新人エンジニアのための企業会計入門

1.なぜエンジニアに会計の知識が必要なのか

「エンジニアにとってなぜ会計知識が重要なのか」というテーマでお話しします。

エンジニアと会計、と聞くと「技術職なのに関係あるの?」と疑問に思う方もいるかもしれません。しかし、ビジネスの現場では、エンジニアが会計の基本的な知識を持つことで得られるメリットがたくさんあります。これから、それをわかりやすく説明していきますね。


エンジニアが会計を知ることで得られるもの

まずは、簡単な例え話をしましょう。会計は、企業活動全体の「健康診断結果」のようなものです。エンジニアリングで例えるなら、システムのモニタリングツールやログデータのような存在です。システムの異常を早期に発見するためにログを確認するのと同じように、会社の経営状況を知るには会計データをチェックします。

例えば、以下のような場面で役立ちます。

  1. プロジェクトの提案や予算申請がスムーズになる
    新しいシステム開発を提案するとき、会計的な視点でコストや利益を説明できれば、経営陣の承認を得やすくなります。
    「この開発には○○円の投資が必要ですが、△年で回収できる見込みです」と説明できれば、説得力が増します。
  2. プロジェクト管理が改善される
    コストや収益を把握しやすくなることで、プロジェクトが赤字に陥るリスクを避けられます。また、収益性を高めるための工夫もできるようになります。
  3. ビジネス全体を理解できる
    技術的なスキルに加えて、会計知識を持っていると「このプロジェクトが会社全体にどう貢献しているか」をより深く理解できます。これはキャリアアップにもつながる重要なスキルです。

技術者に必要なのは「会計士レベル」ではない

誤解しないでいただきたいのは、エンジニアに専門的な会計士のスキルが必要というわけではないことです。例えば、車を運転する人がエンジンの仕組みを細かく知る必要はありませんよね。エンジニアに必要なのは、財務諸表やコスト構造を「読み解く力」です。

具体的には、次の3つを理解することが大切です。

  1. お金の流れ(キャッシュフロー)
    会社のお金がどのように使われ、増えているのかを理解する。
  2. 利益とコストの関係
    収益と費用のバランスを考える習慣を持つ。
  3. プロジェクトの収益性
    自分が携わるプロジェクトがどれだけ価値を生んでいるのかを知る。

ビジネスの理解を深める

エンジニアはしばしば技術にフォーカスしがちですが、自分の仕事がどのように会社の利益に貢献しているのかを理解することは重要です。例えば、会社が新しいシステムを開発する際、そのコストをどのように管理し、利益を上げるのかを知ることは、技術者としての視点を広げる助けになります。

例:
会社が300万円を投資して新しいアプリを開発するとします。そのアプリが年間100万円の利益を生むなら、3年で投資を回収できる計算になります。こうした視点を持つことで、自分の仕事がどれほどの価値を生んでいるのかを実感できますね。


プロジェクト管理に役立つ

プロジェクトの成功には、技術的な問題解決だけでなく、コスト管理や効率性の追求も欠かせません。会計知識があると、次のような場面で役立ちます。

  1. 予算管理
    予算内でプロジェクトを完了させる能力は、エンジニアとしての価値を高めます。プロジェクトの全体像を数字で把握することができれば、適切なリソース配分が可能になります。
  2. コスト削減
    会計知識を活かすことで、無駄なコストを見つけやすくなります。たとえば、サーバーの運用コストやソフトウェアライセンス費用などの見直しが挙げられます。
  3. 収益性の向上
    プロジェクトがどれくらいの利益を生むのかを計算し、リスクを最小化する手段を考えられるようになります。

例:
もしクラウドサービスの月額料金が10万円で、オンプレミスに切り替えれば月額5万円に抑えられる場合、1年間で60万円のコスト削減が可能です。このような具体的な数字を用いて提案ができると、説得力が高まります。


コミュニケーションがスムーズに

会計知識があると、経営陣や他部署とのコミュニケーションがスムーズになります。エンジニアが専門用語だけで話すと経営陣には伝わりづらいことがありますが、コストや利益、投資対効果(ROI: Return on Investment)を数字で説明できれば、説得力が一気に増します。


エンジニアのキャリアアップにもつながる

最後に、会計知識はキャリアアップにも役立ちます。特に、マネージャーやプロジェクトリーダーを目指す場合、技術だけでなく、プロジェクト全体の収益性を考える能力が求められます。

具体例:
プロジェクトマネージャーが「このプロジェクトは年間2,000万円の収益を見込んでおり、初期投資は1,000万円です」と説明できれば、投資判断がしやすくなります。

2.会計とは何か?

