【データの価値が決まる】機械学習の「固有値」は重要度を示す最強のスコアだった
こんにちは。ゆうせいです。
前回は、データの中に隠れた「ブレない軸」である「固有ベクトル」についてお話ししました。
「なんとなくイメージできたけど、セットで出てくる『固有値(こゆうち)』って結局なんなの?」とモヤモヤしていませんか。
教科書では の
(ラムダ)として登場する、あのギリシャ文字です。
ただの計算結果の数字に見えるかもしれませんが、実は機械学習において、固有値は「データの重要度」や「AIの安定性」を左右する、とてつもなく重要な役割を持っています。
もし固有値がなければ、私たちは膨大なデータの中から何が大切なのか判断できず、AIの学習もすぐに失敗してしまうでしょう。
今回は、この「固有値」の正体を、難しい数式を使わずに「影響力のスコア」として解説していきます。これを読めば、無機質な数字が、急に意味のあるメッセージに見えてくるはずですよ。
固有値とは「伸び縮みの倍率」である
まず、直感的なイメージから入りましょう。
前回の復習ですが、「固有ベクトル」は行列(変換)を掛けても「向きが変わらない矢印」のことでした。
向きは変わりませんが、長さは変わることがあります。
ある固有ベクトルは、変換によって長さが2倍になるかもしれません。別の固有ベクトルは、半分(0.5倍)になるかもしれません。
この「何倍になったか」という数字こそが、固有値の正体です。
- 固有ベクトル
データの「方向」
- 固有値
その方向の「勢い」や「強さ」
例えるなら、会社組織を想像してみてください。
「固有ベクトル」は、あるプロジェクトを担当する「チーム(方向性)」です。
そして「固有値」は、そのチームにどれだけの予算や権限が与えられているかを示す「パワー(倍率)」です。
固有値が大きいチーム(方向)は、会社全体(データ全体)に与える影響力が大きく、固有値が小さいチームは、ほとんど影響を与えません。
なぜ機械学習に必須なのか?
では、単なる「倍率」が、なぜAI開発でそこまで重要視されるのでしょうか。
理由は大きく2つあります。
1. データの「捨てていい部分」と「残すべき部分」がわかる
機械学習では、データを分析しやすくするために情報を圧縮することがよくあります(主成分分析など)。
しかし、適当に圧縮して大事な情報を捨ててしまったら大変ですよね。
ここで固有値が「ランキング表」として活躍します。
データのばらつき(情報量)を分析したとき、算出された固有値の大きさは、そのまま「その軸(特徴)が持っている情報の量」を表します。
- 固有値が大きい: 多くのデータがその方向に広がっている。つまり、「超重要な特徴」。
- 固有値が小さい: データがほとんど広がっていない。つまり、「誤差やノイズ」。
エンジニアは固有値を見て、「この固有値はすごく小さいから、このデータ項目は無視して削除してしまおう」という判断ができます。
固有値のおかげで、私たちは「おいしい部分」だけを残し、効率的にAIを学習させることができるのです。
2. 学習が「暴走」しないかチェックできる
ディープラーニング、特に時系列データを扱うRNN(リカレントニューラルネットワーク)などでは、同じ行列を何度も掛け合わせる計算を行います。
ここで、固有値の大きさが運命を分けます。
もし、行列の固有値が「1」より大きかったらどうなるでしょう。
掛け算をするたびに、値は1.1倍、1.21倍……と雪だるま式に増えていき、最終的に計算不能になるほど巨大な数になってしまいます。これを「勾配爆発」と呼びます。
逆に、固有値が「1」より小さかったら(例:0.9)、掛けるたびに値はどんどん小さくなり、最後はゼロになって消えてしまいます。これが「勾配消失」です。
つまり、固有値をチェックすることは、「このAIモデルは学習中に暴走しないか? 学習が止まってしまわないか?」という健康状態を診断することと同じなのです。
固有値を学ぶメリットとデメリット
ここで、固有値を理解するメリットと、初心者が陥りやすいポイントを整理します。
メリット
- 「寄与率(きよりつ)」の意味がわかるデータ分析の結果を見ると「第1主成分の寄与率は80%」といった表現が出てきます。これは「全固有値の合計のうち、この固有値だけで80%を占めている」という意味です。これが分かると分析レポートが読めるようになります。
- Google検索の仕組みが少しわかる前回も少し触れましたが、GoogleのPageRankアルゴリズムも、ウェブページのリンク関係を表す行列の「最大の固有値」を利用して、ページの重要度を決定していました。
- エラーの原因特定が早くなる学習がうまくいかないとき、重み行列の固有値を調べることで「あ、値が大きすぎて発散しているな」と気づけるようになります。
デメリット
- 直感的な意味を見失いやすい「
(ラムダ)」という記号だけで議論が進むため、それが現実データの「重要度」や「倍率」であることを忘れがちです。常に「これはエネルギーの大きさだ」と言い聞かせる必要があります。
今後の学習の指針
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
固有値とは、単なる計算結果の数字ではなく、データやモデルの「性格」を表す重要なパラメータだということが伝わりましたでしょうか。
最後に、これからの学習のアドバイスをお伝えします。
「固有値の『大きさ』に注目する癖をつけよう!」
細かい計算方法はコンピューターに任せて大丈夫です。
その代わり、Pythonで固有値を出力したときに、次のことを考えるようにしてください。
「一番大きな固有値はどれくらい大きいのか?」
「小さな固有値は に近いのか?」
この感覚を持つだけで、あなたはデータの「本質」を見抜くエンジニアに一歩近づいています。
まずは、Pythonの numpy.linalg.eig という関数を使って、適当な行列の固有値を計算させてみてください。「お、この行列は1より大きい固有値を持ってるぞ、暴れん坊だな」なんて会話ができるようになれば、もう立派なデータサイエンティストの卵です。
数学シリーズ、お疲れ様でした!これらの知識は、これからあなたが学ぶAI技術の至る所で、必ずあなたを助けてくれます。
自信を持って、次のステップへ進んでください!
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投稿者プロフィール
- 代表取締役
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セイ・コンサルティング・グループ株式会社代表取締役。
岐阜県出身。
2000年創業、2004年会社設立。
IT企業向け人材育成研修歴業界歴20年以上。
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学生時代は趣味と実益を兼ねてリゾートバイトにいそしむ。長野県白馬村に始まり、志賀高原でのスキーインストラクター、沖縄石垣島、北海道トマム。高じてオーストラリアのゴールドコーストでツアーガイドなど。現在は野菜作りにはまっている。