シン・営業力の本 第7章「シン・営業力のマインドセット」――売る人から、相手と一緒に価値をつくる人へ

営業という仕事について、皆さんはどのようなイメージをお持ちでしょうか?

「商品を売る仕事」
「お客様を説得する仕事」
「価格や条件を交渉する仕事」

もちろん、どれも間違いではありません。

しかし、営業力をもう一段高いところから考えてみると、少し違った景色が見えてきます。

営業とは、「自社の商品を売ること」だけではありません。

お客様が抱えている問題や悩みを理解し、お客様と一緒になって、より良い未来をつくっていく仕事でもあります。

そう考えると、営業に必要なのは話術や交渉テクニックだけではないことが分かります。

その土台にある「どのような考え方でお客様と向き合うのか」というマインドセットが、とても重要になってくるのです。

今回の「シン・営業力の本」第7章では、「シン・営業力のマインドセット」について考えていきたいと思います!

ギバー・テイカー・マッチャーとは?

人と人との関係において、「自分が相手に何を与えるのか」「相手から何を受け取るのか」という視点があります。

その傾向から、人の考え方を大きく3つに分けたものが「ギバー・テイカー・マッチャー」です。

タイプ割合基本的な考え方
ギバー(Giver)25%相手に何を与えられるかを考える
テイカー(Taker)19%自分が何を得られるかを優先する
マッチャー(Matcher)56%与えるものと受け取るもののバランスを考える

たとえば、同僚から「この資料の作り方、ちょっと教えてもらえませんか?」と相談されたとしましょう。

ギバー
「もちろん。どこで困っていますか?」

テイカー
「教える代わりに、今度こちらの仕事を手伝ってね」

マッチャー
「以前助けてもらったから、今回は私が助けよう」

皆さんは、どのタイプに近いでしょうか?

……ちなみに「私は完全なギバーです!」と思った方。

本当にそうでしょうか?(笑)

仕事が忙しいときには、「それ、私に何かメリットある?」なんて、心の中の小さなテイカーが顔を出すこともありますよね(^^)

営業に置き換えると違いがよく分かる

タイプ営業で考えていることお客様から見えやすい姿
テイカーどうすれば売上になるだろう?「売りたい」という気持ちが前面に出る
マッチャーこの条件なら、お互いに損はないだろう公平で合理的な営業
ギバーどうすれば、お客様にもっと価値を提供できるだろう?自分たちのことを本気で考えてくれる営業

成功するギバーは「何でも与える人」ではない

ギバーという言葉を聞くと、「相手の要求を何でも受け入れる人」という印象を持つかもしれません。

しかし、成功するギバーは違います。

相手の利益を大切にしながら、自分自身や自社が提供する価値も大切にできる人。

たとえば、100万円のサービスに対して、お客様から「80万円になりませんか?」と言われたとします。

すぐに20万円値引きするのは、一見すると親切な対応かもしれません。

しかし、本来必要だったサポートまで削らなければならなくなったらどうでしょう?

十分な成果が出なければ、お客様にとっても良い結果とは言えません。

成功するギバーなら、まず考えます。

「なぜ、お客様は80万円を希望されているのだろう?」

予算の上限かもしれません。

社内稟議を通すためかもしれません。

競合他社との価格差かもしれません。

100万円を支払うだけの価値が、まだ十分に伝わっていないのかもしれません。

理由によって、提案する答えは変わります。

交渉とは「条件の取り合い」ではない

交渉という言葉を聞くと、「こちらの条件をどれだけ通せるか」「相手からどれだけ譲歩を引き出せるか」と考えてしまいがちです。

まるで綱引きですね(笑)

お客様 ←―――― 条件 ――――→ 営業

しかし、シン・営業力における交渉は「綱引き」ではありません。

同じ側に立って、一緒にパズルを解くようなものです。

「お客様にとって何が一番大切なのか?」

「自社として守らなければならない条件は何か?」

「両方を満たせる方法はないか?」

一緒に答えを探していきます。

すると、「値段を下げる・下げない」という二択だった交渉が、もっと広がります。

納期を変更するサービス内容を調整する
契約期間を変更する数量によって単価を調整する
導入範囲を段階的に広げる支払条件を工夫する

交渉の目的は、相手を負かすことではありません。
お互いが納得できる「より良い答え」を一緒につくることです!