まず、会計の目的を簡単に言うと、「お金の流れや使い方を記録し、報告すること」です。会計は大きく分けて2つの役割があります。

  1. 記録(レコードキーピング)
    会社がどれだけお金を稼ぎ、どれだけ使ったのかを記録すること。
  2. 報告(レポーティング)
    記録したデータを使って、経営者や株主に会社の経営状態を報告すること。

会計を使うと、会社のお金の使い道が「見える化」されるので、次の一手を考えやすくなります。


財務会計と管理会計の違い

会計には大きく分けて「財務会計」と「管理会計」があります。それぞれの役割を見ていきましょう。

  1. 財務会計(Financial Accounting)
    外部の人に向けた会計情報を提供します。具体的には、株主や銀行、税務当局などが対象です。
    主に、会社全体の「成績表」を作るような役割を果たします。
    • 例: 貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書の作成
  2. 管理会計(Management Accounting)
    会社内部の意思決定を支援するための会計です。外部には公開されません。
    プロジェクトごとのコスト管理や、目標達成のための予算計画などに活用されます。
    • 例: プロジェクト別のコスト分析、予算と実績の比較

財務諸表の基礎知識

財務会計で作成される「財務諸表」についても簡単に説明します。これは、会社の経営状態を示す3つの重要な書類です。

1. 貸借対照表(Balance Sheet)

貸借対照表は、会社の「資産」「負債」「純資産」を表すものです。会社がどれだけの資産を持ち、どれだけ借金があり、最終的に自分たちの持ち分がどれくらいかを示します。

例え: 個人の銀行口座で言えば、貯金(資産)からローン(負債)を引いたものが純資産です。

2. 損益計算書(Profit and Loss Statement)

損益計算書は、一定期間における「会社の儲け」を表します。売上から費用を引いた結果、利益がいくら残ったのかを確認できます。

例え: 毎月の収入と支出を記録する家計簿に近いです。

3. キャッシュフロー計算書(Cash Flow Statement)

キャッシュフロー計算書は、会社のお金の流れを追跡します。「どれだけのお金が入ってきて、どこに使われたか」を明確にします。

例え: ATMでの入出金履歴に似ています。


エンジニアとしてのポイント

会計を学ぶと、これらの財務諸表を読む力が身につきます。たとえば、プロジェクトが会社に与える利益やコストの影響を評価する際、損益計算書やキャッシュフロー計算書が役立ちます。さらに、貸借対照表を使えば、会社が新たな投資をする余裕があるかどうかも判断できます。

3.貸借対照表(Balance Sheet)

財務諸表のひとつである「貸借対照表」についてお話しします。これを理解すると、会社の「お金の健康状態」を把握できるようになります。エンジニアリングに例えながら、できるだけわかりやすく解説していきますね!


貸借対照表とは?

貸借対照表(たいしゃくたいしょうひょう)は、会社がどのような「資産」を持ち、その資産がどこから来たお金(「負債」や「純資産」)で賄われているのかを表す一覧表です。英語では Balance Sheet (B/S) と呼ばれます。

貸借対照表には3つの主要な項目があります。

  1. 資産(Assets)
    会社が持っているお金やモノ(現金、建物、在庫など)
  2. 負債(Liabilities)
    会社が他人から借りているお金(借入金、未払い金など)
  3. 純資産(Equity)
    会社の持ち主(株主など)が出資したお金や、利益から積み立てたお金

この3つの合計は、次のような関係で成り立っています。資産=負債+純資産\text{資産} = \text{負債} + \text{純資産}資産=負債+純資産

日本語に置き換えると:

