自社の強みを言葉にするSWOT分析とTOWS分析の使い方 ── IT営業が「誰に何を提案するか」を決める方法

こんにちは。ゆうせいです。

IT営業向け連載の第2回です。前回は、御用聞き型営業が価格競争に入りやすい理由と、仮説提案型営業への転換についてお伝えしました。仮説を作るには、お客様を知ることと同じくらい、自社を知ることが必要です。今回は、自社の強みと弱みを整理し、「どのお客様に、何を訴求するか」を決めるためのSWOT分析とTOWS分析の使い方を解説します。

読者の疑問:自社の強みを聞かれて、すぐに答えられるか

商談の場で、お客様から「他社と比べて、御社の強みは何ですか」と聞かれたとします。この質問に、具体的な言葉で答えられる営業は多くありません。よくある答えは次のようなものです。

  • 「技術力があります」
  • 「お客様に寄り添った対応をしています」
  • 「実績が豊富です」

どれも間違いではありませんが、競合他社も同じことを言います。お客様の立場からは、違いが分かりません。強みを言葉にできないと、提案は商品説明になり、最後は価格で比べられます。

結論:強みは「競合と比べて」「特定のお客様にとって」初めて意味を持つ

先に結論をお伝えします。

強みとは、自社が持っている特徴のうち、競合他社が持っておらず、かつ特定のお客様が価値を感じるものです。3つの条件がそろって初めて、強みとして訴求できます。

この3条件を整理する道具がSWOT分析です。そして、整理した結果を「誰に何を提案するか」という行動に変える道具がTOWS分析です。分析して終わりではなく、訪問先と提案内容を決めるところまで進めることが目的です。

用語の説明:SWOT分析とは

SWOTは、次の4つの英単語の頭文字です。

記号意味内部か外部かプラスかマイナスか
S(Strengths)強み内部(自社のこと)プラス
W(Weaknesses)弱み内部(自社のこと)マイナス
O(Opportunities)機会外部(市場や環境のこと)プラス
T(Threats)脅威外部(市場や環境のこと)マイナス

内部とは、自社の努力で変えられるものです。技術者の人数、業界知識、導入実績、営業体制などが当てはまります。外部とは、自社の努力では変えられないものです。法改正、業界の需要、競合の動き、技術の変化などが当てはまります。

内部と外部を分けて書くことが、SWOT分析の最初のコツです。「競合が増えた」は外部の脅威であり、「競合に勝てる提案ができない」は内部の弱みです。混ぜて書くと、何を変えればよいのかが見えなくなります。

具体例:中堅SIerのSWOT分析

ある業界に強みを持つ中堅のシステム会社を例に、SWOT分析を書いてみます。

S:強み(内部・プラス)

  • 特定業界の業務知識が深く、要件定義で業務の話ができる
  • 親会社グループの信用があり、長期の取引実績がある
  • 既存システムを安定運用してきた実績がある

W:弱み(内部・マイナス)

  • 顧客接点がグループ内と地域に限られている
  • 新規開拓の経験とノウハウが少ない
  • 提案営業の標準的な進め方が社内に浸透していない

O:機会(外部・プラス)

  • 業界全体でデジタル化の需要が高まっている
  • 法規制の見直しにより、システム更新の必要が生じている
  • 中小規模の同業他社が、システム更新の時期を迎えている

T:脅威(外部・マイナス)

  • 全国規模のシステム会社が業界に参入し、価格競争が起きている
  • クラウドサービスによって、個別開発が置き換えられる可能性がある
  • 人口減少による需要縮小で、お客様の予算が抑えられている

ここまで書くと、自社の状況は整理できます。しかし、この表を眺めているだけでは、明日の訪問先は決まりません。

練習問題1

次の項目は、SWOTのどれに当てはまるでしょうか。それぞれS・W・O・Tのいずれかで答えてください。

  1. 自社の技術者は、特定の製品に関する資格保有者が多い
  2. 取引先の業界で、大規模な法改正が予定されている
  3. 自社には、提案書を作成する専門の部署がない
  4. 低価格のクラウドサービスが同じ機能を提供し始めた

