RSA暗号とは?

RSA暗号は、インターネット上での通信を安全に保つための暗号技術の一つです。公開鍵暗号方式と呼ばれる仕組みを使っていて、これにより誰でも「暗号化」はできるけれども、「復号化(暗号を解く)」できるのは特定の人だけ、という特徴があります。

インターネットでショッピングをしたり、銀行のウェブサイトにログインしたりするとき、あなたの個人情報が安全にやり取りできるのは、RSA暗号のような技術のおかげです。

では、RSA暗号の仕組みを詳しく見ていきましょう。

公開鍵と秘密鍵とは?

RSA暗号の鍵となるのが、公開鍵秘密鍵です。この2つの鍵には次のような役割があります。

  • 公開鍵:誰にでも見せていい鍵で、暗号化に使われます。
  • 秘密鍵:本人だけが持っている秘密の鍵で、暗号を解く(復号する)ために使われます。

たとえば、あなたが誰かに秘密のメッセージを送りたいとき、その人の公開鍵を使ってメッセージを暗号化します。そして、その暗号文は受け取った相手だけが、秘密鍵を使って解読することができるのです。

このように、公開鍵と秘密鍵のペアによって、安全な通信が可能になります。ここで重要なのは、公開鍵で暗号化された情報は、その公開鍵に対応する秘密鍵でしか解けない点です。

RSA暗号の仕組み

RSA暗号は大きな素数(1とその数自身でしか割れない数)を使った数学的な仕組みで成り立っています。実際の暗号化と復号化のプロセスを、少し簡単にして説明しましょう。

1. 鍵の生成

まず、RSA暗号では大きな2つの素数 ( p ) と ( q ) をランダムに選びます。次に、これらの素数を掛け合わせて、非常に大きな数 ( N ) を作ります。この ( N ) が公開鍵の一部として使われます。

さらに、別の数 ( e ) を選びます。これは「公開指数」と呼ばれ、公開鍵に使います。そして、もう一つの数 ( d ) を計算します。これが秘密鍵にあたる部分で、誰にも教えません。

  • 公開鍵:( (N, e) )
  • 秘密鍵:( d )

ここで大事なのは、公開鍵の ( N ) と ( e ) は誰でも知っていていいのですが、秘密鍵 ( d ) は特定の人だけが知るということです。

2. 暗号化

あなたが相手にメッセージを送りたいとき、そのメッセージを数字(通常はバイト列)に変換します。この数字を ( m ) としましょう。次に、相手の公開鍵 ( (N, e) ) を使って次のように暗号化します。

[
c = m^e \mod N
]

ここで、( c ) が暗号文です。つまり、あなたのメッセージ ( m ) は、相手の公開鍵で計算されて、暗号文 ( c ) に変換されます。

3. 復号化

相手があなたからの暗号文を受け取ったとき、その暗号文 ( c ) を秘密鍵 ( d ) を使って復号化します。

[
m = c^d \mod N
]

この計算によって、元のメッセージ ( m ) が復元されます。ここでのポイントは、公開鍵で暗号化したメッセージは、秘密鍵でしか復号化できないということです。

RSAの安全性

RSA暗号が安全だと言われる理由は、「大きな数を素因数分解するのが非常に難しい」という数学的な問題に基づいているからです。素因数分解とは、大きな数を素数に分解することです。たとえば、15は3と5という素数に分解できます。しかし、数が非常に大きくなると、その数を素因数分解するのに膨大な時間がかかります。

RSAでは、この大きな数 ( N ) を作るために、非常に大きな素数 ( p ) と ( q ) を使います。このため、たとえ公開鍵 ( N ) が知られていても、その素因数分解をして秘密鍵を見つけるのは現実的にはほぼ不可能です。

RSA暗号の活用例

RSA暗号は、インターネットでの通信を安全に保つために多くの場面で使われています。例えば:

  • SSL/TLS通信:ウェブサイトのセキュリティプロトコルです。あなたが訪問するウェブサイトが「https」で始まっている場合、その通信はRSAなどの暗号化技術を使って安全に保たれています。
  • 電子署名:RSA暗号を使って文書やデータが改ざんされていないことを証明するために使われます。たとえば、あなたが誰かに契約書を電子的に送るとき、署名が正しければ、その契約書が送信後に変更されていないことが確認できます。

RSA暗号のメリットとデメリット

メリット

  1. 高い安全性
    大きな数の素因数分解が難しいという性質を使っているため、非常に高い安全性を持っています。公開鍵を使って誰でもメッセージを暗号化できますが、秘密鍵を持つ人だけがそのメッセージを復号できます。
  2. 仲介者が不要
    公開鍵を持っていれば、誰でも安全に通信を行えます。銀行や認証機関のような第三者を必要としないため、コストや手間が削減されます。

デメリット

  1. 処理速度が遅い
    RSA暗号は非常に強力な暗号ですが、計算量が多いため、処理速度が遅くなりがちです。特に大量のデータを暗号化する際には時間がかかることがあります。
  2. 鍵のサイズが大きい
    RSAの安全性を保つためには、大きな鍵を使う必要があります。現在では、2048ビット以上の鍵サイズが推奨されており、これにより鍵の管理が少し複雑になることもあります。

今後の学習の指針

RSA暗号の基本を理解したら、次に学ぶべきトピックとしては以下をおすすめします:

  • 公開鍵暗号の他のアルゴリズム:RSA以外にも、楕円曲線暗号(ECC)など、効率的な公開鍵暗号方式が存在します。これらを比較してみましょう。
  • 量子コンピュータとRSA:量子コンピュータが普及すると、RSA暗号は脅威にさらされる可能性があります。量子コンピュータに耐える暗号技術(量子耐性暗号)についても学んでおくと良いでしょう。

RSA暗号は非常に重要な技術であり、日常生活の中で広く使われています。興味を持った分野でさらに深掘りして学んでみてください。

投稿者プロフィール

山崎講師
山崎講師代表取締役
セイ・コンサルティング・グループ株式会社代表取締役。
岐阜県出身。
2000年創業、2004年会社設立。
IT企業向け人材育成研修歴業界歴20年以上。
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