コンコルド効果とは?システム開発の味方にも敵にもなる心理バイアス

こんにちは。ゆうせいです。

今回は「コンコルド効果」という行動経済学の有名な概念をテーマに、新人エンジニアの方にもわかりやすく、システム開発の現場でどのように影響するかを解説していきます。

システム開発では、技術力や設計スキルと同じくらい、「人の心のクセ」を理解することが大切なんです。


コンコルド効果とは?

まずは基本からいきましょう!

コンコルド効果の定義

コンコルド効果(Concorde Effect)とは、「すでに投資してしまったお金や時間、労力がもったいない」と感じて、本来やめるべき判断を先延ばしにしてしまう心理現象のことです。

これは「サンクコスト効果(埋没費用効果)」とも呼ばれます。

サンクコストとは、すでに回収できない費用のこと。英語で「Sunk Cost」と書きます。


名前の由来

この効果は、イギリスとフランスが共同開発した超音速旅客機「コンコルド」から名前がついています。

この飛行機は開発コストがどんどん膨らみ、採算が取れないことが明らかになっても、「ここまでやったのだから」と開発が続けられてしまいました。

つまり「引き返す勇気が持てなかった失敗例」なのです。


システム開発ではどう関係する?

例1:失敗しているプロジェクトを中止できない

「この機能、もう誰も使っていないけど、ここまで作ったんだし…」
「この設計、非効率だけど、ここで作り直すとスケジュールが…」

こんな会話、聞いたことありませんか?

これはまさにコンコルド効果に引っかかっている状態です。

図1:判断の分かれ道

(左:もったいないから続行 → 費用増/右:撤退して再設計 → 一時的損失)


例2:不要なバグ修正や機能改善を後回しにする

コードレビューで「この関数、意味が重複してませんか?」と指摘されても、

「いや、もうここを修正するとテスト書き直しだし、今さら無理…」

となるのも典型的な例です。


味方になる場合もある?

実は、コンコルド効果は「悪者」ばかりではありません!

モチベーション維持として働く場合

「ここまで頑張ったから、あともう少し粘ってみよう!」
「この設計にここまで投資したんだから、最善を尽くそう!」

こうした感情が逆に良い結果を生むこともあります。

ただし注意!

「もったいないから」という理由だけで続行するのはロジックではなく感情の判断です。
一度冷静に「本当に価値があるか?」を見極めましょう。


メリット・デメリットを整理!

観点メリットデメリット
モチベーション継続力につながる感情判断に流されやすい
コスト感覚投資を無駄にしたくない心理が働く撤退判断を誤る可能性がある
チーム全体一体感を生むことがある非合理な判断が正当化されることも

回避するためのチェックポイント

H3: 判断の指針を持つ

以下のような質問を自分やチームに問いかけてください。

  • 「このまま続ける理由は感情か、合理性か?」
  • 「いまやめたとして、本当に損になるのか?」
  • 「過去ではなく、未来に価値はあるのか?」

数式で考えてみよう

実はこの効果は、簡単なコスト評価モデルでも表現できます。

判断基準の数式例

現在価値 = 期待される将来の利益 − 今後かかるコスト

(記号で書くと:
V = B − C
 ※V=現在価値(Value)、B=利益(Benefit)、C=コスト(Cost))

「過去にかけたコスト」はこの式に含めてはいけません


まとめと今後の学習ポイント

  • コンコルド効果は、「やめる判断ができなくなる心理バイアス」
  • システム開発では、プロジェクトの継続判断や設計見直しの場面でよく現れる
  • 感情に頼らず、未来の価値を基準にすることが大切
  • ときには「撤退」も英断!

今後の学習のヒント

次は「正常性バイアス」や「確証バイアス」など、他の心理バイアスも学んでみましょう。エンジニアとして、冷静な判断力を養うことにつながります。

ぜひチーム内でも「判断のクセ」について話し合ってみてくださいね!

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投稿者プロフィール

山崎講師
山崎講師代表取締役
セイ・コンサルティング・グループ株式会社代表取締役。
岐阜県出身。
2000年創業、2004年会社設立。
IT企業向け人材育成研修歴業界歴20年以上。
すべての無駄を省いた費用対効果の高い「筋肉質」な研修を提供します!
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