解答と解説

1はS(強み)です。資格保有者の多さは自社の内部の特徴であり、プラスに働きます。

2はO(機会)です。法改正は自社では変えられない外部の変化であり、システム更新の需要を生むのでプラスに働きます。

3はW(弱み)です。部署の有無は自社の内部の問題であり、マイナスに働きます。

4はT(脅威)です。競合サービスの登場は外部の変化であり、自社にとってマイナスに働きます。

TOWS分析:SWOTを「誰に何を提案するか」に変える

SWOT分析を行動に変える方法がTOWS分析です。TOWSはSWOTを逆から読んだもので、4つの要素を掛け合わせて戦略を考えます。

掛け合わせ考え方例
SO戦略(強み×機会)強みを活かして機会をつかむ業界知識×デジタル化需要 → 業務全体を対象にした提案
WO戦略(弱み×機会)弱みを補って機会をつかむ新規開拓力の不足×同業他社の更新期 → パートナーとの共同提案
ST戦略(強み×脅威)強みで脅威を避ける安定運用の実績×価格競争 → 運用コストを含めた総額で比較してもらう
WT戦略(弱み×脅威)弱みと脅威が重なる領域を避ける顧客接点の少なさ×全国規模の競合 → 無理に全国展開せず地域に集中する

営業の仮説提案に直接つながるのはSO戦略です。自社の強みと市場の機会が重なるところに、受注しやすいお客様がいます。

先ほどの中堅SIerの例では、SO戦略は次のようになります。

業界の業務知識という強みと、中小規模の同業他社がシステム更新期を迎えているという機会を掛け合わせ、「業務を理解しているからこそ提案できる、業務全体を対象にしたシステム更新」を、更新期を迎える中小規模の同業他社に提案する。

ここまで書けると、訪問先(更新期を迎える中小規模の同業他社)と提案内容(業務全体を対象にしたシステム更新)と訴求点(業界の業務知識)が決まります。

実務での使い方:1枚の戦略文を作る

SWOT分析とTOWS分析の結果は、次の1文の形にまとめてください。

「(どのようなお客様)に対し、(どのような強み)を訴求し、(どのようなソリューション)を、(どのような方法)で提案する」

例を2つ示します。

  • デジタル化が進んでいないグループ会社に対し、グループ内での導入実績という強みを訴求し、文書管理の効率化ツールを、導入済みの部門の事例を使って提案する
  • IT人材の不足に直面する中小規模の同業他社に対し、同規模の会社での導入事例という強みを訴求し、運用まで任せられる伴走型のシステムを、経営層向けの説明会で提案する

この1文があると、訪問前の仮説が作りやすくなります。第1回で紹介した「御社の課題は〇〇ではありませんか」という問いかけは、この戦略文から生まれます。

練習問題2

自社について、次の順番で書き出してください。

  1. 強みを3つ(競合他社が持っていないものを選ぶ)
  2. 機会を3つ(お客様の業界で起きている変化を選ぶ)
  3. 強みと機会を1つずつ掛け合わせて、戦略文を1つ作る

解答例

  1. 強み:製造業の生産管理に関する業務知識、自社製品の保守体制、地域での30年の取引実績
  2. 機会:製造業での人手不足、設備の老朽化による更新需要、補助金制度の拡充
  3. 戦略文:設備更新を検討している地域の中小製造業に対し、生産管理の業務知識と保守体制という強みを訴求し、設備更新と合わせた生産管理システムの刷新を、補助金の活用提案とセットで提案する

注意点:SWOT分析でやりがちな失敗

  • 強みの欄に「技術力」「顧客志向」など、競合も言える言葉を書いてしまう
  • 内部と外部を混ぜて書き、何を変えればよいかが見えなくなる
  • 分析だけで満足し、戦略文まで作らない
  • 1年前の分析をそのまま使い続ける

特に1つ目は重要です。強みは「競合と比べて」初めて意味を持ちます。「他社にはなく、自社にはあるもの」という条件で絞り込んでください。

まとめ

  • 強みとは、競合が持たず、特定のお客様が価値を感じる自社の特徴である
  • SWOT分析では、内部(S・W)と外部(O・T)を分けて書く
  • TOWS分析のSO戦略(強み×機会)が、受注しやすいお客様と提案内容を示す
  • 分析結果は「誰に、何を訴求し、何を、どう提案するか」の1文にまとめる
  • 強みの欄には、競合が言えない言葉だけを書く

自社の強みが言葉になると、次は「相手に合わせてどう伝えるか」が課題になります。同じ強みでも、相手の性格や考え方によって、響く伝え方は変わります。次回は、お客様の行動特性を4つのタイプに分けて伝え方を変える、ソーシャルスタイルの使い方を解説します。

投稿者プロフィール

山崎講師
山崎講師代表取締役
セイ・コンサルティング・グループ株式会社代表取締役。
岐阜県出身。
海外放浪の末、2000年創業、2004年会社設立。
IT企業向け人材育成研修歴業界歴20年以上。
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学生時代は趣味と実益を兼ねてリゾートバイトにいそしむ。長野県白馬村に始まり、志賀高原でのスキーインストラクター、沖縄石垣島、北海道トマム。高じてオーストラリアのゴールドコーストでツアーガイドなど。現在は野菜作りにはまっている。