  • 資産(持っているもの)= 負債(借りているもの)+ 純資産(自分のもの)

この式は、貸借対照表の基本ルールです。


貸借対照表の構造

貸借対照表は、通常以下のような形で記載されます。

資産負債
現金短期借入金
売掛金(未収金)未払い金
在庫(商品など)長期借入金
建物や設備ーー
資産合計負債合計
純資産
資本金(株主出資)
繰越利益
純資産合計

例え:
家計簿に例えると、「資産」は銀行口座の残高や持ち家の価値を指し、「負債」は住宅ローンやカードローンのような借金、「純資産」は全体の貯金や持ち家をローンから差し引いた価値に当たります。


なぜエンジニアが貸借対照表を知るべきなのか?

エンジニアにとって貸借対照表を理解することは、「会社のリソースをどう使うべきか」を考えるのに役立ちます。

1. 会社の財務状況を把握できる

例えば、新しいプロジェクトのために高価な機械を導入したい場合、その資金が「余裕のある現金」なのか、それとも「借入金」で賄う必要があるのかを判断できます。

2. プロジェクト提案が通りやすくなる

貸借対照表を読めると、「この投資は資産価値を増やし、長期的な収益につながる」という説明ができます。経営陣の信頼を得るには、数字をもとにした説得力が大切です。

3. キャリアアップに役立つ

将来的にマネジメントを目指すなら、貸借対照表を読み解けることは必須スキルのひとつです。プロジェクトのコスト構造を理解し、収益性を高める提案ができるようになります。


貸借対照表のチェックポイント

エンジニアが貸借対照表を活用するとき、特に注目すべきポイントを挙げます。

  1. 現金の残高(流動性)
    会社がすぐに使えるお金がどれだけあるかを確認します。
  2. 負債の割合(健全性)
    負債が資産に対して多すぎると、会社は経済的に不安定です。
  3. 資産の内訳(効率性)
    機械や設備などの固定資産が多い場合、それが適切に収益に貢献しているかを考えます。

4.損益計算書(Profit and Loss Statement)

財務諸表の中で「稼ぐ力」を表す損益計算書についてお話しします。この書類を理解すると、会社やプロジェクトがどれだけ利益を生み出しているのかを把握できるようになります。エンジニアリングにたとえながらわかりやすく解説していきますね!


損益計算書とは?

損益計算書(P/L: Profit and Loss Statement)は、一定期間(通常は1年や1四半期)の収益費用を記録し、その結果としての利益を示すものです。

シンプルに言えば、「どれだけ稼いで、どれだけ使って、最終的にいくら残ったか」を見るためのものです。

基本構造

損益計算書は以下のような形で構成されています。

項目説明
売上高商品やサービスの販売で得た収益
売上原価商品やサービスを提供するために直接かかったコスト
売上総利益売上高 - 売上原価
販売費および一般管理費事務や営業などの間接的な経費(人件費、広告費など)
営業利益売上総利益 - 販売費および一般管理費
営業外収益および費用事業活動以外の収益や費用(利息収入、借入金の利息など)
経常利益営業利益 + 営業外収益 - 営業外費用
特別利益および損失イレギュラーな収益や損失(資産の売却益、災害による損失など)
税引前当期純利益全ての収益と費用を計算した後の利益
法人税等税金
当期純利益最終的に残る利益

簡単な例

具体例で考えてみましょう。

例:エンジニアリングサービス会社の場合
ある会社が1年間に以下のような活動をしたとします。

  • 売上高:1,000万円(システム開発の売上)
  • 売上原価:400万円(開発費や外注費など)
  • 販売費および一般管理費:300万円(エンジニアの給与や広告費)
  • 営業外費用:50万円(借入金の利息)
  • 法人税:50万円

計算手順:

  1. 売上総利益 = 売上高 - 売上原価 1,000万円−400万円=600万円
  2. 営業利益 = 売上総利益 - 販売費および一般管理費 600万円−300万円=300万円
  3. 経常利益 = 営業利益 - 営業外費用 300万円−50万円=250万円
  4. 当期純利益 = 経常利益 - 法人税 250万円−50万円=200万円