Win-Winは「50対50」という意味ではない

Win-Winとは、交渉する双方が利益や価値を得られる状態です。

ただし、「お互い50%ずつ得をしましょう」という意味ではありません。

なぜなら、人によって価値の感じ方が違うからです。

たとえば、Aさんはチョコレートが大好き。Bさんはポテトチップスが大好きだとします。

AさんのポテトチップスとBさんのチョコレートを交換したら……

Aさん「やった!チョコだ!」

Bさん「やった!ポテチだ!」

交換しただけなのに、両方が嬉しい。

営業交渉でも同じようなことが起こります。

お客様が重視するもの自社が重視するもの
導入価格適正な利益
納期生産効率
サポート対応工数

お互いに大切にしているポイントが分かれば、双方が納得できる交換条件が見つかるかもしれません。

ギバー型営業に欠かせない「質問力」

ギバー型営業というと、「たくさん説明してあげる営業」を想像するかもしれません。

むしろ逆の場合があります。

優れたギバーほど、よく質問します。

相手が必要としているものを知らなければ、本当に価値のあるものは提供できないからです。

プレゼントと同じですね。

相手の好みを知らずに巨大なぬいぐるみをプレゼントして、「絶対喜ぶだろう!」と思っていたら……

「置く場所がないんだけど……」

なんて言われるかもしれません(笑)

営業で使える質問例

「今回、一番解決したい課題は何でしょうか?」
「価格以外で重要視されている条件はありますか?」
「導入後、どのような状態になれば成功と言えますか?」
「もし今回見送るとしたら、一番大きな理由は何でしょう?」
「社内でご判断される際、どのような点がポイントになりますか?」

流れとして整理すると、次のようになります。

相手を知る → 課題を知る → 価値を考える → 提案する

「お客様のため」と「安売り」はまったく違う

「お客様のためなら値引きしよう」

「お客様が希望するなら全部やろう」

「断ったら申し訳ない」

そんな気持ちが強くなりすぎると、自分たちの価値まで下げてしまいます。

営業担当者自身が、「うちの商品、本当にこの金額の価値があるのかな……」と思っていたら、お客様にも迷いは伝わってしまいます。

だからこそ、ギバー型営業には自分たちの提案に自信を持つことも必要です。

「絶対いい商品ですから!」

……だけでは、自信というより勢いです(笑)

にゃんこから学ぶ「成功するギバー」

🐾 にゃんこエピソード (=^・^=)

ある日、飼い主が仕事から帰ってくると、にゃんこが玄関まで迎えに来ました。

「ニャー!」

おお、今日もかわいい!

にゃんこは足元にスリスリ。

「そんなに会いたかったのか~!」

飼い主、感激です。

ところが、そのままにゃんこはスタスタと歩いていきます。

向かった先は……

ごはんのお皿。

「ニャー!」

……そっちかい!(笑)

にゃんこは、ある意味とても優秀な交渉人かもしれません。

愛嬌を与える。
癒やしを与える。
飼い主を幸せな気持ちにする。

でも、

「だから私のごはんもよろしくニャ♪」

と、自分の要求も忘れていません。

営業に置き換えて考えると、とても大切なヒントがあります。

相手を大切にすることと、自分を犠牲にすることは違うという点です。

お客様に価値を提供する。

同時に、自分たちが提供している価値にも、適切な対価をいただく。

そんな関係が続くからこそ、長期的なお付き合いができます。

にゃんこと飼い主の関係も、営業とお客様の関係も、案外「持続可能なWin-Win」が大切なのかもしれませんね(=^・^=)

シン・営業力のマインドセットを整理すると

従来型の発想シン・営業力の発想
どうすれば売れるかどうすれば価値を提供できるか
どう説得するかどう理解するか
どう条件を通すかどう双方が納得できる答えをつくるか
値引きして契約を取る価値を高めて納得していただく
お客様 VS 営業お客様 + 営業 VS 課題

