしれません。

さいごに――情報を「持っている人」より「情報が集まる人」へ

第4章を読んで、私は一つの問いが頭に残りました。

「自分には、誰かから真っ先に情報を教えてもらえる関係が、どれくらいあるだろう?」

少しドキッとする問いですよね(^^;)

インターネットで検索できる情報は、競合も見ることができます。

生成AIに質問できる情報も、基本的には誰でも手に入れられます。

だからこそ、

「あなただから話します」

「ちょっと相談したいことがあります」

「まだ正式には決まっていないのですが……」

と声をかけてもらえる関係には、大きな価値があります。

そして、そんな関係は一日では生まれません。

会う。

聞く。

調べる。

役立つ。

約束を守る。

また会う。

そんな一見地味な行動の積み重ねが、やがて「情報が集まる人」をつくっていくのだと思います。

今後の学習では、まず普段関わっているお客様を一社選び、

「組織情報」

「担当情報」

「案件情報」

「工程情報」

の4つに分けて、知っていることを書き出してみてはいかがでしょうか?

空欄になったところには、まだ知らない世界があります。

そして、その空欄をただ質問で埋めるのではなく、

「相手に何を返せるだろう?」

まで考えてみる。

そんな小さな実践から始めてみたいですね(^^)

情報を集める営業から、情報を活かす営業へ。

そして最終的には、情報が自然と集まってくる営業へ!

にゃんこのように大切な「カサッ」という音を聞き逃さない感度も持ちながら(笑)、少しずつ情報力を磨いていきましょう!(=^・^=)

次回は、第5章「事前準備から商談までの営業フローのツボ」へ進みます。

情報を集め、戦略を描いた営業担当者は、実際の商談に向けて何を準備すればよいのでしょうか?

営業活動が、いよいよ具体的な「実践」へ入っていきます。

楽しみですね!(^^)

※本記事は『シン・営業力』を読んで、私自身が学んだ内容や感じたことを、自身の経験も交えながらまとめたものです。

参考文献・参考サイト

・天野眞也『シン・営業力』クロスメディア・パブリッシング、2022年。

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投稿者プロフィール

田渕講師
田渕講師
セイ・コンサルティング・グループ株式会社専務取締役
IT企業向け人材育成研修歴業界歴20年以上
キャリアコンサルタント・産業カウンセラー
アンガーマネジメントファシリテーター、コンサルタント
ハッピーな人生を送る秘訣は「何事も楽しむ!」ことにあり。
一期一会を大切に、そして楽しく笑顔になる研修をミッションに!