結果、最終的に200万円の利益が残ったことがわかります。


エンジニアにとっての重要性

損益計算書を読むことで、プロジェクトや部門がどれだけ利益を生み出しているかを理解できます。エンジニアとしては、次のような場面で役立ちます。

  1. プロジェクト収益性の把握
    プロジェクトごとの売上とコストを見れば、どれが利益を生み出しやすいかを分析できます。
  2. コスト削減の視点を得られる
    販売費や原価の内訳を見て、無駄な支出を削減する方法を考えられます。
  3. 経営陣への提案力アップ
    新しい技術導入や設備投資の提案をするとき、「これだけのコスト削減が期待できる」と損益計算書を元に説明できれば、説得力が高まります。

損益計算書のチェックポイント

エンジニアとして損益計算書を活用する際に、特に注目すべき点を挙げます。

  1. 売上総利益率(Gross Profit Margin)
    売上総利益が売上高に対してどれだけ占めているかを示します。効率よく利益を出せているかを判断できます。
    売上総利益率=売上総利益/売上高×100
  2. 営業利益率(Operating Profit Margin)
    営業利益が売上高に対してどれだけの割合かを見ます。通常の事業活動でどれだけ稼げているかの指標です。
    営業利益率=営業利益/売上高×100
  3. 当期純利益
    最終的に残る利益は重要な指標です。これが増えることで会社の成長が評価されます。

5.キャッシュフロー計算書(Cash Flow Statement)

財務諸表の中でも「会社のお金の流れ」を明らかにするキャッシュフロー計算書について解説します。キャッシュフロー計算書を理解することで、会社がどれだけ現金を稼ぎ、どのように使っているのかを把握できるようになります。


キャッシュフロー計算書とは?

キャッシュフロー計算書(C/F: Cash Flow Statement)は、一定期間における会社の「現金の流れ」を表す財務諸表です。どれだけ現金が入り、どれだけ出て行ったのかを3つの活動別に分類して記録します。

3つの活動区分
  1. 営業活動によるキャッシュフロー(Operating Cash Flow)
    本業の事業活動から得られる現金の流れです。商品の販売やサービス提供からの収入や、それに関連する支出が含まれます。
    • 例: 売上代金の回収、仕入れや給与の支払い
  2. 投資活動によるキャッシュフロー(Investing Cash Flow)
    長期的な資産への投資や、その売却による現金の流れです。
    • 例: 機械設備の購入、株式や土地の売却
  3. 財務活動によるキャッシュフロー(Financing Cash Flow)
    資金調達や返済に関する現金の流れです。
    • 例: 借入金の受け取りや返済、株式の発行

キャッシュフロー計算書の構造

簡単な例として、以下のようなキャッシュフロー計算書を考えてみましょう。

活動区分金額(万円)
営業活動によるキャッシュフロー+300
投資活動によるキャッシュフロー-200
財務活動によるキャッシュフロー-50
合計+50

この場合、会社の現金残高は50万円増加したことがわかります。


なぜキャッシュフローが重要なのか?

キャッシュフロー計算書が特に重要視される理由を説明します。

  1. 現金の流れを把握できる
    利益が出ている会社でも、現金が足りなくなると運営が難しくなります。キャッシュフロー計算書を見ることで、会社が現金を稼ぐ力を評価できます。例: 売上が多くても、回収が遅れると現金が不足することがあります。これを確認するために役立ちます。
  2. 健全性の指標になる
    営業活動によるキャッシュフローがプラスであれば、本業でしっかり稼げている証拠です。逆にこれがマイナスの場合、会社の財務状況に問題がある可能性があります。
  3. 資金の使い道がわかる
    投資や借入金の状況を確認することで、どこに資金を使っているのか、将来の成長に向けた計画が見えてきます。