敵は、目の前のお客様ではありません。
一緒に解決すべき「課題」が相手なのです。

交渉上手な人ほど「ギバー」である

私は、交渉が上手な人ほど「ギバー」であると考えています。

本当に交渉が上手な人は、自分の要求を押し通す人ではありません。

相手が何を求めているのかを理解する。

相手にとっての価値を考える。

そのうえで、自分たちが守るべき価値も大切にする。

そして、「だったら、こんな方法はいかがでしょう?」と、新しい選択肢をつくっていく。

優れた交渉とは、「奪い合い」ではなく「価値を増やす作業」なのだと思います。

明日からできる「ギバー型営業」5つの習慣

タイミング自分への質問
商談前今日、お客様にどんな価値を持ち帰っていただこう?
ヒアリング中お客様が本当に困っていることは何だろう?
提案前この提案は本当にお客様のためになるだろうか?
交渉中価格以外に、お互いが交換できる条件はないだろうか?
商談後私は今日、お客様に何を与えられただろう?

ギバーにもデメリットはある

メリット注意したい点
お客様との信頼関係を築きやすい相手の要求を受け入れすぎる危険がある
長期的な関係につながりやすい短期的には効率が悪く見える場合がある
紹介や口コミにつながりやすい「いい人」で終わる場合がある
本質的な提案につながりやすい自社の利益を軽視すると継続できない

まとめ――売ることより先に「与えられる価値」を考える

今回の第7章では、「シン・営業力のマインドセット」について、ギバー・テイカー・マッチャーという考え方を軸に見てきました。

営業において目指したいギバーは、ただ相手に与え続ける人ではありません。

相手の利益を大切にしながら、自分自身や自社が提供する価値も大切にできる人です。

交渉も同じではないでしょうか。

「どうすればこちらの条件を通せるか?」

ではなく、

「どうすればお客様にもっと喜んでいただけるだろう?」
「もっと大きな価値を提供する方法はないだろうか?」
「お客様と自社の双方が納得できる答えはどこにあるだろう?」

そんな問いを持つことが大切です。

そして、自分たちの提案にも自信を持つ。

「この提案は、本当にお客様の役に立つ」

そう思えるところまで、お客様について考え、提案を練り上げていきます。

すると交渉は、相手と戦うものではなくなります。

お互いにとって、より良い答えを一緒につくる時間へと変わります。

「売る人」から、「一緒に価値をつくる人」へ。

そんなマインドセットこそ、これからの営業に求められる「シン・営業力」の一つなのではないでしょうか。

次の商談ではぜひ、

「今日、私はこのお客様に何を与えられるだろう?」

と、一度だけ自分に問いかけてみてください。

小さな問いが営業の仕方を変え、お客様との関係を変え、やがて大きな成果につながっていくかもしれません。

今後の学習のヒント

今後は、次の3つをセットで磨いてみてください。

① 相手の課題を引き出す質問力

② お客様に価値を伝える提案力

③ 双方が納得できる答えをつくる交渉力

お客様も嬉しい。

営業担当者も嬉しい。

会社にとっても良い。

そんな三方良しの営業ができたら、とても素敵ですよね!

にゃんこにも、「ごはん」という適正な対価を忘れずに……ですね(=^・^=)

※本記事は『シン・営業力』を読んで、私自身が学んだ内容や感じたことを、自身の経験も交えながらまとめたものです。

参考文献・参考サイト

・天野眞也『シン・営業力』クロスメディア・パブリッシング、2022年。

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投稿者プロフィール

田渕講師
田渕講師
セイ・コンサルティング・グループ株式会社専務取締役
IT企業向け人材育成研修歴業界歴20年以上
キャリアコンサルタント・産業カウンセラー
アンガーマネジメントファシリテーター、コンサルタント
ハッピーな人生を送る秘訣は「何事も楽しむ!」ことにあり。
一期一会を大切に、そして楽しく笑顔になる研修をミッションに!