キャッシュフロー計算書のチェックポイント

エンジニアとしてキャッシュフロー計算書を活用する際、次の点に注目してみましょう。

1. 営業活動によるキャッシュフローがプラスかどうか

本業で現金を稼げていることが健全な企業運営の基本です。これがマイナスであれば、コスト構造を見直す必要があります。

2. 投資活動の内容

大きな投資をしている場合、その投資がプロジェクトの収益性にどう影響するのかを考えるきっかけになります。

3. 財務活動の依存度

財務活動によるキャッシュフローが大きい場合、借入金や株式発行に頼りすぎている可能性があります。これが健全かどうかを考える必要があります。


エンジニアにとっての価値

キャッシュフロー計算書を読むことで、次のような行動が可能になります。

  1. プロジェクトの資金繰りを計画できる
    新しいプロジェクトの提案時に、「この期間でこれだけの現金が必要です」と具体的に説明できるようになります。
  2. 投資判断に役立つ
    IT設備の更新やクラウドサービスの導入など、投資に関する意思決定をする際に、会社全体の資金状況を考慮することができます。
  3. 経営への貢献が増す
    キャッシュフローの視点を持つことで、経営者と同じ目線で議論ができるようになり、キャリアアップにもつながります。

6.管理会計とは

これまでに財務会計の一部として財務諸表を学んできましたが、今回は「管理会計」についてお話しします。管理会計は、エンジニアの日々の業務やプロジェクト管理に直結する知識ですので、ぜひ押さえておきましょう!


管理会計の概要

管理会計(Management Accounting)は、会社の内部向けに設計された会計情報です。財務会計が「外部の関係者(株主や金融機関など)」に向けて会社全体のパフォーマンスを報告するのに対し、管理会計は意思決定戦略の策定業務の効率化のために使用されます。

主な特徴
  • 目的: 会社内部の意思決定を支援する
  • 対象: プロジェクト、部門、製品などの詳細なレベル
  • 形式: 公表義務がなく、柔軟にカスタマイズ可能
  • 活用例: コスト削減計画、利益目標の設定、予算管理

管理会計の役割

管理会計は、会社の運営を効果的に行うために役立つ重要なツールです。エンジニアにとっても次のような場面で大きな助けとなります。

1. 意思決定の支援

プロジェクトの採算性や投資判断を行うためのデータを提供します。
例: 新しいソフトウェア開発に1,000万円を投資した場合、どのくらいの期間で利益を回収できるのかを分析します。

2. コスト管理

プロジェクトや製品ごとの詳細なコストを追跡し、効率的にリソースを配分します。
例: サーバー運用コストやエンジニアの工数を分析し、どの部分を最適化できるかを検討します。

3. パフォーマンス評価

目標の達成度や、部門・プロジェクトごとの成果を評価します。
例: プロジェクトの進捗が計画通りかを確認し、遅延が発生している場合は原因を特定します。


管理会計の基本ツール

1. 予算管理

予算は、会社やプロジェクトがどのようにリソースを使うかを計画するためのものです。
例: 新しいプロジェクトに割り当てられた1,000万円を「人件費800万円」「設備費200万円」と分け、進捗に応じて使用状況を管理します。

2. コスト分類

コストは以下のように分類されます。

  • 固定費(Fixed Costs)
    プロジェクトの規模や進捗に関係なく発生する費用(例:家賃、サーバー固定費)
  • 変動費(Variable Costs)
    作業量やプロジェクトの進捗に応じて変動する費用(例:外注費、消耗品費)
3. 損益分岐点分析(Break-even Analysis)

どの時点でプロジェクトや製品が利益を出し始めるのかを計算します。
例: システム開発に500万円かかり、売上が1件あたり50万円の場合、10件の契約が必要です(500万円 ÷ 50万円 = 10件)。

4. 差異分析

計画と実績の差を比較し、改善点を探ります。
例: 予算が1,000万円だったが、実際の支出が1,200万円になった場合、その原因を分析し、次回に活かします。


エンジニアが管理会計を理解するメリット

管理会計を活用することで、エンジニアの仕事はさらに効率的かつ戦略的になります。

  1. プロジェクト管理が向上する
    コスト意識を持つことで、計画段階からコストを抑えた設計が可能になります。
  2. 経営陣との連携がスムーズになる
    管理会計を理解していれば、経営陣に対して説得力のある報告ができ、提案も通りやすくなります。
  3. 問題解決能力が高まる
    数値を基に現状を分析し、適切な対策を講じるスキルが身につきます。

7.コスト管理の基本

こんにちは、ゆうせいです!今回は、エンジニアにとって重要なスキルのひとつである「コスト管理」についてお話しします。コスト管理はプロジェクトを成功に導くための鍵です。特に、無駄を省きながら価値を最大化するための具体的な方法を学びましょう!


コストとは何か?

コストとは、プロジェクトや事業を進めるために発生する「すべての費用」を指します。エンジニアリングの文脈では、主に以下のような費用が含まれます。

  1. 人件費
    エンジニアの給与や外注費など。
  2. 設備費
    サーバー費用、ソフトウェアライセンス、機械など。
  3. 運用費
    電力、通信費、メンテナンス費用など。

これらのコストを把握し、コントロールすることが「コスト管理」の基本です。


コストの種類

コスト管理を効果的に行うには、まずコストの種類を理解する必要があります。コストは大きく分けて2つのタイプに分類されます。

1. 固定費(Fixed Costs)

固定費とは、プロジェクトの規模や作業量に関わらず一定額発生する費用です。

  • 例:
    オフィスの家賃、サーバーの固定利用料、保守契約費用。
2. 変動費(Variable Costs)

変動費は、プロジェクトの進捗や規模に応じて変動する費用です。

  • 例:
    外注の開発費用、クラウドサービスの利用料金(使用量に応じた課金)。

例え:
電車の定期券が固定費だとすると、切符をその都度購入するのが変動費のイメージです。


プロジェクトのコスト管理

プロジェクトでコストを管理するには、以下の手順を踏むと効果的です。

1. コストの見積もり

プロジェクト開始前に、必要なリソースとそのコストを洗い出します。

  • 例:
    プロジェクトAの開発期間が3カ月で、エンジニア2名をフルタイムでアサインする場合、
    人件費は次のように計算します:

50万円(1人あたりの月給)×2人×3カ月=300万円

2. 予算の設定

見積もりを基に、適切な予算を設定します。ここでは、「予備費」も含めることが重要です。予備費は予期せぬ問題に対応するためのバッファーです。

3. コストの追跡

プロジェクトの進行中は、実際の支出が予算内に収まっているかを定期的に確認します。差異が生じた場合は、早めに原因を特定して修正します。

4. コストの最適化

無駄を減らし、効率を上げる方法を検討します。

  • 例: クラウドサービスのプランを見直して不要な機能を削減する。

コスト削減のためのヒント

1. 作業の自動化

反復的なタスクを自動化することで、人件費や工数を削減できます。
例: CI/CD(継続的インテグレーションとデリバリー)を導入してビルドやデプロイを自動化。

2. 外部リソースの活用

特定の分野で専門知識が必要な場合は、外注を検討しましょう。ただし、長期的には内製化がコスト削減につながる場合もあります。

3. 契約の見直し

サーバーやソフトウェアの契約内容を定期的に確認し、よりコストパフォーマンスの高いプランに切り替える。

4. 工数管理ツールの活用

エンジニアの工数を可視化することで、非効率な部分を発見できます。例えば、タスクが想定より時間がかかっている場合、その原因を分析して改善します。


エンジニアがコスト管理を理解するメリット

  1. プロジェクトの成功率が向上する
    適切なコスト管理を行うことで、予算超過を防ぎ、プロジェクトの収益性を高められます。
  2. 経営視点を持てる
    コスト意識を持つことで、プロジェクトが会社全体にどれだけ貢献しているかを考えられるようになります。
  3. チームの効率が上がる
    無駄なリソースを排除することで、チーム全体のパフォーマンスが向上します。

次のステップ

コスト管理を理解すると、プロジェクト全体をより戦略的に運営できるようになります。次回は「予算と計画」について解説します。予算の作成方法や差異分析を学び、さらに深くプロジェクトを管理するスキルを身につけましょう!

投稿者プロフィール

山崎講師
山崎講師代表取締役
セイ・コンサルティング・グループ株式会社代表取締役。
岐阜県出身。
2000年創業、2004年会社設立。
IT企業向け人材育成研修歴業界歴20年以上。
すべての無駄を省いた費用対効果の高い「筋肉質」な研修を提供します!
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